◎ゆりかご◎の多種多様な日々ヾ(。>﹏<。)ノ゙✨ -2ページ目

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 第五章~母と娘~


 早朝の肌寒さも少し薄れ、木々の緑は少し鮮やかさを取り戻すかのような天候の中、不自然にも裸足で一人さまよう少女がいる。広く森に囲まれ、豪邸であるセシリア家の豪邸を除けば、大自然極まりなく、少女はその綺麗な空気を体いっぱいに吸い込み伸びをしている。

「久しぶりの空気だわ」

 彼女はそう言って、周りの景色を楽しみながら森の中のとある場所へと沈んでいった。
もう一軒のセシリア家……。それは、目立つ豪邸と比べるととてもこじんまりとして見えるかもしれないが、庶民からみるとまったくもって裕福なレベルに値する。それだけに、比較する豪邸が大規模に展開されているからかもしれない。少女は、そんなもうひとつのその豪邸の扉へ向かって歩いていた。


 そのころ―そんな少女の存在に気がついていないそのもうひとつの豪邸の住人は、めったに鳴らない電話の音に反応し、受話器を取る。ショウの妻、サラである。
「もしもし?あ……。ゼグスさんお久しぶりです」
「すみません。ご無沙汰しております。あの、簡潔にお話したいのですが、サクラ……が研究室から脱室してしまいまして、予測ではそちらに向かっているかと!とりあえず私たちもそちらに今向かってます!危険ですのでサクラを家の中に絶対迎え入れないでください!こんな事になり、本当に申し訳ない!必ず彼女を連れ戻し、治療してみせますからご協力お願いします」
 そう一方的な電話で、すぐに切れてしまった。
 サラは困惑した表情をして、急な出来事に電話を手に立ち尽くしてしまっている。ただ、胸の中には恐れ、そして、不思議なもので嬉しさが入り混じっていた。現に……彼女は亡くなった旦那ショウに、事件以来、娘と再開を許されていなかった。それは、ショウが娘を事件に巻き込み、酷い姿にしてしまった現実を、妻に、夫のプライドとして、治療が完了するまで見せたくなかった……という事実がある。なので、いったい娘がどのように危険であるかも想像もつかず、ゼクスの電話の緊張感もサラにとっては、それを受け入れるのに困難だった。あれから時を経て、サクラの容態もだいぶ良くなっているのではないかという、親として、淡い期待を心の奥底で抱いてたりもした。
 ショウが自殺した後も治療が完了するまで断固として、旦那との約束を守ってきたサラ。しかし、娘と再会できる? 複雑と不安の心境のままでいたが、二階の寝室で寝ているユタを危険に巻き込むわけにはいかないと思い、二階に上がろうとした時だった。玄関をノックする音、そして、か細い少女の声がこだました……。

「……お母さん……」

「……お母さん……?」
「会いたいよ……お母さん」
 サラは無意識にも、カーテンに近づき、その隙間からサクラの姿を見つけると、想像以上に感情が高ぶった。皆が恐れているという想像と違う、あまりに普通の女の子の姿だった。サラは、大きく深呼吸して、ゼクスに言われた忠告を無視して、玄関に向かった。そして、二階で寝ているであろうユタの安全を祈り、静かに扉を開けた。そして……親子でよく似たその二人は再会をあらわにした。サクラはサラを一目見ると、くしゃくしゃの顔をして、サラに抱きついた。

 

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え……涙が出ていた。

 初めて親父の暖かさに触れたような、そんな感覚に戸惑いながらも。勝手に涙が溢れていた……。ああ僕は、幼い頃親父と母親に連れられて、色々な所に遊びに連れて行ってもらった。そう、封印していた記憶。母親が亡くなり、父親は急に忙しくなり交流がない毎日が増えていった。そしてそんな現実と昔の和やかさを比較したくなくて、昔の暖かな家族の温もりを、僕は忘れようとしていたんだ……。でも、蘇ってきた。幼い頃は絵に描いた様な素晴しい暖かな家族だったんだって。そして、ひとりよがりな自分自身がひどく子供じみていたと実感してきて、恥ずかしくなってきた。父親の仕事を理解しようとせず、いきなり裏返したように疎遠になった父、母がいなくなった空しさを穴埋めしてくれない父親の行動に、僕は責めていたんだ。きっと親父もその時一度に色んな問題を抱えて、僕をどうなぐさめようかなんて余裕がなかったのかもしれない。

