
if…〜scene33〜
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『私は壱馬くんが好きやわ…』
ちょっとはにかんだように笑う。
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「何か大きいきっかけがあったとかやないんよ。
気ぃついた時には、『壱馬くんに会いたいなぁ』って思ってたん。誰かを『好き』ってこういうんなんやろなって…」
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「ん…」
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明日美さんのそのシンプルな言葉が嬉しかったのに、どうリアクションしたらいいかわからんで、『ん…』としか言えなかった。
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「あんま、こういうん自分でもよぉわからんくて。 私な?自分から告白って、今までないんよ。自慢とかやないで?(笑) やから、どう言うたらええんかわからんの。 伝わっとる…?…ちゃんと」
何も言わない俺を恐る恐る見上げる瞳。
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「伝わっとる。大丈夫。
『明日美さんは俺が好きや』って言うとるんやろ?」
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ちょっと茶化してそう言うと、『もぉー』って口をむっと結んで膨れた頬。
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「ふふっ(笑)膨れんなって」
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その頬に手を添えると「めっちゃ勇気いったんやけんね」って、更に膨れた。
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頬に添えてた両手、ゆっくり角度を変える。
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「っ…」
彼女の息が止まるのがわかる。
そのタイミングで、ゆっくり触れた唇。
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そっと離れて行くタイミングで、俺の背中に回された腕。
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『もっと…』 って言うてくれてるって、そういいように受け取った。
今まで何度も強く抱きしめたいって思う事があった。
でもそれはできんかったから。
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やっと…。
力加減なんてようわからんようになる。
ただ『こんなに好きや』を伝えたくて、ぎゅっと抱きしめた。
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「…好きや、明日美さん」
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やっと言えた。
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明日美 side
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「送ってくれてありがと」
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「ん。ほんまはもうちょっと一緒におりたいけど…」
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目見ては、恥ずかしくて言えんのか、ブツブツ独り言位の声の大きさの壱馬くん。
年は1個しか変わらんのに、彼のかわいいとこ。
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「(笑)ふふっ。やから挙動不審やって言うとるやん、そういうん」
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「年下やって思って、おちょくんなって」
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「ん?怒ったん?」
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「怒らんわ、こんなんで」
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「顔怖いで?ライブの時みたいな『スマイル』ないん?」
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「あれは、営業用や」
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「うわっ、最低」
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「「(笑)」」
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別れがたくて、私のアパートの下でかれこれ数十分。
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手を繋ぐでもなく、おたがい腕を組んだままの何か変な光景。
距離の詰め方が、この年になってもうまくわからなくて。
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「明日美さん?」
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「ん?」
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「やましょーさんに…俺から報告してもええ?」
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「…ん。ええよ。私からはまた何かの機会に話しするわ」
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「…」
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私のその言葉にふって、視線を外した。
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『ヤキモチ…かな』
自分が壱馬くんの立場やとしたら、不安がないって言えば絶対ウソで。
自分よりもたくさんのことを知っとるってなったら、ヤキモチ妬いて当然やと思うから。
2人で会うってなったら、嫌…そうやんな。
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「や…やっぱり私からは何も言わんでええわ。壱馬くんが言うといて?」
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「…ん…ごめん。あかんな…余裕ないやんな…俺」
髪の毛をグシャって握ると「ダサっ」て俯く。
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「私な、彰吾に夢もらったんよ。
『大切な人を幸せにする』って夢。
その夢を叶えるために頑張ろうと思って」
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「…ん?」
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「壱馬くんの事やで?『大切な人』。
私にとって彰吾はもちろん大切なん。でも、『幸せにしたい』っていうのとは違うんよ。そこが、壱馬くんと、彰吾の違いなん」
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「ん…」
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「何か不安に思うような事あるなら、言うてくれたらええけ。私、気づいてないかもやけ。…やけん、言うて?壱馬くんが嫌やって思う事はしたくないん」
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「ん…」
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そう言うと組んでた腕を解いて、ゆっくり私を抱き寄せた。
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「…ずっと一番でおりたい。子供やって思われたってええ。明日美さんの一番でおりたいん」
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子供っぽいなんて思わん。好きやからその人にとっての一番でいたいって普通やもん。
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「ありがと、壱馬くん」
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.彼の気持ちが嬉しかった。
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…next
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