.
.
tomorrow〜scene21〜
.
.
「はっ?」
.
ビールを並べてた修二が手を止めて、振り返った。
.
「踊れんのんよ、俺」
.
「はっ?ケガはよぉなったって、言うてたやん」
.
「ん、よぉなったで?歩けるし、走れる。普段の生活には問題ない」
.
「やったら…」
.
「でも、ちゃうんよ。踊ったらわかるんよ」
.
「誰かにそう言われたんか?」
.
「誰も言わん。他人が見てもきっとわからん」
.
「はっ?お前、何言いいよん?」
.
「俺がわかるんよ。全然ちゃうんやって。俺、踊れんのやって」
.
.
自分で何度も『踊れない』って確認するように言葉にする。
.
…そしたら、少しは、受け入れられるやろうか。
.
.
.
.
明日美 side
.
.
『俺、踊れんのやって』
淡々とそう話す彰吾に、どう声をかけていいかわからんかった。でも、何か言わないかん…。
.
「…リハビリ、これからも続けたら…」
.
「そうやないんや…」
.
「他の病院とかっ」
.
「ちゃうんやって!!」
大きい声を出した彰吾が私の方をぐっと向いた。
.
「歩けるし、走れるんやって! お前にはわからん!! 誰にもわからん! 周りが見てどうこうじゃない!
でもっ、俺が『違う!』てそう思うんやって! リハビリして、どうこうなるもんじゃない!」
.
.
『全然違うんよ…』
グシャって髪を握って俯くその姿にそれ以上かける言葉は見つからなかった。
.
.
彰吾は、普通の人とは違う。
.
『踊る』=『生きる』だから。
.
.
.
.
「…帰ってくれ」
.
「彰吾…私」
.
「帰れや!…ほっとけや!!」
.
「でもっ」
.
「ウザイ言うとる!俺の気持ちとか、お前考えた事あるか?!
明日美のそれが『重たい』 って言うとんやって!『やってやってる!』って自己満もええかげんにせぇよ!」
.
「……っ」
.
.
「彰吾!やめって!」
.
修二が肩を掴むと、「離せや」って反対を向いた。
「ごめん…なさい」
それ以外の言葉はなかった。
.
彰吾は普段こんな風に言ったりしない。
そうさせてるは、私だから。
.
.
『帰れ』…ん、そうやんね。
泣きそうになるのをぐっと堪えて、リビングのドアを引いた。
.
.
「明日美?」
.
追ってきた円の言葉に「ん…大丈夫やけん」っとしか言えなくて。
.
逃げるように彰吾のマンションを出た。
.
.
.
大切な人の、一番大事なものを壊した。
.
.
.
.
『最悪だって思う事に直面したからこそ、得られるモノはある』
.
.
.
.
.
私にも彰吾にも、それは当てはまらなかった。
.
.
.
.
.
失うだけで、奪うだけで、終わった。
.
.
.
…next
.
.
.