 そして、いてもたっても居られなくなった僕は、シアさんと一緒に親父とルカを探しに屋敷を出てシアさんの所有している車に乗り込んだ。そしてその間にシアさんからのすべての真実を教えてもらった。そう、あの後、母さんがなくなった事で警察ざたになったようで、ショウさんは身柄を確保されたそう。サクラは、あのあと何度か警備員等が混乱して、指示なしに、無断で銃攻撃されたみたいだけど全然効かず、そのうち落ち着きを取り戻して……。そしてその間に親父が『ARIA』から解読した薬の調合でサクラの暴走をなんとか抑える事に成功し、あの地下の部屋で生活させていたみたい。警察の方は怪物がこの世にいるという事実を世間に発表することは混乱を招くとして、できないとして示談交渉の上、ショウさんは釈放されて、サクラ救助のための研究一員として仕事を任された。でも、自分の身勝手さで双子の兄の奥さんを殺してしまった。しかも、実の娘があんな状態になってしまった……。ショウさんの精神状態はほんとにボロボロだったそう……。非難する周りの研究医達。集中できず、うまく成果が上がらないショウさんの研究実績。中には彼を励ます人も一部いたみだいだけど、完全にショウさんは心を塞ぎこんでいたという。周りは必死に研究を進める中、ひとりフラフラと姿を消すなんて事もよくあったという。

 そして、そんな時、ショウさんは、十九歳の少女と恋に堕ちた。

 それが、シアさん……。出会いは屋敷の庭。帰宅しようと車に乗り込もうと駐車場に向かっていたシアさんが、玄関から続く庭で一人佇んでいたショウさんの顔色が悪かったので、声を掛けたらしい。それからというもの、家庭教師をしている際、屋敷内で待ち伏せてたかのように、何度もショウさんと会うようになり、交流を深めていく。きっとショウさんは、現実離れした、美しいシアさんに一目ぼれしたんだろう。しかし、シアさんはショウさんが結婚してるのを知らなかったというか、独身だと聞いていたそう。そして、シアさんも会うたびどんどんショウさんに惹かれて、思い実って、愛を育むこととなる。シアさんいわくショウさんは、なんだかほっとけない守ってあげたくなるような人柄だったそうで……。そんな中、子供を身ごもった。そう……それがルカ。そして、ショウさんはまとまな精神状態じゃない中、実の奥さんとの間にも同時期に妊娠させている。……それが、ユタ。そして、仕事、家庭、起こしてしまった様々な責任の重大さに耐えられなくなって、ショウさんは自殺した。しかも、ルカとユタの存在を知らないままに……。
 そしてシアさんは、不倫とは知らず、ルカを身ごもったことを親父に相談して、ショウさんが自殺した事件の事実を聞かされる。ショウさんの葬儀で、初めて、ショウさんの妻であるサラさんとシアさんは対面したが、若いシアさんを気遣って、大変優しくサラさんは接してくれたそうである。そして、シアさんは、子供を産むかどうか迷ったそうだが、当時の親父の最新の研究結果により産む事を決断する一因にもなった。その、研究結果というのは、産まれてすぐ、エクストラを規定量以上に移植することによって特殊な能力を身につけ、サクラの異常状態を救う鍵になるということを知ったから。
 
ショウとサラの子供はО型の子供が産まれる可能性はゼロだった

。しかし、ショウとシアからは、О型の子供が産まれる可能性があったのだ。それでユタじゃなく、希望通りО型に産まれてきたルカが移植被写体に……。でも、それはシアさんのある思いがあって同意してくれたからこそ。ショウさんの償いきれなかった償いを二人の息子ルカによって託したいと……。そして、そういう理由もあって親父は、鍵である力を持ったルカを連れて、サクラを探しにいったんだ。しかし、シアさんにとって、ルカは唯一血の繋がった可愛い我が子。生まれててすぐに、親が決めてしまった危険な人生。移植被写体にしてよかったものか、何度も後悔の念に捕われたという。だって子供には何の罪もないのだから。大事な命なのだから。シアさんは、親父がルカを、連れて行った今も、不安で不安で、本当はしょうがない様子だった。僕はそんなシアさんを無念ながらうまく励ます言葉も見つからずに、森の奥へと進む車の行く先をじっと見つめていた。

