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if…〜scene19〜
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「なんか、無駄に緊張するんやが、俺」
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「何でよ!修二なんて週1で彰吾と会うとるやん。
ね、明日美?彰吾ファンサしてくれるかな?」
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「円、彰吾にファンサもらいたいん?」
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「え、そりゃ欲しいやろ」
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「彰吾やで?」
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「…やっぱり北ちゃんかな」
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「うわ…イケメン好きやんそれ。修二、彼女浮気しとるで(笑)」
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「大丈夫。なんだかんだで、円は俺しかおらんから」
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「何?その自信。きもっ。そのうち足元掬われるけん(笑)」
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連絡があった通り、ライブに招待された私たち3人。
会場の奥の方。よく見えるとは言えない席だったけど、真正面にステージが見える場所が準備されていた。
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私は、駅で踊ってる彰吾の後ろ姿しか知らなくて。
真正面から彼が踊ってるとこは初めて見る。
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幕が開いた瞬間、彰吾に自然に目が行った。
横一列に並ぶと、小柄なのが際立つ。
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でも、スポットライトが当たって、踊りだした瞬間、ひいき目かもしれないけど、他の誰よりも大きく見えた。
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上がる歓声に手を上げる。
夢を叶えた彰吾は、本当に素敵やった。
途中までは、ずっと彰吾を目で追ってた…。
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でも…。
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ライブの中盤、ボーカル3人だけがステージの上に。
その時に真ん中にいた壱馬くん。
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暗転した会場。
すーって小さく息を吸う音の後、無音の中、壱馬くんの声だけが真っすぐに響いてく。
寒いわけでもないのに、鳥肌が立つ、そんな感覚初めてだった。
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彼の声に、それまでの時間とは違う体の真ん中が震える感じに、自然に掌を握ってた。
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歌ってる彼を初めて見た。
その歌声を聞いた衝撃は、ライブの後一旦椅子に座ったら、立ち上がれなくなる程で。
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「明日美?大丈夫?具合悪いん?」
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「ちゃう、大丈夫。なんか、凄すぎてやばい(笑)」
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「ね、彰吾すごかったよね?」
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「ん…」
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「ほくちゃん、かっこよかった!顔、むっちゃ小さい」
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「(笑)ね、ほんと」
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円にはそう言ったけど、途中から、ずっと彼の声から耳が離れていかなかった。
姿が見えなくても…壱馬くんの歌声に、息をするのも忘れそうだった。
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彰吾 side
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「彰吾、かっこよかったで。もう、親友として鼻高いわ。倉工の輝く星やな。もうピカピカやで、お前!」
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「『倉工の…』はあんま嬉しないけどな(笑)来てくれてありがとな。円も明日美も」
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「ん、かっこよかったで、彰吾。ほんますごい」
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「円、ずっと『ほくちゃん!』言うてたやん」
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「そりゃ、あんな男前今まで見た事なかったもん。
岡山には存在せんでな、あんな顔面」
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「(笑)」
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ライブの後。
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4人で話してると、ふっと明日美の視線が俺から外れるのを感じた。
それに反射的に振り返るとそこには壱馬。
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「壱馬くん。私、来てたん、気づいとった?」
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「ごめん、わからんかった」
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「えー、そうなん?」
「そんなもんやで(笑)暗いしな、俺、今日コンタクトしてないんよ。忘れてもうて…」
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「何しとんそれ(笑)
でも、壱馬くんの歌、すごいよかった。びっくりした。『歌、うまいっ』てなった!」
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「ふふっ(笑)褒めてもらえて嬉しいわ」
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俺が知らん間に2人の距離感が近くなってるのなんて、すぐにわかった。
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2人が話してるのを間近で見て、気づく。
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『明日美は、壱馬が好きなんやろな』
『壱馬も絶対そう』って。
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そんな鋭い勘なんか、いらんのに。
見た事ない、明日美の表情に、そっと俯いた。
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壱馬 side
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明日美さんが来るんは、知ってた。
でも、どこにおるかは、知らんかった。
結局最後まで、見つけられずで。
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途中のバラードの時。
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ステージの真ん中に立って、この会場のどこかにおる彼女に向かって。
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『届け』
そう願って、唄った。
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…next
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2日ほどお休みです。 himawanco