【恋夢】ゆれて・・・13(再) | カンタ印  元気印

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日々の出来事、思った事などをとりとめもなく...

〈何から話すかなぁ・・・〉 そう言うと、剛士さんは2本目の煙草に火を点けて、ゆっくりと煙を吐き出した。



聞いてるかも知れないけど、香夏子は早くに両親を亡くしてるんだよ。

短大を卒業する少し前だって言ってたかな? 香夏子は兄弟もいないし、天涯孤独?っていうのかな?

死んじまった俺の親友ってのも、同じような境遇だったから、出逢ってすぐに惹かれあったよ。

香夏子は・・・雄輔なら分ると思うけど・・・、しっかりしてるみたいだけど、・・・いや、しっかりはしてるんだけど、

でも、弱い所もあるし、すっごい寂しがり屋だろう?

自分の家族?ってのが、欲しかったんだろうな。

だから、子供が出来た時は本当に喜んでたよ。・・・うん。本当に幸せそうだった。

香夏子はさ、式なんてどうでもいいって言ってたんだよ。

でも、俺とカミさんと・・・あ~、うちのカミさん、香夏子と高校ン時から一緒でな・・・

で、勝手に式、計画して、香夏子も楽しみにしてたんだよ。

それが・・・前に話したよな?山の事故で・・・。

香夏子、ショックで流産しかけた。 何とか持ち応えたんだけど、結局、しばらく病院で・・・。

あいつ、最後に見送ることもできなかった・・・。

香夏子、身寄りがないだろ?

1人で産むなんてどうかと思ったんだけど、まだギリギリ・・・その・・堕せる時期だったし・・・。

でも、1度ダメになりかかって助かった命だったし、

それに、あの時、あの子がいなかったら、香夏子、今、生きてないだろうな・・・。

反対は・・・できなかったよ。

で、何とか無事生まれて・・・。でも、香夏子の方は相当なダメージを受けていたんだろうな。

・・・必死に頑張ってたよ。俺たちが手伝うって言っても、大丈夫だからって、1人で・・・。

でも、ムリだった。 慣れない子育てに仕事。 恋人を失った傷だって癒えていない。

どれも、手を抜けるようなやつじゃないしな・・・。

・・・倒れたよ。 いや、それまでも隠してただけで、相当悪い状態だったらしい。

香夏子の元で育てるのはムリと判断されて、施設に預けられる事になった。

今はムリだけど、小学校へは自分のところから通わせるんだって。 その為に頑張るんだって・・・。

頑張りすぎなくらい頑張ってたよ。いつか、折れちまうんじゃないかって心配になるくらい・・・。

雄輔に会って、あいつ変わったよ。少し安心して見てられるようになった。

前は危なっかしくてな・・・。

一緒に暮らそうって言ったんだって?香夏子、喜んでたよ。

でも、そのすぐ後に、『ムリだよね・・・』って、寂しそうに笑ってた。

子供にも会ったんだろ?素直ないい子だったろう?

香夏子、月に1、2回は連休とって、普段は一緒にいてあげられないからって、

連休の間はホントにず~っと一緒にいて、ご飯作って、遊びに行って、抱きしめてやって・・・。

俺は正直に話してみろって言ったんだけど・・・。雄輔・・お前なら大丈夫な気がしたから。

でも、香夏子『怖い』って。 今は雄輔が支えだからって。 もう少し、雄輔の優しさに浸っていたいって。



〈雄輔・・・で、どうする?〉 剛士さんは俺を見て言った。

どうするって、そんなの・・・。

俺は立ち上がると、剛士さんに頭を下げて、部屋を出ようとした。

〈待てよ〉 剛士さんに呼び止められた。

〈香夏子の所に行くんだろ?これ使えよ〉 剛士さんが車のキーを投げてよこした。

〈あ~、それからな、お前も香夏子も有給残ってたよな? 明日、有給消化で休みな。社長命令だから(笑)〉

俺は剛士さんにもう1度頭を下げると、部屋を飛び出した。

                                                        つづく