古代史ミステリー、雑過ぎです! | 生野眞好の日本古代史研究会記録

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在野の古代史研究家 生野眞好(しょうのまさよし)先生の勉強会や月刊誌フォーネットに連載中の記事の概要などを紹介しています。
「魏志倭人伝」や「記紀」などの文献史料を中心に邪馬台国の位置、ヤマト王朝と先興の奴国王家との攻防(宗教対立)と共存などの検証です。

 古代史ミステリー(NHK 3/24放送)の第2集「ヤマト王権・謎の五王」を、先週に続いて見ましたが、あまりに杜撰で雑な番組編成に呆れてしまいます。

 テレビの画面タイトルには「空白の世紀」となっていて、出演者たちのセリフにも3世紀の卑弥呼以後、5世紀の所謂「倭の五王(生野先生の考察では6人!)」に至る間の4世紀が謎だと言っているのに、番組で紹介される内容はほとんど5世紀のことばかり。(つまり、謎だから口を閉じるってかぁチーン

 文献史料で卑弥呼の後継者である臺与が266年に「晋」に朝貢して以来約150年ぶりに「倭王讃(仁徳)」が「宋(南朝:420建国)」に朝貢したことはわかっているが、300年代つまり4世紀の倭国については中国側の資料にも記録がない。

 だからといって卑弥呼(3世紀)からいきなり「倭の五王(5世紀)」を登場させて、朝鮮半島での優位な立場を得るために中国王朝からの「お墨付き(安東将軍号)」を得たり、技術革新(製鉄や馬の導入)を成し遂げ、半島にはヤマト王権の象徴である「前方後円墳」が作られ倭人が半島に居住するようになったと印象付けるようなまとめ方。

 正直、あんまりだと思うえーん

 ドラマの中では「宋」の役人に「150年も挨拶に来ず自分の都合だけで朝貢するなんてずうずうしい」と言わせているけど、いやいやそもそも150年前には「宋(南朝:420建国)」はなく、三国時代のあと中国大陸は五胡十六国の戦国時代となっていて266年に臺与が朝貢したのも魏のあと禅譲されたことになっている「西晋」です。

 倭国にしてみれば朝貢しようにも正当な中国王朝を確定出来なかっただろうし、臺与以降わが国も「記紀」にある神武東征という侵攻と混乱の4世紀となっていて朝貢する余裕がなかったのもかもしれない。

 番組では先週の卑弥呼の時から何度も「グローバル戦略」というキーワードが出てきて、倭国から中国王朝に使者を出すのは「国家安定や半島における優位な資源確保」のための戦略として紹介されている。

 しかし、「朝貢」はちゃんとした「朝貢のルール(目的と時期)」に則って行われていたものです。

 あぁ、長文になってしまったショボーン

 「朝貢」や「倭の五王(本当は6人)」など、生野先生が中国史料や朝鮮半島の史料から考察された内容をこのブログで何度も紹介しています。

 ぜひご一読くださいm(_ _)m

 勉強会:2009年5月10日、17日、

     2012年5月26日~30日