「待って!行かないで!俺を1人にしないで!!」 うなされて飛び起きた。
夢か・・・。久し振りに見たな。最近は見てなかったのに・・・。
一昨日の夜、リゾートウエディングの同行から戻った。
昨日は、昼になる頃に起きだして、荷物などを片づけているうちに終った。
今日は特にする事もない。1日どうしようか?
カーテンの外を見ると、青空が広がるいい天気だった。
「出かけてみるか?」 俺はカメラを手に出かける事にした。
「懐かしいな」 俺は動物園に来ていた。
あんな夢を見たせいかな? 動物や子供達の写真を撮りながら、ぷらぷらと歩く。
1人でコビトカバを見ている男の子がいた。
「おい坊主、コビトカバ好きなのか?」 声をかけてみた。
(うん!あの尻尾がすきなんだぁ!かわいいでしょ!)
誰かと同じこと言ってんな。・・・俺は笑ってしまった。
「ところで、坊主1人か?父ちゃんや母ちゃんは?」
(母ちゃんと一緒だよ。あっ、母ちゃんだ!じゃあね、お兄ちゃんバイバイ!)
「おう!走って転ぶなよ!」 男の子に手を振りながら、その走って行く先を見て俺は固まった。
「香夏・・子?」 そこには香夏子がいた。
俺に気づいた香夏子も驚いた顔をしたが、それは一瞬で、すぐに諦めたような泣き笑いの表情に変わった。
(母ちゃん、のど渇いた。なんか飲みたい!)
男の子に手を引かれ、香夏子は人混みの中に見えなくなった。
それから、どこで何をして時間を潰したのか? 気づいたら会社の近くにいた。
そうだ、剛士さんなら何か知っているハズだ。
慌てて会社に向かうと、まだ窓に灯りが見えた。 幸い、剛士さんが1人で残っていた。
〈まぁ、とりあえず座れよ〉 俺の普通じゃない様子にそう言うと、コーヒーを淹れてくれた。
〈香夏子の事か?〉 煙草に火を点け、一服すると言った。
「俺、今日、香夏子さんの事、見かけたんですよ・・・」
〈そうか・・・〉そう言うと、剛士さんはどこかに電話をかけ始めた。
帰宅した私は、灯りもつけずに部屋の中で座り込んでいた。
どれくらいの時間そうしていただろう? 携帯の鳴る音で我に返った。
剛士・・・。携帯の表示は剛士からだという事を示していた。
〈香夏子?今、雄輔がきてるんだけど・・・。今日、会ったんだって?〉
『うん・・・』
〈・・あの事、俺から話してもいいか?〉
『うん・・。お願い・・してもいい?』
〈・・・わかった。・・・香夏子・・大丈夫か?〉 剛士が心配そうな声で訊く。
『・・うん。・・・ごめんね』 そう答えるのが、やっとだった。
つづく