これまで、実際の体験や企業の公式ウェブサイトなどから、事実に基づいて犬の繁殖業者とペットショップの闇をご紹介してきました。平蔵の抱える遺伝性疾患については、感情を全面的には排除できません。でも、適切なエビデンス(科学的根拠)などを基に、客観的な批判を続けています。
大切なのは「適正飼養」
もちろん、すべてのブリーダーさんが不適切な繁殖を行っている訳ではありません。ペットショップも、全面的に否定すべきではないと思います。大切なのは、繁殖行為も含め「適正飼養」ですよね。
動物の取扱いにしても、ビジネスにしても、それぞれがプロであるはずです。「専門家」ならば、"本当に"心身ともに健康な子犬の繁殖や、"健全な" お金のとり方に意識を向けることを願います。
簡単に「あの」業界が変わるとは思えませんが、期待は持ちたいと思います。ともかく、
犬たちは無条件に可愛いですから
(↑お迎えした日の「ひめりんご」)
動物たちが幸せかどうか
適正飼養という言葉、「動物の愛護及び管理に関する法律」、つまり動物愛護法にもよく出てきます。「適正」に厳密な定義はされていませんが、難しい議論をしなくても分かりますよね。動物たちが幸せかどうかです。
同じような意味で、「動物福祉」という言葉も聞かれるようになりました。福祉とは、
幸福。公的扶助やサービスによる生活の安定、充足(広辞苑)
とあります。これをあてはめると、私たちが動物に提供する安定・充実した生活と言えると思います。
動物福祉に関しては、イギリスで作られた「5つの自由」というのがあります。1965年に農場で飼育される動物のために考えられ、その後、ペットも含めた動物福祉の基本的な考え方として広まりました。日本語に訳すと:
ということで、最低限、この5つの自由が保障される環境にないと適正な飼養とは言えないと考えられます。
膝蓋骨脱臼(≒ パテラ)や平蔵の首の爆弾「環軸椎亜脱臼」も含め、遺伝性疾患であることが分かっているトラブルを抱える子犬を量産する繁殖屋も、動物福祉に反する事業者です。「痛み・ケガ・病気からの自由」が侵されるリスクが分かっていて、命を「生産」している訳です。
繁殖屋やショップだけでなく…
適正飼養については、繁殖屋やペットショップだけでなく、私たち飼い主も常に注意しなきゃいけないな、と思うのです。前々回と前回、犬・猫の里親探しをする「マッチングサイト」運営企業の実態をご紹介しました。
事業を始めた最大の理由が、"無責任な飼い主" かのように主張しています。その会社が扱う2000頭を超える「保護犬猫」のほとんどが「ブリーダーから」であることを見れば、その主張は破綻しています。
とはいえ、一般の飼い主による飼育放棄が存在するのも事実です。「その一目惚れ、迷惑です。」ってTVでやっているのを観たことがあります。思い付きで子犬・子猫をお迎えして、すぐに「いらない」となる人もいなくはないようです。
全国の自治体が運営するいわゆる「動物愛護センター」が、令和2年度に引き取った犬の10%が「飼い主から」とされています(環境省資料より)。犬2,701頭、猫10,479匹が飼い主から「いらない」と言われ連れて来られました。
ひめりんごも迷惑?
