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if…〜scene34〜
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「そっか…おめでとう。よかったな」
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「はい…」
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次の日、仕事終わりでやましょーさんに昨日の事を話した。
穏やかに笑うと「やっとやな…。時間かかってしもて…何しょったんよ」ってちょっとディスられた。
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「じゃあ、お祝いしたるけ。 場所は…ちょっと確認するけん待っといて」
そう言うとスマホを持って部屋から出てく。
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「じゃあ、3人で。サービスして下さいよ、お願いします」
って電話しながら戻ってきたやましょーさん。
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「よし、じゃあ行こうか。今日、近くにおるっていうけ。明日美にも連絡しといて?」
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『近くにおる…?』
やましょーさんの言うてる意味がよくわからんまま、明日美さんに連絡して、仕事終わりで待ち合わせ場所に向かった。
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「ウソやろ…」
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やましょーさんと乗ってきたタクシーを降りた真ん前にあったのは、田﨑さんのラーメン屋さん。
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「はっ?壱馬、わかるん?この店」
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「あっ…2回来た事あって」
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『偶然』って言葉の意味をこの時しっかりと理解する。
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2人で目を見合わせてると、「やまちゃーん」って、声が聞こえる。
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「あっ…えっ?えー!!!」
俺らを見て、「2人知り合い?」って鳩が豆鉄砲食らった顔をする田﨑さん。
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「彰吾?壱馬くん?ここ…?えっ?マジで?」
反対側から歩いて来た明日美さんが、「何か、怖い怖い」って言いながら笑って近づいてくる。
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そこから、明日美さんを真ん中に3人で椅子に座って、とりあえずの報告。
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「ってな感じで、たかひろさん。今日お祝いなんで、お願いします」 やましょーさんがカウンターに手をついて、頭を下げると、「もー、仕方ないなぁ」って、 俺らの前に出されたグラス。
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「彼女…明日美ちゃんだっけ?お酒飲めなかったよね。 はい、前回喜んでたやつ、オレンジジュース。 壱馬くんは…お酒飲めるの?」
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「はい。まぁ、普通には…」
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「よし、じゃあ。今日はやまちゃんのおごりで、俺も…」
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「『今日も!』ですからね、毎度言いますけど(笑)」
4人でグラスを持ち上げると「乾杯」って声を合わせた。
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田﨑さんが『特別だからね』ってメニューにはない、つまみをいくつか並べてくれて、締めにいつものラーメン。
3人やったら、ちょっと気まずいかも…って思ってたけど、それは、やましょーさんも一緒やったんかな…。
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田﨑さんを中心にほんと、メシなんて食うてる間もない位笑ってすぎてく時間に、ちょっとほっとした。
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「ごちそう様でした…」
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「ん。また2人でおいで」
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「…はい」
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「壱馬、明日美の事、後よろしくな」
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「はい。ちゃんと送ってきます」
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「俺…もうちょっと飲んでくけ、じゃ」
俺らに手を上げるとまた暖簾の中へと戻ってくやましょーさんの背中を見送ってから、2人で歩き出す。
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そっと握った彼女の右手。
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「ん?」
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「何か、モヤモヤみたいなんが、全部クリアになったん。そしたら、手繋ぎたくなった」
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言葉にするんはちょっと恥ずかしい気もしたけど、これがほんまやから。
薄いグレーの中におったような気分やった、今日まで。
でもちゃんと気持ちを伝える事ができて、やましょーさんにも『おめでとう』って言うてもらえて、単純やとは思うけど、すーってモヤが晴れてく感じで。
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「こうやって手繋いでると、カップルみたい…やね、私ら」
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「ふふっ(笑)みたいって何やねんて…」
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「(笑)何か慣れんね…」
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「確かに」
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「「(笑)」」
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背中に月の光を浴びて伸びる影。
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しっかり手の部分が重なるその2つの影を見て『幸せやな』って思った。
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...next is Lastscene
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