前回は、保護犬・猫のために里親探しの「マッチングサイト」を運営していると主張する会社についてご紹介しました。殺処分の主な原因は無責任な飼い主だとして、「foster dog/foster cat」(= 里子)に新しい家族を探す取り組みとして立ち上げたとのことです。一方で、登録されている2000頭を超える「保護犬・猫」の90%が「ブリーダーから」というのも事実です。

 

基本的には、繁殖業者から「いらない」と言われた子たちでしょう。でも、理由が繁殖の引退でも飼育放棄でも、新しいお家を探す取り組みが悪いはずはありません。お金儲けのビジネスモデルではなく、動物たちの幸せのための仕組みであることを願います。

 

とっても気になるコト

ただ、この会社の場合、非常に幼齢の個体が多いのがとても気になります。「マッチングサイト」には、年齢別のメニューがあるので検索してみました。2022年2月20日現在の登録では、28頭が1歳未満の子犬たちです。そのうち、6頭が一般の飼い主の飼育放棄(これも問題ではありますが…)、1頭が飼い主不明で保護されたようでした。

 

それ以外の21頭は、「ブリーダー」から。疾患を持っている、または「疑いがあります」とされています。水頭症、神経障害、心雑音、内臓の奇形、てんかん…、どれもかなり深刻なものです。この月齢では、ほぼ間違いなく生まれついてのモノでしょう。

 

もちろん、先天性=遺伝性とはいえません。ヒトの医学における定義では、例えば出産時に負ったトラブルが原因の病気も先天性とされます。一方、遺伝性疾患は文字通り遺伝、つまり、生き物として親から受け継いだ形質の中に病気になる要因(の一部)があって発症するモノです。ここに挙げられている疾患は、基本的には遺伝性と思われます。

 

遺伝性疾患については以前にまとめていますので、ご興味があれば読んでみて下さい。

 

 

異常性を感じる業界

病気の情報を開示していることは、これまで色々と見てきた「業界」のやり方としては

 

改善の方向に
進んでいると
言えなくもない
かも知れません…

 

普通(?)の良心やビジネスモラルをもった世界では、この程度の情報開示はあたりまえだとは思いますが…。まぁ、政治や経済、「獣」を含む医療の世界も、命をないがしろにする層は必ず存在するでしょう。

 

実際に耳で聞き、目で見てきた業界にもありました。ただ、ペット業界に異常性を感じるのは、内部に是正勢力がほとんど見られないトコロです。私がまだまだ勉強不足で「見えていない」だけかも知れませんが。

 

なお「内部」というのは、自称「ブリーダー」を含む繁殖業者や競りあっせん事業者(オークション)、ペットショップだけではありません。フードやグッズ、それから一部ですが様々な活動団体、犬種の保存会や獣医療関係者/企業などすべての「ステークホルダー」を含みます

 

一方、こうした深刻な障害を持っていることが分かったうえで、里親としてお迎えする愛犬家の皆さんは素晴らしいと思います。正直なところ、私にはできないと思います…。治療やケアにかかる費用だけでなく、何よりも精神的な負担もかなり大きいと思います。

 

でも、そんな飼い主さんのもとに救われた子犬や子猫は、仮に短い命だったとしても、病気と闘う辛い経験をしたとしても、幸せな時間を過ごせるでしょう。その1つ1つの命は、間違いなく救われています。

 

当然の幸せを脅かす業者?

で、気になるのは、こうした

 

遺伝性疾患を出した
繁殖屋が
必要な対応を
キチンとしているか

 

どうかです。もちろん、"きょうだい"など、同じ血筋の犬たちが必ず同じ疾患を発症するとは限りません。でも、リスクは明らかです。今後、同じような不幸を防ぐためは、親犬・親猫たちを繁殖から外すことが必要です。

 

逆に言えば、それをやらない場合

 

子犬・子猫の命や健康?
知ったことか!
飼い主の苦労?
知らんがな!

 

という意識だと言えるでしょう。あくまで、「それをやっていない場合」限定ですが…。

 

当事者である繁殖屋はもちろんですが、そうした事業者と何らかの取引がある関係者すべてが同じスタンスだと判断できます。

 

「獣医師賛同型」?

内臓や血管、骨格などの形成不全のような病気は「単一遺伝性疾患」ではないので、遺伝子検査ではリスクが分かりません。ただ、この月齢で深刻な疾患の症状/兆候が表れていれば、親犬の孕むリスクは明白です。

 

こうした疾患を出した「ブリーダー」に対して、「獣医師賛同型」のシステムを売りにしているこの企業がどの様な改善策を講じているのか気になる所です。

 

それから、「賛同」しておられる獣医師の方々は?この取り組みに、不可欠な役割を果たしていらっしゃいます。「専門家」として、何らかの対策を進めているはず、と素人は思います。

 

さらに、動物医薬品を取扱う超大手の薬屋さんも、パートナーとして活躍されているようです。今後、様々な専門的知見が活かされた動きが見えてくることを期待したいですね。

 

数字は積み上げているけど…

このサイトが正式にオープンしたのは2019年12月2日のことです。それから2020年9月25日には「保護犬・保護猫譲渡数が1,000頭を達成」と発表されています。余りのスピードに若干の違和感はありますが、1000の命に家族が見つかったことが喜ばしいことに間違いはありません

 

そのわずか4か月後の2021年1月には累計2000頭に達したそうです。4月には3000頭、7月には4000頭と魔法のようなスピードで「獣医師賛同の里親募集サイト」は成果(?)をあげているようです。

 

で…、「保護犬/保護猫」の数が減るどころか右肩上がりで増え続けているのが、何を意味するのか…。たくさん、複雑な要素が絡み合っているんだろうな。どう思いますか???

 

いずれにしても、大切な家族の一員である「この子たち」を守ってあげられるのは、まず私たちの知識と判断力が大切だと改めて思います。今回の結論は、あえてかなり「ふわっと」させてみました。大きなことは何も出来ないのですが、少しでも、ご参考になれば…