止血で落ち着いた親父と僕はただ泣き続けるサクラの様子を伺った。そして、気がつけば無表情にもさくらを見つめるルカがいて…。いつも…と様子が違う。僕は、不思議に思いルカに近づき肩に触れると…ずるっとルカの皮膚がただれた…。
「うわあああああああ!!!!!!!!!」
僕が叫ぶ中、どんどん皮膚が溶けていって…骨?…じゃなく小さな精密機械の敷き詰まった形をしたルカが僕の目の前にいた。僕は…体が硬直して目線だけを親父に向けると…
「これがエクストラの正体だよ…」
と僕に親父が微笑みかけた…?
え…
狂ってる…?
人間を機械化してまで完璧な頭脳を求めたいの…?
けど、この見解は間違ったもので、次のルカの変化に僕は目を丸くした。
天使…がいる…??
そう…ルカの身体はまるで孵化するかのように亀裂を走らせ…中からこの世の生き物とは信じがたい金髪に透明がかった白い羽を漂わせ…綺麗な大きな瞳を輝かせ…僕の目の前にいた。その…姿は髪の毛の毛先一本一本さえも美しすぎて僕は瞬きを忘れてたかのように凝視してしまっていた。
ふと我に帰ったとき親父を見ると…安堵の表情を浮かべその光景を受け入れていて……そして目を離した隙に、ルカはサクラに向かい手を伸ばしていた。ちっぽけなルカの腕では到底サクラの変化した姿にたわないけれど、それ以上の不思議な力が今のルカにはあるというのか…。急に木々はざわめきだし、木の葉がルカとサクラを包みこんだ。湖の雫も手伝って舞い上がり、サクラの膨脹したともいえる皮膚に纏わり付いてゆく…。
サクラは少し高い位置からありのままの少女の姿として剥がれ落ち、ルカにもたれ掛かり…綺麗な姿として優しく浄化されていった…。
森の日差しはこんなにも温かかっただろうか…
湖はこんなに穏やかだっただろうか…
風ははこんなに優しかっただろうか。
なんて無垢な表情だろうか。
どれだけ時間がたったか何がどう起こったか僕には把握できないでいた。無意識にも歩みよった目の前には一糸纏わぬサクラとルカの可愛い寝顔が並んでいる。
そう…終わったみたい。
僕はしばらくして救急車に乗ってやってきたケイさんや…穏やかな表情でサクラやルカの姿を見つめる親父をただ呆然と眺めながら木にもたれて…大きく…そして深く深呼吸をした。
もうそれは過去の事。
僕は最近めでたく結婚をしました。しかも相手はバツイチな子持ち。でも…とっても天使のような子供。もちろん僕の妻もかなりの美人さんなんだけどね。そしてとっても仲良しな家族です。もう…わかった…よね?そう。
ケイと結婚しました。
ルカが僕の大切な子供になりました。
そして…ケイのお腹には今新しい命が息づいています。
僕は親父に素直に尊敬 敬意を表せるようになりました。母の死を受け入れ強く生きれるようになりました。僕は今意欲的に父の研究の手助けをしています。二度と悲劇を繰り返さないように…エクストラを正しく扱い沢山の人を救い障害を持つ子供を減らし健康な家庭を広めるために、母の死が無駄にならないように…
悲しみが悲しみのまま終わらない様に。
でも…最近悩み事があるんです。あの…ね?ルカとサクラが事件以来やけに仲がいいんですよ…。
一応ショウさん繋がりの異母兄弟になるものだから親である僕は…頭を抱えてる次第であります。
皆が皆幸せになれたらいいのにね…
この広い世界を感じるままに―。