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if…〜scene16〜
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彰吾side
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「ただいま…」
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年に一回のその日。
数えきれんくらい「おめでとう」って言われて、≪おめでとう≫の連絡が来て。
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『ありがとう』って何度も言う事ができる。
最高に幸せな日。
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両手で抱えきれんくらいのプレゼント。
メンバーが俺の事を考えて選んでくれた…それだけで胸がいっぱいになる。
うちは人数も多いから、物理的にも両腕いっぱい。
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誰が待ってるとかではないけど、『ただいま』って言う習慣は小さい頃からの母親からの教育で。
ソファの上に紙袋を並べて、キッチンで手を洗う。
うがいもちゃんとして。
リビングの隅に置いてある鏡に映った自分を確認。
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「ええな、やっぱり」
壱馬にもらったシャツが気に入りすぎて、結局着たまま帰ってきた。
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鏡に近寄って、胸元の缶バッチ3つを再確認。 視線を鏡に映る自分にもってくと、ふふって笑ってて。
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「きもっ」
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ポケットから取り出したスマホ、呼び出した名前は明日美。
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『LINE…いや、直接がええか…』
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もう22時過ぎてる。
さすがに仕事は終わってるやろうし。 鳴らしたスマホ、呼び出し音は途切れる事ないまま。
『何回も電話するんもな』
『しつこいって思われるんもな』
って、何に気を遣ってるんや、俺。
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「ちょっ、一旦保留」
持ってたスマホをソファに放った。
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誰かに連絡するのに、こんな色々考えるなんてこと今までなくて。自分がそうなってる事に驚きでしかなかった。
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ふぅって一呼吸置いて、「よし」って拾ったスマホ。
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《缶バッチありがとうな。ええ感じやわ》
これがやっぱり無難よな。
それだけ送って、既読にならないままの画面を凝視。 この文面やったらスタンプ1個返ってきて終わる可能性大かもしらん、アイツの性格やったら。
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《今度、俺らのライブ来てみんか? おもろいで?》
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家族以外の誰かをライブに誘う事なんて初めてで。
ただ、単純に明日美には、今俺がやってる事を見てもらいたかった。
『オモロイ事をやって生きていきたい』そう昔話した事、覚えとるとは思えんけど。
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でも、一人で来るんは気遅れするかも…やな。
既読にならないのをいい事に、思うがまま連続でLINEを送った。
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《修二も、円も誘うけん、じゃけ、3人で来いや。招待するし》
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《遠慮とかせんでええけんな》
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まだ、修二と円の予定とか確認せんまま、送ったLINE。
結局その日のうちに返信はないまま。
既読にすらならんかった。
でも、まぁそんなもんか…位な感覚。
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スマホを置いて、貰ったプレゼントを1個ずつ開けては、
『えーやん』
『これ欲しかったんやて』
『陣さん、これ…何に使うん?』
『まこっちゃん、マジで神』
そんな、ワクワクする、楽しい時間を満喫してた。
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明日美からの返事は翌日、仕事中に。
返事が来た事に無条件にテンションがあがる。
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《1日遅なったけどお誕生日おめでとう。 あれ、売れ残りやけん(笑)》
《ライブ、ありがと。日程教えて、調整する。 踊っとる彰吾、久々に見たい。オモロイん、楽しみにしとくけ》
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『よっしゃ』
行けないって言われるんやないかって、返事来るまでずっとそれが気になってた俺。
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「やましょー、どうしたん?何、そのガッツポーズ」
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「はっ?」
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大きな鏡に映る俺、右手にスマホ。
左手は無意識のグー。
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「やっ、何でもないっす。何でも…」
必死な俺を見て「そうかー?」って不思議そうに悪い顔して笑う陣さん。
この人、見てないようで見てるとこあるけんな。
まぁ、翌日には忘れとる事が多いんやけども。
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ポケットのスマホを入れて、「はい、続きやろか」って話しを切り上げてメンバーを招集。
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あの頃とは違う…そんな俺を明日美に見てもらいたかった。
あの頃は『夢』なんて『夢』でしかなかった。
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今はそこに指先がかかる位置に、きっと居ると思うから。
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誰よりも彼女にそれを示したかった。
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…next
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