その日も、先輩のご指名で得意先まわりに付き合っていた。
途中、公園のベンチでひと休み。 心地よい風が吹く、気持ちのいい週末だった。
缶コーヒーを飲みながら、煙草をふかす。
「あ~~、何か仕事してるの、アホくせ~(-。-;) どっか、行きて~!」
そう言い出した俺に先輩がクスクス笑う。
『でも・・・そうだよね』 先輩がつぶやくように言った。 『海・・・行きたいな』
「・・・・・」
『・・・東京ってさ、海がないじゃない? いや、あるんだけどさ、何て言うのかな・・・?
砂浜とか、水平線とか、波の音とか、何かそういうのがね・・・』 遠い目をして、そんな話をしていた。
俺はあの日と同じどこか寂しそうな顔をした先輩をじっと見ていた。
『・・・何か、つまんない話しちゃったね。 仕事、戻ろっか?』 そう言って笑うと、先輩は歩き出した。
「・・・行きますか?」
『え?』 振り向いた先輩に言う。
「海・・行きますか? 明日の休み・・・。相手が俺じゃ嫌・・・?(笑)」
『・・・そんな事ないけど・・。・・・いいの?その・・彼女とか、約束ないの?』
「・・・・・」 一瞬、和美の顔が浮かんだ。 先輩の口からそんな話は聞きたくなかったな・・・。
「・・・大丈夫っすよ。 明日は仕事なんですよ。 だから・・・」
背中を向けて黙ったままの先輩・・・。
「・・・サチ?・・」 その背中に近づいた。
『・・・何がいい?』
「え?・・・」
『・・・お弁当。 何かリクエストある?』 振り向いたサチが言った。
笑顔だった。 ホッとしている俺がいた。
サチにはいつも笑顔でいて欲しい。 そう思っている俺がいた。
つづく