
.
.
if…〜scene18〜
.
.
.
「こんばんは」
そう声をかけがなら赤い暖簾をくぐった。
.
.
「いらっしゃい」
.
勝手に『おじいちゃん』みたいな人がやってると思ってた屋台のラーメン屋さんはキャップを目深に被ってても、『イケメン』ってわかる男の人で。
.
.
「あっ…えっと…、後から一人来ます。2人ですけど、いいですか?」
.
「どうぞ、座って待ってて」
.
キャップを後ろ前に被りなおすと「何か飲む?」って私にグラスを差し出した。
.
.
「お水で…すいません。私お酒飲めなくて…」
.
「そっか…じゃあ、お水、特別氷入り(笑)」
って笑うと、氷をグラスいっぱいに入れてくれて、そこに注がれるお水。
.
コポコポって音と、すぐに、水滴が付き始めたグラス。
.
普通の水なはずなのに、おいしそうで、一気に飲み干した。
.
.
.
「あのっ、こんばんは」
.
後ろから聞こえたその声と一緒に、私の隣に『はぁ』って座った真っ黒な塊。
.
.
帽子を取ると、髪の毛をワシャワシャして、私の方へと向き直った。
.
「お待たせ…しました(笑)」
.
お散歩から帰った大型犬みたいなその仕草に、ふふって笑うと「めっちゃ急いだんやから、 笑うなや」って、椅子に座りなおした。
.
.
2人で並んで食べた醤油味のラーメン。
「ここで店やるの初めてだからサービス」ってお兄さんが乗せてくれた味付け卵。
.
.
「「ラッキー」」って2人で、目を合わせて笑った。
.
.
「うまっ」
「おいしー」
一口食べて、2人で目を合わせて、この感動を分け合う。
後はただ黙々と、食べきるまで、食事に集中。
.
.
「「ごちそうさまでした」」
.
お箸をおいて 手を合わすと、「ふふっ」ってお兄さんが私達を見て笑う。
.
.
「2人はさ…姉弟?」
.
「えっ?違います」
.
「じゃあ、夫婦?」
.
「っ?いやっ、ちゃいます!」
必死に私の隣で首を振りながら、手も振る壱馬くん。
全力の否定。
.
「そうなんだ。ごめんね。すごく似てるから、家族なのかと思って…。 本当においしそうに食べてくれて、ありがとね」
.
.
そう言うと、
「これ…次回2人で来た時にまた卵サービスするから、持ってって。都内ぐるぐるしてるから、 また見つけて」って名刺を壱馬くんに手渡した。
.
.
「ありがとうございます」
.
「またおいでね」
低音の心地良い声に見送られて、屋台を後にした。
.
.
.
背中から月の光に照らされ、私たちの前に影が伸びる。
.
.
「急に呼び出してごめんね、でもおいしかったよね?私東京出てきてから食べた中で一番かも」
.
「俺も」
.
.
おいしいものを食べてる時は無言。
そういや、牛丼食べてる時も、無言だったな。
食べる事に集中…その感覚が似てるなって今になって気づいた。
.
.
「次行く時、抜け駆けなしだよ、私も誘ってよ!」
.
.
.
.
.
壱馬 side
.
.
.
『私も誘ってよ』
単純においしいものを食べたいからそう言うてるんかもしらん。
でも、もうこの際それでも全然よくて。
.
.
「あー、明日からもやし生活やんこれ。でも、ラーメンおいしかったしね。ん、プライスレス!」
.
.
酒飲んだわけでもないのに、テンション高い彼女。
.
.
『幸せそうで、なんか俺も嬉しい』
.
.
.
「誰かとごはん…てさ」
.
「ん?」
.
「前にさ、壱馬くんが『誰かとごはん』ていい』みたいな話してたやん?
私、誰かとごはんてさ、高校時代のお弁当が最後で…。
…楽しかったんよ。友達のさ、円のお弁当を、修二がいっつもツマんでさ、円がブチギレてっ(笑)」
.
.
楽しそうに昔の話をする彼女を見れて、嬉しかった。
前に昔の話を聞いた時は泣いてたから…。
.
.
.
.
「探さなきゃね、ラーメン屋さん。卵サービスしてもらわないかん(笑)」
.
「ん。やな」
.
「何か楽しいな、こういうん、ね?」
.
「ほんま」
.
.
渡された名刺にに目を落とした。
店の住所も電話番号も書かれてない。
ただ名前だけがそこには記されていた。
.
.
.
.
.
.
.
.
『田崎敬浩』
.
.
.
.
.
...next
.
.
.
田崎さん、だーれだ(笑)
一般人として、登場させてみました。遠い先で、再登場…するかな。まだ未定です。himawanco