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第四章~真実~


 シアさんは続けた。
「じゃあ……長くなるけど。七年前の出来から話すわね。当時双子のゼグスさんとショウ発見したのは、実際は海外を回って色々な研究を勉強していたショウさんだった。でも解読を進めることに成功し、実行したのはゼグスさん……。それで、忘れもしない事件が起こってしまった。私は現にその時はショウさんと出会ってなかったし、後からゼグスさんにきいた事なんだけど。エクストラの研究……移植する人物にはね、条件があったの。そ
れは、最新研究結果であってほんの一部ゼクスさん側の助手しかその結果をまだ知らされていない段階だったわ。それも移植実行予定のほんの数日前に発見されたもの。まさか条件があるだなんて研究員の多くは全く理解していなかったわ。だけど彼、ショウさんはその事実を知らずに、最終段階で可能だと考えられていた移植にまさか非があったと思わす、ゼグスさんに秘密で初めての移植成功実績がほしいがために、エクストラ移植を無理に実
行してしまった。その移植者がね……サクラちゃん……なの。きっと生まれつきサクラちゃんは身体が弱かったから親としてエクストラの治癒能で助けてあげたいと思っての事だったんだと思うけど……」
 僕は息をのんだ。だってサクラは今や公開されている条件のO型じゃないから。シアさんは僕のそんな表情を読み取ったのか、ひとつ頷いてから、また話を続けた。

「そう、条件に当てはまってなかったの。当時のサクラちゃんの年齢は、たしか七歳と聞いていたわ。そして事件は起こった。サクラちゃんの……身体に異変が起きて……。まるで人間じゃない、怪物のようだった……って」
 
 その後、どれくらいの沈黙があっただろう。長いようで、短いようで。僕とシアさんは地下から上がって、広間へと場所を変えた。だんだんとわかってくる真実。合わせたくない辻褄が合ってしまう予感。落ち着いて大きな紫色のソファーに二人で座った時、シアさんはぽつりと言った。
「あの時ね、地下での騒ぎに気がついたゼグスさんと、その奥さんはね、その場所にむかったらしいの……。そして、サクラちゃんの暴走によって、ひとり……犠牲者がでたの。わかる?わかるわよね?ユキくんの……お母さんよ」

 これが、組み合わさった七年前の真実? 僕は何故か涙さえ出なかった。ただ、体ががくがく震えて、「そう……なんだ」発した言葉さえ情けないくらい声が揺れている。確かによく思い出してみれば、昔、臨時ベルで騒ぎがあって、僕は怖くなってメイドのメグと、一緒に非難した記憶がある。その後母が急に交通事故で亡くなったと親父に聞かされた。車で出掛けた形跡もなかったのに。交通事故なんかじゃなかったんだ。そう思いながら、物静かで優しく穏やかだった母親の面影を探ってみた。メイドのメグとも仲が良くて、清掃とかもメグを気遣って手伝うような優しくていつも笑顔で回りをあたたかい気持ちにしてくれる母親だった。幼い頃、絵本を読んでくれて……。そして、母親の葬儀の時は、あの明るいメグが号泣してたな、など、僕はいつしか封印していた母親との思い出を辿ってみる。
 でも、考えてみれば、親父もシアさんもこの真実を受け止めたまま五年以上もいたんだよね?
「何故僕には秘密に?」
 自然と声がそう発していた。するとシアさんはふっと優しい表情を見せて、こう言った。
「ゼグスさんは、あなたを心配して失敗した研究結果の恐ろしい真実を知らせたくなかった。母の死で悲しんでいるユキくんにこれ以上負担をかけたくなかったのよ。奥さんを失くして……唯一血の繋がっているのはユキくんあなたひとりですもの。とても大切に思っているのよ。この事件の解決に手一杯であなたにかまってあげれなかったかもしれないけど、ゼグスさんはユキくんを本当に大事に思って……私にも秘密にするよう強く言ってきたもの。あ……ユキくん?」

 

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