29歳という事だったが、子供みたいな屈託のない笑顔はもっと幼く見えた。
でも、私はその笑顔にどこか懐かしいものを感じていた。
「なぁ、香夏子。雄輔って、何かアイツに似ていない?」 剛士にそう言われて気がついた。
死んでしまったあの人に似ているんだ…と。
顔が似ているという訳ではないのだが、周りにふりまく空気感のようなものが似ていた。
それが、雄輔君を意識した最初だったかも知れない。
雄輔君はやっぱりあの人に似ていたんだろうか?
剛士とすぐに打ち解けた。そして、私とも。
意外と人見知りの私は、慣れるまでに割りと時間がかかる。
でも雄輔君は最初から一緒にいても落ちつく存在だった。
シーズンオフのある日の事、私は白いドレスを着せられて鏡の前にいた。
『ねぇ剛士。本当に私がやるの?』
この日は新しいパンフレットの為の撮影日。
モデルの女の子の体調が悪くなり、急遽、代役をやるハメになった。
『もっと若いスタッフがいるじゃない?』 そう言う私に、剛士は
〈仕方ないじゃん。うちのスタッフ、何でかみんな、ちっちゃいんだから〉 と笑う。
確かにそうなのだ。何故かこの会社の女子スタッフはみんな150センチちょっと。
私だけが160センチを超えていた。
〈バランスとれるの、香夏子だけでしょ( ̄▽+ ̄*)〉 そう言う剛士に渋々頷くしかなかった。
〈大丈夫。香夏子は若く見えるから♪〉 そう言われたが、やはり気分は乗らなかった。
「いい加減、諦めたら~?俺も諦めたんだから」 花婿姿の雄輔君が立っていた。
花婿は経費削減の為、男性スタッフが務める。去年までは剛士がやっていた。
「俺だってカメラマンなのに、な~んで、撮るんじゃなくて、撮られなきゃなの?」
嫌がる雄輔君を『仕事なんだから』と承諾させたのは、私と剛士だった。
「どうせやるんなら、楽しもうよ(-^□^-)」 そう言うと雄輔君は私の手をとった。
どうせなら楽しまなきゃ。・・・あの人もよく言ってたな(笑)
『そうね』 雄輔君に手を引かれて立ち上がる。
『花婿がちょっと物足りないけど」 そう言って笑うと
「あ~~っ!ひっで~~~!ヾ(。`Д´。)ノ」 雄輔君が抗議の声をあげた。
撮影は順調に進み、今は香夏子1人のシーンを撮っていた。
剛士が感慨深げにその姿を見つめている。
「剛士さん?」 その様子に雄輔が声をかけた。
「どうかしたんすか?」
〈いや~、早く香夏子のこんな姿を見たいと思ってな・・・〉
「剛士さんって、香夏子さんの事・・・」
〈バカ!俺は妻子持ちだ(笑)〉 そう否定すると続けた。
〈香夏子にはな、結婚するハズの男がいたんだよ。俺の親友だった男なんだけどな。
それが、もうすぐ式って時に、山の事故で死んじまいやがった〉
「・・・そんな事が」
〈あぁ、6年前だ。それに、あの時、香夏子は・・・〉
「?」
〈いや、何でもない〉
雄輔は剛士の話を聞きながら、カメラの前に笑顔で立つ香夏子を見ていた。
つづく