先日、神戸市内で仕事を終えてJR灘駅から電車に乗ったら、運よく席に座れた。のは良かったが、右隣りに座っていた高齢男性がテニスラケットの入った大きなバッグをゴソゴソと動かし、私の右手にガンガンぶつける。「オッサン、ちょっとちょっと」と声を掛けたら、その男性は「あ、すんまへん」と謝った。
私が「テニスですか?」と尋ねて、そこから男性と世間話になった。男性は72歳で、王子公園でテニスをした帰りだった。週に2~3回仲間とテニスをするのが、何より楽しみだとのことである。
その日は例によって35度を超える猛暑だったので、「こんな日にテニスをしたら、熱中症で命が危ないんじゃないの?」と聞いた。男性は、「まあそらそうやけど、人間どんなに注意しても、死ぬ時は死ぬ。好きなテニスの最中にポックリ死ねたら本望や、アッハッハッハ」と笑う。
そこから、「どういう死に方が理想か?」という話になり、さらに「熱中症で死ぬのと腹上死ではどちらが幸せか?」という議論に発展した。「まあ人それぞれかな」とか話していたところで、電車が芦屋駅に着いた。私は男性と別れて、新快速に乗り換えた。10分間くらいの会話だった。
東京・横浜で電車に乗っていても、隣の客と仲良くなるということはない。隣の客の荷物が体に当たったら、たいてい険悪な空気になる。逆に、瞬時に仲良くなってしまうとは、意外な体験だった。人を嫌な気持ちにさせないという点で、関西人のコミュニケーション力は他地域の人よりも勝っているように思う(その男性が特別かもしれないが)。
ところで、時間切れで考察が浅かった「理想の死に方」「熱中症で死ぬのと腹上死ではどちらが幸せか?」という点について、少し考えてみたい。
死に方を比較評価するポイントはいくつかあるが、好きなことを存分にやって死ぬというのが、理想の死に方の第一の条件だろう。好きなことは人それぞれなので、この点では、「熱中症で死ぬのと腹上死ではどちらが幸せか?」は人それぞれだ。
もう一つ、肉体的・精神的な苦痛を感じたり、死の恐怖に怯えたりすることなく、ポックリ逝くというのも重要だ。この点では、「もしかして熱中症で死ぬかも」と不安を感じながらテニスをするよりも、没頭した状態でポックリと逝く腹上死の方が、優れているのではないだろうか。
ということで、腹上死の方がやや優れていると思う。ただ、腹上死には、パートナーに迷惑が掛かるという問題がある。目の前にいる相手が死んだら、パートナーは大きな精神的ダメージを負うのではないだろうか。
という懸念材料について知り合いの女性に聞いてみたら、「そうかなぁ。愛する男性が行為中に死んでくれたら、パートナーの女性も幸せじゃないの?」と言っていた。なるほど、そうか。
ということで、その女性の考えがどこまで一般的かはわからないが、ひとまず腹上死が最高の死に方ということにしておこう。
(2026年8月3日、日沖健)
コンサルティング・研修・講演・執筆のお問合せは下記まで
hiokicon@gmail.com
日沖コンサルティング事務所
http://www.hioki-takeshi.com