.
.
.
if…〜scene25〜

.
.
「やましょーさん、ちょっと話しあって…昨日言えんかったから…」
.
「ん?」
.
.
壱馬が改まってそんな風に話しかけてくる。
 昨日タイミングを逃したからって、諦めるわけでもなくこうやって。 
もう気持ちがしっかり固まってるって事。
.
.
明日美と一緒に、昨日の夜バスで岡山へ。 
今日、朝イチの飛行機で東京に戻ってきた壱馬。
.
夕方からの仕事終わり、帰ろうとしてた俺の後ろに立つと、「時間ありますか?」って。
.
.

「ええよ」
.
そう返事をすると、「ふぅ」って一呼吸した後、「はい」って小さく頷いた。
.
「うち、たまには来るか?いつも壱馬んちばっかやし」
.
「はい…」
.
そこからの会話は特にないまま、うちへとやって来ると、「おじゃまします」って丁寧に靴を並べた。
.
.
.
『もうちょっと…頼りないヤツならな…。ちゃんとしすぎやし、ほんま』
.
.
.

.

壱馬 side
.
.
通されたリビング。 
座ったらええはずなんやけど、今からの事を考えたら変に緊張して、部屋の隅っこに立ってるしかできんくて。
.
.
「うぉっ、何しとん?座ったらええやん」 
荷物を置きに隣の部屋に行ってたやましょーさんのド真ん前におった俺。 
.
「あっ、すいません」慌てて飛び退いた。
.
.
「明日美から、昼過ぎに連絡あったんよ。壱馬んとこは?」
.
「はい…俺んとこにもありました。会うてきたって。お父さん、怪我大丈夫やったって…」
.
「壱馬にも、そんだけなん?アイツ」
.
「…はい」
.
「ほんま、もうちょいあるやろ…な?どうやったとかさ…5年ぶりやで?」
.
「明日美さん…何かいつもそんな感じじゃないっすか?ちょっと言葉足らんっていうか…。 事実は伝えてくれるけど、どう思ったみたいなんは言わんっていうか…」

「(笑)やな
…帰ったら、聞いてやってな?」
.
「えっ…」
.
「聞いたら、ちゃんと話しするやつやから。
自分からは言わんけど、「どうやった?」って聞いたら、ちゃんと言うけ。
「聞いて」って言うんが、下手くそなんよ、明日美」
.
.
.

『俺よりも、彼女を知ってる…』
.
.
.
「よぉ、知ってるんですね、やっぱり」
.
「ん…そやな。『友達』やからな」
.
「『友達』…ですか」
.
「そうや?大事な友達」
.
.
.
.

「俺は、ちゃいます。俺にとって明日美さんはそうやないです」
.
.
俺にとって、明日美さんは『大事な人』やけど、『友達』とはちゃうから。 
.
.
俺に背中を向けて冷蔵庫を開けると「ビールでええ?」って聞く。
.
.
「あのっ…!」
.
話しを聞いて欲しくて声をかけると、冷蔵庫をカタンって閉めた後、俺に背を向けたまま口を開いた。
.
.

「大事な友達やから…泣いてるとこは見たくない。 今まで大変やったんも、知っとるけ。
その分幸せになって欲しいって思っとる」
.
.
振り返って缶ビールを一本俺に差し出すと、「まぁまぁめんどいで、アイツ」って笑った。
.
.
「…はい、大丈夫です。ん、がんばります」
.
.
プシュっとビールを開けると、「乾杯」って先に飲み始めたやましょーさん。
 ゆっくり缶を置いて、俺の目を見ていつもみたいに優しく笑う。
.
.
「じゃあ宣誓してもらおうか…」
.
「えっ?」
.
「俺に言いたい事があるんやろ?それ言わな、壱馬は踏み出せんのやろ?」
.
俺の性格をわかってるからこそのその言葉。
持ってたビールを置いて、ふぅって息を吸って今の俺の気持ちを真っすぐにちゃんと伝えた。
.
「俺は明日美さんが好きです。どこが?とか、何が?とか上手く説明できんですけど、 でも、彼女じゃないと…なんです、俺」
.
「ん…わかった。まぁ、結構前からなんとなく…な雰囲気は感じとったんやけどな、俺。 
別に俺に断りをいれる必要なんてないのに…お前そういうとこやで。 真面目にも、程があるって」
.
「…いゃ」
.
「まぁ、だからって、とんでもないやつやったら、刺し違えてでも明日美に近づけんけどな(笑)」
.
「刺し違える…」
.
.
.

.
.
.
.
「大事なんや…俺。明日美の事。
俺の原点やから、アイツは。
今、俺が居る場所は、あいつがおったから、居れる場所やから」
.
.
.
.
.
.

.
.
.

その言葉に、 自分の『好き』が、軽い気がした。
.
.
.
.
.
.

…next
.
.
.