このテーマ、前回は繁殖を引退した犬と猫を、

 

 「パートナードッグ&パートナーキャット」と ねぎらい、企業として当然の責務 として「安息に満ちたセカンドライフ」を提供している

 

と主張する会社をご紹介しました。

 

 

業界最大手の1社としては、社会的責任を意識した取り組みも大切ですよね。その内容は、色々と思うトコロがありますが…。今回は、もう1つの例を見てみました。同様に、大手が関わっている(と思われる)会社です。

 

マッチングサイトと動物病院

こちらの場合、店舗経営は行わずウェブサイトを通して「里親募集」を行っています。資金は潤沢なようで、2019年末の立ち上げ当初から都内に70頭収容できる立派なシェルターをもっています。

 

 

2021年にはクラウドファンディングでおよそ260万円を集め、施設の充実も図ったようです。大阪にもシェルターを所有しています。

 

また、「獣医師賛同型」という聞き慣れないシステムをうたっています。犬・猫を迎える時は、お家の近くにある動物病院で引き取るそうです。現在、全国で300の動物病院が「賛同」しているそうです。

 

費用は…

こちらは、保護されたり繁殖を引退したりした犬・猫のことを「foster dog/foster cat」(= 里子)と呼ぶそうです。「パートナードッグ&キャット」と同様、費用やオプション(?)には一般常識とズレを感じる部分が多々あります。あくまで個人的な印象ですが。以下、ザクっとまとめました:

 

「寄付金」:個体によって金額が違いますが、計算根拠は非開示。前回ご紹介した会社と同様、医療、ご飯、お世話や設備費用の一部としています
金額:約6万円~10万円(10歳を超えると無料なのは評価できそうです)
「お迎えセット」:フード、歯磨きガム、サプリ(関係会社取扱い商品)
5,343円 <= 1歳まで(6,443円+送料1,100円)
・7,673円 <= 8歳まで(6,573円+送料1,100円)
・8,599円 <= 8歳から(7,499円+送料1,100円)
ペット保険:保護犬用の保険を「ご案内」
金額:37,280円/年~
輸送費:自宅近くの(賛同)動物病院への移動費用
金額:要確認
動物病院への支払(お迎え時):
金額:約13,500円
・狂犬病予防ワクチン接種及び登録(約7,000円)
・マイクロチップ装着及び登録(約6,500円)

 

1つ1つ見ていくと、そろそろ鬱になりそうなので費用に関して突っ込むのはやめておきます。あれやこれや、色々ある中で、私には違和感なく納得できるのは「輸送費」くらいです…。(詳細については、「第2章」を読んでみて下さい。)

 

諸悪の根源は飼い主?

お金の問題とは別に、この会社は気になる主張をしています。里親制度を始めた主な理由(の少なくとも1つ)は、一般の飼い主が無責任だからとも取れることが書いてあります。2019年12月のシステム稼働前、最初にウェブサイトに掲載された文章があります。

 

(↓写真はイメージです)

 

タイミング的に、組織の基礎となる想いでしょう。全文を丁寧に読みました。文章の転載をすると「訴える」と書いてあるので、許可されているリンクを貼っておきます。キーワードを拾うと:

 

「飼い主による飼育放棄が多い。無責任な飼い主の行動が、犬や猫の殺処分に繋がっている。それが、ペットを取り巻く問題」

 

と考えていると解釈できます。皆さんはどう思いますか?
https://anifare.jp/notice/1035/

 

なお、殺処分の問題についてはずっと勉強していますが、色々な要素や考え方などがあり、単純に語れるものではなさそうです。これも命の問題なので、別の機会に丁寧に考えたいと思います。

 

あえて意見は書きませんが、この会社の立ち位置は:

 

飼い主が
犬や猫を安易に捨てるから
自分たちが何とかする

 

と感じました。

 

現実との乖離

今は新型コロナの影響で、衝動的にペットをお迎えするケースが特に多いと言われます。これは世界的な傾向でもあるそうです。でも、日本では飼育放棄が殺処分の最大要因になるほど

 

「そんなに多いの?」

 

と驚きを感じます。なので、この会社が取り扱っている"フォスタードッグ"たちがどんな経緯で "里親" を探すことになったのか見てみました。

 

現在2000頭以上の犬猫が「保護犬・猫」として登録されているので、全部は調べられません。とは言え、ある程度のサンプル数がないと意味のある考察はできません。

 

総数の約5%にあたる、110頭の犬について公開されている情報をチェックしました。犬たちがいる/いた場所は:

 

・ブリーダーから:99頭
・育継続が困難になった一般家庭から:10頭
・保護施設から:1頭

 

(↓グラフにしてみました)

 

この会社の立ち上げ時の主張とはかなり違う印象です。皆さんは、どんな感想をお持ちになりますか?

 

今後の良心に期待

「前回ご紹介した会社」は、あくまで繁殖を引退した犬・猫がメインであることを明言しています。一部、飼育放棄のケースがあることも明確にしています。この会社で里親を探しているワンコたち、実は繁殖屋から「いらない」と言われた子たちがほとんどのようです。

 

 

理由が繁殖の引退でも飼育放棄でも、新しいお家を探す活動そのものが悪いはずはありません。是非、動物たちの幸せのための仕組みで続けてください。どうしても、(料金)システムに対する不信感が払しょくできませんが…。

 

 

年間100億円以上の、「あなたたち」の売上を支えてくれた命たちです…。新しい「ビジネスモデル」では、無いですよね?

 

以前は、目を背けたくなるようなワンちゃんの写真も少なくありませんでした。今見る限りでは、そうした状況は改善されているようですし…。「獣医師賛同型」として「賛同」されている獣医師の皆さんも、プロのプライドにかけてみんなを幸せにしてあげてください。

 

獣医師法(昭和二十四年法律第百八十六号)
第二章 免許(免許を与えない場合)
第五条四…獣医師道に対する重大な背反行為(中略)又は著しく徳性を欠くことが明らかな者(法より一部抜粋;強調は筆者)

 

獣医さんって、法律で「獣医師道」から外れることを禁止されている厳しい専門家なのです。外れたら、破門(=免許はく奪)です (↓これは「武士道」のイメージですが…)

 

 

とっても気になるコト…

ただ、こちらの場合には、もう1つとっても心配な面があります。生後1ヶ月とか数ヶ月といった、非常に幼齢の個体が複数見られます。その多くが、生まれつきの重い病気を抱えています。

 

もちろん、そうした子たちを含め「今そこにいる」命の行き先を見つけることは大切です。それにまったく異論はありません。気になるのは、その子たちが生まれた場所で、きちんと対策がなされているのでしょうか…。

 

恐らく血統書は発行されず、生まれた場所の情報も開示されないでしょう。部外者としては知りようもありませんが、親犬や血縁犬の健康チェックやエビデンスに基づいた交配など、適切な再発防止策が講じられていることを願います。

 

「賛同」しておられる
獣医さんに
聞けばわかりますかね?

 

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ということで、次回はここで見つけた疾患を抱えた幼いワンコたちの例を少しご紹介します。どの子も、幸せになるために生まれてきたはずです。