雄輔君と一緒に過ごした時間が長くなるにつれて、雄輔君を意識する事が増えていった。
何かの折にあの人と重なって、ドキッとする。
雄輔君の中にあの人を見ているんだろうと、そう思っていたけれど、でも、それは違ったのだろうか?
まだこの頃は分からなかった。
それは会場のセッティングをしていた時の事だった。
私はライトの確認の為に足場の上にいた。角度の調節をしながら、下にいるスタッフと打ち合わせる。
それを見ていた雄輔君がいきなり「俺がやる」と、言いだした。
キョトンとする私に「いいから!下から指示出して!」と、半ば強引に替わってしまった。
その時は『何なんだろう?』 とは思ったけれど、まさか、そんな事だとは思いもしなかった。
〈香夏子?ちょっと聞くけどさ、お前、高所恐怖症?〉 いきなり剛士が聞いてきた。
『え?そんな事ないけど・・・。どうして?』
〈だよな?いや、雄輔がさ、お前が高所恐怖症だって言うんだよ・・・。何なんだろうな?〉
剛士はそう言うと、首を傾げながら行ってしまった。
どうして分かったんだろう? 誰にも話したことなんてなかったのに。
高所恐怖症という訳ではないけれど、2メートル前後の高さが苦手だった。
妙に現実的で、特に不安定な足場の上などは怖くて仕方なかった。
でも、そんな子供みたいな事・・・。仕事なんだし。
そう思って、剛士にだって話した事がなかったのに。それなのに・・・。
後から思えば、そんな事の繰り返しだったのかもしれない。
そうやって、隙間に入り込むというよりは、ゆっくりと心全体に染み渡るように、
いつの間にか雄輔君の存在が大きくなっていた。
自分でも気づかないうちに一杯になってしまっていたのだろう。
だからあの時、あんな事になってしまったのかもしれない。
つづく