一方、誠はと言えば、智久の部屋で途方に暮れていた。
今夜は昨夜と同様、仕事があった。その仕事を休んで、ここにいろと言う智久。その言葉は正直嬉しかった。戸惑ったが、嬉しかったのだ。
付き合う覚悟はあると言った昨夜の告白、とても嬉しかった。けれど、すきかどうかは解らないと言った。それは、この関係が成立しないことを意味していた。
別に、すきか解らなくたって、これから好きになってもらえればそれでいいとも思える。けれど、不安だった。付き合っていくうちに、自分のすきだという気持ちが重くなりすぎて、相手に負担になるのではないか。ましてや、智久は男と付き合うのは初めてだろう。男同士と言う現実を突きつけられた時に、その戸惑いや、不安に対応しきれるだろうか。
勇政に電話をした。
何度目かのコール音。勇政が電話に出た。
「なんだよ、こんな朝早くに…」
「すまん、今夜のシフト、代わってもらえない?」
「なんだ、お前、初めてじゃないか?シフト代わってくれなんて」
「たぶん。お願いできるかな?」
「あぁ、構わないぞ。何曜日とかわってくれるんだ?」
「月曜日が俺休みになってるんだけど、月曜出勤だろ?」
「ああ。じゃ、月曜と交代な。いいぜ」
「ありがとう」
「ちなみに、何時だ?」
「遅番。9時からなんだけど…」
「あぁ。いいぜ。まぁ、なんだ。理由は聞かないでおくよ」
「そうして欲しい」
「随分しおらしいな。お前らしくもない」
「そうかな?なんか悪いな。無理言って」
「そうでもないさ。まぁ、仕事が出来る範囲で壊れてくれ」
「壊れる…そうだな、そうするよ」
「じゃあな。無理すんなよ」
「そうする。じゃあ」
電話を切る。
仕事が出来る範囲で壊れる、なんて、初めて言われたことだ。
迂闊にも昨夜は泣いてしまったし、不眠で目は充血し、ウサギの目みたいになっている。こんな状況でさすがに仕事には出られなかった。