オリジ小説書き溜め場。 -4ページ目

オリジ小説書き溜め場。

オリジナル小説男×男を書いています。

 一方、誠はと言えば、智久の部屋で途方に暮れていた。

 今夜は昨夜と同様、仕事があった。その仕事を休んで、ここにいろと言う智久。その言葉は正直嬉しかった。戸惑ったが、嬉しかったのだ。

 付き合う覚悟はあると言った昨夜の告白、とても嬉しかった。けれど、すきかどうかは解らないと言った。それは、この関係が成立しないことを意味していた。

 別に、すきか解らなくたって、これから好きになってもらえればそれでいいとも思える。けれど、不安だった。付き合っていくうちに、自分のすきだという気持ちが重くなりすぎて、相手に負担になるのではないか。ましてや、智久は男と付き合うのは初めてだろう。男同士と言う現実を突きつけられた時に、その戸惑いや、不安に対応しきれるだろうか。

 勇政に電話をした。

 何度目かのコール音。勇政が電話に出た。

「なんだよ、こんな朝早くに…」

「すまん、今夜のシフト、代わってもらえない?」

「なんだ、お前、初めてじゃないか?シフト代わってくれなんて」

「たぶん。お願いできるかな?」

「あぁ、構わないぞ。何曜日とかわってくれるんだ?」

「月曜日が俺休みになってるんだけど、月曜出勤だろ?」

「ああ。じゃ、月曜と交代な。いいぜ」

「ありがとう」

「ちなみに、何時だ?」

「遅番。9時からなんだけど…」

「あぁ。いいぜ。まぁ、なんだ。理由は聞かないでおくよ」

「そうして欲しい」

「随分しおらしいな。お前らしくもない」

「そうかな?なんか悪いな。無理言って」

「そうでもないさ。まぁ、仕事が出来る範囲で壊れてくれ」

「壊れる…そうだな、そうするよ」

「じゃあな。無理すんなよ」

「そうする。じゃあ」

 電話を切る。

 仕事が出来る範囲で壊れる、なんて、初めて言われたことだ。

 迂闊にも昨夜は泣いてしまったし、不眠で目は充血し、ウサギの目みたいになっている。こんな状況でさすがに仕事には出られなかった。

「それだけの情報で、そこまで解るんですか?」

「なんとなく、ね。そう思ったの。本来、好きどうしで付き合うなんてごくまれだよ。それを好きどうしじゃなきゃダメだって言うのは、そういう愛情に飢えているか、苦労しているかだと思う」

「そんなもんなのか…?」

 智久は半信半疑だ。

「私の言ったことは、そうね、ただの例だと思ってくれてかまわないよ」

 節操がなかったと聞く誠の、その過去は苦労が絶えなかったのかもしれない。同性愛者だと自覚して、やるせない想いに打ちひしがれて、やり場のない感情を弄んでいたのかもしれない。

「だって、付き合い始めてから好きになってもいいんだから。その子、どう思ってるのか解らないけど、好きだって確認してから付き合わないといけないなんてことないと思うのよね」

「頑固だってことですかね?」

 義明がすかさず聞く。

「頑固…」菊乃は少し考えて、「そうかも」と言った。

「憶病で慎重で頑固だなんて、俺、考えたくないよ」

 智久は唸った。

「ふーん。その子のこと、愛してるのね?」

 愛している?そうだろうか。信じていないのかもしれない、と思った。誠のことを信じず、だから、自分のものにしたいと思っているのかもしれない。

 けど、誠は自分のことを愛していると言っていた…言っていたのだ。同じように、俺も誠のことを愛しているのだろうか。

 わからない。

 答えに窮していると、菊乃は何が解ったのか。

「困ってしまうほど、愛してるんだね」

と言った。

「その子、羨ましいよ」

「はは、そうかもね」義明も笑う。「ここまで考えてたら、愛してるって思いますよね」と。

 智久は押し黙ってしまう。

 智久は自分で、誠と付き合う覚悟はあると言った。それは、誠を誰にも渡したくないと、自分のものにするにはどうするかを考えた末の結論だった。嫉妬心が渦巻いていた。それが、こんな色々な覚悟が必要とされるとは思っても見なかったことだ。

 安直過ぎたのだろうか。誠が必要だから、付き合う。sおれじゃダメなのだろうか。

 誠自身はどう考えているのだろうか。

 義明に言われたように、ふられたと思っているのだろうか。

 俺は誠をふってしまったのか…。だとするなら、弁解しないといけない。弁解?どうして。うそは言っていない。だけど、このまま誠から手を引くわけにはいかない。

 俺には覚悟が足りない。大切にすることだって出来るかどうか解らない。

「有り余る自信がお前にとって致命的なんじゃない?少し、頭休めて考えるといいと思う」

 義明は静かに言う。

「でも、どうしよう。俺、今夜話し合おうって言っちゃったよ」

「それもね。誠があのまま家に居座っているとは思えないわけよ。たぶん、ポストに鍵を預けて帰ってるんじゃないかな、と思うわけで」

「あー、それ、考えてなかった」

「まぁ、帰ってからのお楽しみだな。いるかいないか。賭けるか?」

「ごめん、俺、そんな気分じゃない。誠、いてくれよ…」

 すると、向こうから笑顔で手を振る人がいるではないか。

「おーい。そんなとこで昼食?私も混ぜてよ~」

 先輩の佐藤菊乃(さとうきくの)だ。

「佐藤さん」

 空いた席にどかっと座る。長い脚を組み、お手製だろうか、弁当箱を広げた。

「なにー?しみったれた顔して。人生相談でもしてたの?私にも離し聞かせてよ」

「いやー、こいつ(智久)が付き合いたいって思ってる相手にすきか解らないって言っちゃったんですよ」

「なっ、バカお前!」

 智久は焦る。が、言われたことは事実だ。

「へー?相手の子は、それでどう言ってるの?」

「なんか、好きどうしで付き合うことを望んでいるそうで」

 かまわず義明は説明する。

「ありゃー。その子、憶病なんだね」

「憶病?」智久は驚いた。それは意外な台詞だ。「憶病なんですか?」

「慎重とでも言うべきかな」

「怖いんですかね。好きだという言葉がないと」

 義明がすかさず聞くと、

「そうだろうね、その子、恋愛でいい思い出ないのかもね」

と言いきった。