マンションの前にタクシーが停まり、僕は隣の和美ちゃんに声をかけた。
『ん~~?着いたの?』
そう言って、僕にもたれて眠っていた彼女が目を開けた。
和美ちゃんとは同じ会社の同期。
夕方、仕事終わりに会い、飲みに行かないかと誘われた。
仲がよかった僕らの同期は仕事帰りに誘い合って飲みに行く事があった。
「久しぶりにみんなで飲みに行こうか?」 そう言ったら、
『今日は直樹君だけでいいよ』 と答えが返ってきた。
何かあったのかと思ったけど、思い過ごしだったのかな?
特に何を相談されるでもなく、和美ちゃんはよく笑って、そしてよく飲んだ。
『おやすみ~~~♪』 と言って帰っていく和美ちゃんをタクシーの中から見送る。
…と、階段でころんだ。
心配になった僕は慌てて支払いを済ませるとタクシーを降りて駆け寄った。
「気をつけて。大丈夫?」和美ちゃんを助け起こす。
『ん~?ダメかもしれない(笑)』
そう言いながら掴んだ腕に体重をかけてきた。
いつもは飲んで陽気になっても、こんな風になる事はない。
僕はこの時、気づくべきだったんだ。
部屋まで送り、和美ちゃんを玄関に入れる。
「鍵、ちゃんとかけてね。おやすみ」
そう言って、帰ろうと背を向けた僕に彼女がしがみついてきた。
「和美ちゃん?」
すすり泣く声がする。
『…ごめんなさい。 でも、帰んないで…。 1人になりたくないの』
いつも明るい彼女の弱々しい声に、驚いて振り向く。
気づいた時には自分の腕の中に彼女を包み込んでいた。
つづく