オリジ小説書き溜め場。 -5ページ目

オリジ小説書き溜め場。

オリジナル小説男×男を書いています。

「えー」間の抜けた返事だ。「それじゃ、俺もしかして、誠ふった事になるんじゃないの?」

「まぁ、そう考えるのが妥当だろうな。ふられた上に、何故か隔離される。こんな屈辱はないんじゃないの」

 そんな、智久は焦った。

「でも、付き合ってくれとは言ったぞ?」

「付き合ってくれって言ったって、すきじゃないんじゃ、答えはノーなんだよ智久」

「それじゃ、今日話し合ったって」

「そうだな、何を話し合えばいいの。って、なるだろうな」

「そんな…!俺は誠のこと離したくはないよ」

「それを俺に言うなよ…」呆れたように言葉を放つ義明も、「それに、もう一つ確認したいことがある」と、声をおとして言うのだ。

「お前、わかってるかどうか理解に苦しむが、相手男だってこと理解してる?」

「男だろ?理解しているつもりだよ」

「いや、そう安易に反応するなよ。男同士でってなると、男女の恋愛と違って制約も多くなるよってことが言いたい」

「えっ、制約?」

「一緒にデートしてて、手を繋ぎたいとかあっても、男女のそれで許される当たり前のことが許されないことになるんだぜ?」

「それは、今まで通りってことじゃねぇのか?」

「それで満足なら文句は言わないさ。万が一、いちゃつきたいとかあってもそれが公衆の面前で出来ないわけだ」

「しないだろ。俺、今までしてたか?…してたな…」

「それに、恋人が男ってことだけで周囲には隠さなくちゃいけないよな。理解がある奴なんて俺ぐらいなもんだろ」

「それは感謝してるよ」

「感謝してる場合じゃねぇよ。お前自分が置かれている立場わかってる?もし、男と付き合ってることがばれたとしよう。一番傷つくのはお前じゃなくて、相手だぜ?」

「相手?」

「そう。俺のせいで、相手が同性愛者になったってだけでかなりの重荷だぜ?それに加えて、ばれたときた時には俺のせいだ、ってなるのが普通だろ」

「相手に負担がかかるわけね。そこは、ばれないように努力するよ」

「そう、ばれるばれないって点ね。かなり、徹底していないと、お前自分でばらすよ?性格上」

「そう…そうだよな。俺、かっとなりやすいもんな」

「それぐらいの覚悟がお前にあるとは、ごめんだけど、到底思えないんだよね」

「…」

「帰って寝ます…」

「いいや、だめだ。ここにいろ」

「そんな」

「そんなもこんなも通用しない。鍵は置いて行くから。腹が減ったら、オートロックの扉出て左手にすぐ行った所にコンビニがあるからそこに行くといい」

 鍵をサイドテーブルに置く。かちゃっと金属が擦れる音がした。智久は鞄を持ったら、扉に進んだ。

「一日ぐらいいいだろ。ベッド使っていいから。しっかり寝ておくんだ。いいな?」

「…解りました…」

 また、消えいりそうな声。智久は溜め息をついた。

「それじゃ、行ってきます」

 ドアの向こうに手を振って智久は、扉を閉めた。正直、帰ってくるまで部屋にいる保証はないと思った。


 義明と昼食を一緒にとっている。会社の社内食堂だと話を聞かれるとまずいので、わざわざ、会社の外のテラスで、弁当を買ってきてつつくことにした。12月の空の下は、寒い。テラスの四人席は、だだっ広いテーブルに白い椅子がお洒落に飾られているようにも見える。

「二人の問題だけど、俺一人じゃ抱えきれねぇよ」

 智久の言葉は、優奈との事を彷彿とさせたが、今はそんなことは言ってられない。

「んー、なんかなぁ。今、誠を隔離しているってのも、やっていることはそのおっさんと同じなんじゃないかって思えてくるけどね」

 智久はむっとした。

「同じじゃねぇよ。守るためだ」

「それも、独りよがりなんじゃないのー?」

「お前だろ、そもそも困ってるみたいだなんて情報寄越したのは」

「おいおい、俺のせいかよ。こんなことになるなんて予想しちゃいなかったしなぁ」

 それに、と義明は弁当を覗き込みながら言う。

「お前の気持ちもなぁ。解らんでもないが、すきかどうか解らないって言うべきじゃなかったと思うがね」

「本音だ」

「そりゃ、それでいいかもしれないけどね。誠の方は、好きどうしで付き合いたいって言ってんだろ?それに反する事言っちゃダメでしょ」

「なんでだ?」

「なんで?それを俺に聞く?好きどうしがいいって言ってんだから。それに反するようじゃ、付き合えないって思うのが普通なんじゃないの?」

 「二人の問題なのに、俺に話しちゃって良かったの?」

 義明の感想の一言目はそれだった。


 あの夜の次の日。

 これ以上、ここには居られないとばかりに、誠が立ち上がる。それは、智久が会社に行く準備をしている時だった。ネクタイを締めていると、

「あの、すいません。ありがとうございました」

と言う。突拍子のない誠の一言に智久は、「はぁ?」と、呑気な声を上げた。

「お前は今日、ここにいるんだよ」

 智久の言葉は更に突拍子がない。

「仕事のシフト、誰かに代わってもらえよ」

「そんな、急には無理ですよ」

「無理でもするんだ。今夜、鍋でも食べよう。そんできちんと話し合おう」

 昨夜はあれから会話が出来なかった。シャワーを貸し、お互いがベッドと床で横になったのは、夜中の二時をとうに回っていた頃だった。

 一緒にベッドに入るかという智久の質問に、誠がとんでもないと首を横に振る。

「…毛布くださっただけで十分です…」

 消え入るような声で誠は呟くのだ。怯えているのか、と思った時、智久は無性に腹が立った。なんで、そんなに恐怖を感じているのだ、と。

「ああ、そうかい」と強く言ったと思えば、智久は後悔して、「ごめ、ゆっくり寝ろよ」と声を掛けた。

 お互い、十分に眠れるわけがないのに、智久はわかっていたことだが、それでも横にならずにはいられなかった。

「話し合うって、何を」

 話は朝に戻る。

「何を、ってなんだよ。話の途中だったろ?それに今夜仕事に出たら、またあのおっさんに捕まるだろ。一日ぐらい休み入れて貰え。それこそ、高橋君にでも代わって貰ったらいいんだよ」

「どうして、そんな」

「俺がお前に傍にいて欲しいんだって言ったら?」

 誠は困惑する。

「でも、智久さんのお仕事中に俺がここにいるのはおかしいですよ」

「今日定時で引き上げてすぐに帰ってくるから、それまでの辛抱だよ。それに、お前昨夜全く寝てないだろ?」

 これは図星だった誠。