本日、18都道府県に出されていたまん延防止等重点措置(まん防)が全面解除される。まん防が感染拡大の抑止に効果がなく、いたずらに経済に打撃を与え、政治家の“やってます感”を演出するだけの愚策であることは、周知の通りだ。遅きに失した感はあるものの、今回の解除を歓迎したい。
2020年1月に国内初の感染者が確認され、2年に及んだコロナとの戦いが、ようやく終息(一時的な“収束”でなく)する可能性がある。その間、度重なる国民の行動制限、企業の事業活動制限で、日本経済はすっかり疲弊し、昨年早々とウィズコロナに舵を切った諸外国に大きく後れを取ってしまった。未来志向で経済再建を進めることは、非常に大切だ。
ただ、政治家たちが「アフターコロナに向けて、まずは予算獲得だ」「参院選の前にGoToを再開しよう」と前のめりになっていることには、違和感を覚える。
厚生労働省によると、近年、新しい感染症が発生するペースが加速しており、世界でこの30年間に少なくとも30以上の新しい感染症の流行が確認されているという。明らかに、グローバル化で人の往来が増えたためである。とすれば、今後も新たな感染症が発生するのは確実だ。「やれやれ」で終わらせず、今回の教訓を次の感染症対策に生かす必要がある。
新型コロナウィルスの“終息”に当たり、以下3点をしっかり検討したい。
第1は、新型コロナウィルスの発生と収束の原因だ。中国・武漢で感染が始まったことはわかっているが、2年も経つのに、どういう経緯で発生したかという詳細はわかっていない。また、国内でもいまだに「居酒屋が悪い」という認識で対策が行われている通り、感染拡大にも不明点が多い。流行の波がなぜ突然終息したのかという点も定かではない。
第2は、医療体制だ。日本の国民1人当たりの病床数は世界最高なのに、感染拡大時には病床がひっ迫し、医療危機を招いた。コロナをエボラ出血熱と同じ「2類相当」に指定していることや保健所を中心とした硬直的な対応などが、混乱を招いたとされる。日本よりも感染者数がはるかに多く、病床数がはるかに少ないのに医療危機を回避できた国は多数あり、そういった国を見習って医療体制を再構築したいものだ。
第3は、ワクチンや治療薬だ。今回、ワクチンや治療薬は、ほぼ海外メーカー品の輸入頼りだった。日本の医学・生理学の研究は世界最高水準だし、世界的な医薬品メーカーも多数あるのに、ワクチンや治療薬の開発に目立った貢献はなかった。予算配分が悪いのか、研究開発の進め方が悪いのか、厚生労働省の薬品認可の仕組みが悪いのか。原因を究明し、次の感染症では、世界をリードして欲しいものだ。
以上は政治レベルの話だが、民間企業も振り返りが必要だ。今回、「非常事態だから」「世間から叩かれたくない」と、不要な対策、過剰な対策を延々と取り続け、疲弊してしまった企業は多い。感染症を日常の出来事と捉え、現実的な対策・体制を考える必要がある。
日本は、人口当たりの死者数が世界的に少なく、「コロナ対応がうまく行った国」だとされる。しかし、他国と違ってGDPがコロナ前を回復しておらず、経済へのダメージは主要国で最も深刻だった。潤沢な医療資源や日本人のファクターXなどを考えると、もっと適切な対策を取れたのではないかと思う。まず、「日本のコロナ対策は、総合的には失敗だった」という認識を持つべきではないだろうか。
日本人の悪癖で、「終わったことは水に流そう」「都合の悪いことは早く忘れよう」ではなく、しっかり3点を検討しつつ、経済再建に向けて前進して欲しいものだ。
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