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Sadistic love〜scene20〜


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「きもっ」

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専務の姪っ子かなんか知らんけど、大学時代のあの時の女を思い出させるような、その目に反吐が出そう。

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男を品定めして、俺を自分の装飾品の一つにでもしようか…みたいな態度。 

なれなれしく握られた腕。

思い出したくもないその感覚に、震える位やった。

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「あっ、深月ちゃん」

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向かいの席の先輩がそう言いながら視線を俺の後ろへ向けた。 振り返ったそこには、軽蔑の眼差しを俺に向ける深月がいて。

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『止めてくれ…』

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彼女のその冷たい瞳に、心臓が掴まれたみたいに苦しくなって、息が止まりそうやった。 

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悲しそうな目に、どう反応したらええかわからんくて、目を逸らすしかできんくて、平静を装う事に必死やった。

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『嘘やろ…』

その時の彼女の瞳を見て、俺は気づいてしまった…。

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『今までとは違う』って。

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『失いたくない』って。

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もう二度と自分はこんな感情を持つ事はないって思ってたから、どう対応していいかわからんまま時間は過ぎてく。

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昼休み。

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深月に連絡…と思ったのに、おっかけてきたその女に捕まった。

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「お昼、一緒に行きましょ、川村さん」

不自然な位の上目遣い。

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目の前のその女から視線を外して遠くに目を向けると、そこには深月がいて。

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「みっ…」

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声をかけようとした俺に背を向けると足早に歩きだす。そして、後ろからやって来た北人が、俺を一瞥して、彼女を追っかけた。

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北人が深月の後ろを追ってくのを見て、「そっか…それが正解やんな」って気づく。 

こんな時、普通のやつならおっかけてくもんな。

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これが、誰かを『好き』だと思うって事。

それが咄嗟にできなかった俺は、やっぱりその資格はない。

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『欠落した人間』その分類。

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「何を今更…」

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そう言葉にすると、自分に言い聞かせられる気がした。

俺はそっち側じゃないんやって…もう一生。

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「川村さん?」

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不思議そうに俺を見上げるその女の目を見て、スイッチを入れなおした。

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「すみません、ご飯行きましょか…」

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落ちるなら、…もう底まで落ちればいい。

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北人 side

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「これ、あげる。さっきのお礼」

セブンでシュークリームをゲットした深月さんが、俺へとそれを差し出した。

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「おやつに取っておきましょ? どうせ、『やっぱり返して』って言うんでしょ?」

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いつもみたいに冗談ぽくそう言ったのに、小さく口元を緩めるだけで、俺に背を向けて会社に戻ってく。

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その背中は明らかに元気がなくて…。

『凹んでます』って書いてあるようだった。

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≪今晩時間とって、話しあるから≫

そう壱馬にLINEを送った。

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今、この隙に彼女を…そう一瞬過った。

でも、あの時、俺は気づいたから。

深月さんを呼び止めようとした壱馬に…。

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悲しそうな顔をした彼女が壱馬に背を向けた瞬間、壱馬の目が『行かないで』ってそう言ってるように見えた。

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≪わかった、仕事終わったら連絡する≫

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すぐに返ってきたそのLINEを確認して、ふぅって手元のシュークリームに目をやった。

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…いったい俺はどうなる事を望んでるだろう。

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