「迷惑です」と言われる一目惚れですが…「ひめりんご」のお迎えもそんなきっかけでした。彼女には、迷惑がられているかも知れません^_^;
だから時々噛まれるのかも…
ワンコをお迎えすることは決めていて、"ペット可" のトコロに引っ越しは済ませていました。でも、その頃は仕事でバタバタ。「数週間して落ち着いてから」と考えて、毎日インターネットで子犬を探してワクワクしていました。「トイプーの男の子を、ここのブリーダーに見に行こう」って。
で、引っ越しの翌日。カーテンを買いに行く途中で、お店を見つけました。そこで出会ったのが「この子」。チワプーの女の子を、翌週にペットショップから迎えることになったんです。
予定とは違うし、
「一目惚れ」…
ペットショップ
ミックス犬…
色々なご意見があるかも…。
たくさんのご縁
でも、それをきっかけにたくさんの出会いがありました。愛犬家のお友だち、獣医さん、動物看護師さん、トリマーさん、ドッグトレーナーさん、ブリーダーさん、最近では学者の先生など。日々、それぞれの分野で、それぞれの立場で、真剣に1つ1つの「命」と向き合っておられます。
そうした縁を紡いでくれたのが、ひめりんごでした。彼女に出会わなければ、犬たちについてこんなに深く考えることもありませんでした。
「え…?犬ってこんなに難しかったっけ?」
というところから、犬を知るための旅が始まりました。
喜怒哀楽のかたまり
ひめりんご、「ぬいぐるみみたい」と言われることがあります。でも、中身はかなり個性的。一言で言えば喜怒哀楽のかたまりです。
ちょっとしたことで、落ち込んでクレートにひきこもったり(ホントにチョットしたことなんです…)。
ママにはしてくれる「カムアップ」(しゃがんだ膝に飛び乗る動作)を、気が向かないと父ちゃんにはしてくれなかったり(涙)長い出張から帰ると、大喜びで走り回ったり。
よく言えば感情豊かな性格ですが、情緒不安定なところがかなりあります。
あまり良くない環境で生まれ、
早くにお母さんから引き離され、
色んな過程を経て
ペットショップに連れて来られたから
なのかな~、と考えることがあります。正確なトコロは誰にも分かりませんが…。
(↓ひめりんごの生まれた場所、突き止めて行ってみたこともあります↓)
最近はお互いに「間合い」を学んだようですが、数年前までは父ちゃんを本気噛みして流血させることもありました。きっと、そうさせる何かが父ちゃんにあったんでしょう。ごめんよ…。
そんなことで、我が家では、「飼い犬に手を噛まれる」 = 「日常によくあることのたとえ」の意味です
で、「なんで?」のスイッチが入った私は「獣医行動学」などを中心に、学者の先生にもお話を聞いたり論文を読んだりするようになったのでした。
「このコ」たちの一生は私たち次第
結局、どこからどんな経緯でお迎えしても "そのコ" の幸・不幸は私たち人間次第です。ペットショップに来るまでの扱いや、遺伝性疾患など生まれついてのトラブルなど、過去は変えられません。
(↓ペットショップから家に来た直後のひめりんご↓)
でも、今、目の前にいる1つ1つの命と真剣に向き合うことはできます。
何度も書いてきましたが、平蔵は首にいつ爆発するか分からない「爆弾」を抱えて生まれてきました。その事実は変えようもありません。ですが、病気について勉強して、注意深く観察して、周囲の方々のサポートもいただきながら、充実した「犬生」を過ごさせてあげたいと思っています。
そのこと自体は悲しい事実ですが、平蔵のおかげで、平穏な毎日がいかに貴重なものかを改めて学ぶことができました。他にも、犬たちとそのご家族を苦しめている、繁殖に関わる問題を知ることもできました。
こんな出会いをくれたのは、図らずも(?)ペットショップ。ひめりんごに「一目惚れ」してお迎えし、平蔵のお迎えを含め色んな出会いをもたらしてくれました。同じように、一目惚れから犬の魅力に取りつかれた飼い主さんは他にもたくさんいらっしゃると思います。なので、
メッセージは理解できますが、
「その一目惚れ、迷惑です。」ってCM、
さすがに、そろそろ、
ちょっと迷惑です。
伝えるべきは「適正飼養」の大切さではないですか?"殺処分ゼロ" も"衝動買い/飼いの防止"も、動物たちの幸せを守るための
手段であり
目的ではない
ことが、忘れられがちな気がする今日この頃です。
今回のキーメッセージ:で、何が言いたいかというと、この頃こんな傾向がある気がします >>
1)「出会いはペットショップ」と言いずらい風潮
2)保護犬や保護猫の「ある種」ブランド化
3)殺処分ゼロが目的の不適正飼養
本来の目的である「動物たちの幸せ」のために、少し考えてみるのも大切ではないでしょうか?