新年おめでとうございます | 日置研究室 HIOKI’S OFFICE

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作家の日置俊次(ひおきしゅんじ)が、小説や短歌について語ります。
粒あんが好きですが、こしあんも好きです。

 

  新年おめでとうございます

 

 古代の最も古い時代、日本では、月の運行でだいたいの暦を決めていましたが、満月を基準としており、それほど厳密な暦の制度はなかったのです。

 七世紀に太陰太陽暦(月の始まりが「朔(さく)」=「新月」)が、中国から入ってきました。それが官暦となり、近代まで、日本の基本的な暦となりました。

 

 中国大陸では、新月の日がお正月です。たとえば2022年、2月1日が新月の日(春節)になり、北京オリンピックは春節休みに合わせて、2月4日に開会をしました。この春節を理解しないと、アジアの文化は理解できません。春節を考えないで、社会を動かすことはできないのです。

 

 旧正月とか春節といわれるものは、基本的に月を基準とした太陰暦に拠っていますが、太陽暦の性格も交じっていて少しややこしいです。暦はとにかく人為的なものなので、制度が変われば変わってしまうものです。

 ただし日本の農耕においては、この月を基準としたスケジュールで1年が動いているので、近代に西洋の太陽暦が入ってきてからも、農村ではそんなに簡単には変えられないものなのです。西洋に合わせろと言われても、それまで大切に守ってきた習慣を理由もなく捨てることはできません。月の運行で稲作の1年は決まっています。米を食べ続けている以上、古い暦を捨てることはできません。

 

 台湾で暮らしているとわかりますが、旧暦をとても大切にしており、旧暦の1日と15日は祖霊にお供え物をする日なので、街を歩いていると、家々の前に供物台が出て線香の煙がすごいので、すぐにわかります。ああ、今日は満月の日だなとか、いろいろ考えます。例えばお釈迦様や媽祖様の誕生日も旧暦でお祝いをします。

 台湾は旧漢字を大切に守っており、古い伝統を大切にします。また日本が統治していた時代に、様々なインフラや、疫病対策、学校教育を始めとした社会制度を整えたことに対する感謝の気持ちを今も持っており、その社会制度やダム、水路、港湾、建物などは今も大切に利用されています。そういう気持ちの中で、旧暦が大切にされています。これは重要な考え方ではないでしょうか。

 

 

※台湾の御供物の写真はインターネットの旅行サイトよりお借りしました。

 

 むかしから、だいたい現在の2月ごろに立春と正月がやってくるときまっていました。お正月に、全員一歳、年を加算するという流れになっていました。個人の誕生日という考えはないのです。

 2月ですので、梅が咲きかけていて、春の気配がないわけでもありません。また古代日本では気温が今よりもかなり高かったのです(地球温暖化というのは、どうしようもない嘘です)。

 桜はあまり一般的ではなく、梅が重要な花でした。万葉集には梅に関する歌が118首ありますが、桜に関する歌は44首ほどです。ソメイヨシノはまだありませんし、百花に先駆けて咲く梅をみんなが愛したのです。学問の神様と言われる菅原道真が梅を愛して、「飛梅」の伝説が生まれたことは有名ですね。梅の花には、新年の喜び、冬が終わった喜びが込められています。

 昔はお正月の挨拶は、迎春、新春、初春、頌春という言葉を用いており、今でも年賀状に使われています。現在の1月に、春だ春だといってもむなしいばかりですが、立春に「春」というのは正しい発想です。正月が春で1年の始まりというのも、人間としては理解できる感覚です。中国には、この世のすべてのものが「木火土金水」という要素でできているという五行説があり、それに「青赤黄白黒」という色が配合されています。季節でいうと、こんなかんじです。

 春は木々が緑に生い茂るので、青春(古代思想では、青と緑は区別されません)

 夏は熱い火が燃えるようで、赤色の季節であり、朱夏

 秋はしろがねの金属のように透き通るので白、白秋(白は透明という意味です)

 冬は水が黒く静まるので、玄(くろ)、玄冬

 

 これは人生にも当てはまり、おおよそですが、青春は10代から20代、朱夏は30代から40代、白秋は40代から60代、玄冬は60代後半以降というような感覚で、一生を表します。

 これはいろいろ説があって、玄冬が幼児期を指すという意見もありますが、1年が青春から始まると考えることは、感覚的に納得できると思います。日本では、桜の咲く春に新学期が始まりますが、その出発点としての季節感に同意するひとは多いと思います。

 

 日本各地で、旧正月の行事が始まります。地方によっては、2月1日を正月と定め、行事を行っているところがあります。正月の日付が動きすぎると、ややこしくなるので、2月1日と固定しているのです。この辺り、それほど厳密に考える必要はないかと思います。イメージとして、2月が旧暦のお正月ということで、おおきな問題はないのです。

 

 お盆でも、7月15日を基準とするか、8月15日を基準とするかで、地域による分裂がありますが、厳密にいうと、旧暦のお盆は動きます。台湾では旧暦7月15日を中元節と呼び、それが現在の8月15日に固定されてはいません。中元節のある月を鬼月と呼んで、1ヶ月に渡り、霊を鎮める儀式を行います。日本は8月15日と便宜的に定めてしまっているところが多いのです。

 

 こういうことを東京の歌会などで話す馬鹿にされてしまい、だれも信じません。節分は大みそかの行事だったなどというと、一斉に笑いものにされます。しかし、日本には旧暦、太陰暦というものがあり、長い伝統が形成されていて、それを知らないほうがおかしいのです。アジアの多くの地域ではいまも旧暦で生活が進んでいます。米を食べているからです。

 

 そういうわけで、とりあえず、今日を旧正月のはじめ、新年のはじめと考えておいていいのではないかと思います。飛躍する力を秘めた辰年の始まりです。なんだかうれしい気持ちです。

 

 みなさま、新年、おめでとうございます。新春のお喜びを申し上げます。本年が希望と朗報に満ちた、充実した1年となりますように。日頃の努力が報われる年となりますように。

 

 

 

 皆様のご健康をお祈りいたします。

   そして皆様に、すばらしい幸運や喜びがやってきますように。

      いつもブログを読んでくださり、ありがとうございます。