オリジ小説書き溜め場。

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 その後、智久と誠は口論になって、結局距離を置くことになる。

 もどかしかった。智久は、もやもやとしたその期間を振り返る。

 会えない時間はもどかしくて、苦しかったのだ。どうしてこんなに苦しかったのだろう。

 そしたら、義明から誠が困っていると話があった。いてもたってもいられず、智久は誠の元に走り出した。

 誠を誰にも奪われたくなかった。

 困ってるのならなおさらのこと、救い出してやりたかった。

 そこで、男と口論になり、男から誠を引き剥がした。

 それから、放心状態の誠に告白をされた。

 義明に状況を説明したら、そこに居合わせた菊乃にまで、愛しているのね、と言われる。

 愛している。そのことに気付くのが遅すぎただろうか。

 そうか。俺は誠を愛している。

「俺も、愛してるよ」

「うそ」

 智久が言う台詞に、苦笑して言葉を放つ誠。

「昨夜は、ああ言ったけど、俺はお前を愛してるんだと思う」

 ああ、そうだ、と、思った。なんだか、胸につかえていたものが、すーっと、とれていくような、清清しいような気持ちになった。

 俺は、好きだったんだ。誠のこと。

 その気持ちに気付かなかっただけで、きちんと、愛していたのか、と。

 ただ、大切なおもちゃを取られたくない子供のように駄々をこねているだけだと、自分の行動を見て思っていた。だが、そうじゃなかったんだ。

 笑顔を見て、気恥ずかしいと思ったのも、もっと見ていたいと思ったのも、好きだったからなんだ。

「あいしてる、か。恥ずかしいな」

「…」

「好きだ、の方が性に合うわ」

「…うそ」

「好きだよ、誠」

「…まさか」

「本当だよ」

「…」

「だから、あのおっさんの所には行くな」

「…」

「俺がお前を守るから」

「…」

「好きだって言って貰えないとうなずけない憶病なお前も、いつも笑顔をふりまくお前も、ひどく後ろ向きなお前も、全部ひっくるめて、好きだから」

 智久は一気に言葉にした。これが全てだった。

 誠は短く返事をした。

「…はい」

 やっと、想いが伝わった。

 二人は晴れて恋人同士になれたわけだ。

 ここまで長かった。

 二人はもっと長い時間を共有するのだろう。

 二人はお互いの顔を見合わせて、もう一度、触れるだけのキスをした。




end


「けど、智久さんは俺のこと、まだすきかどうか解らないんでしょう?」

 手に力がこもる。

 とたんに色々なことを思い出してきた。微笑む誠に目を見張った出会いは、かわいいなどと言われ、その日からモヤモヤとした日々を送り始めた。何度目かに訪れた新年会での事件。誠に助けられ、ゲイだと言う事実を知る。

 義明に相談して訪れた親睦会と言う名の飲み会で、誠と一緒に遊ぶことになった智久は、映画やビリヤードに付き合ってもらう。その頃から、誠の笑顔に胸が疼いていた。展望台では顔の近さに驚いたり、偶然出会った街角では変な呼び名で呼ばれたり。その時に、本命の存在を知った。

 その本命が自分だったなんて、予想もしていなかったことだった。けれど、当時は相手の解らないその本命の存在が明らかになって、智久は嫉妬したのだった。

 誠が喫煙者と知った後日、アビッソで早番の誠を待ち伏せしたりもした。智久が酔い潰れ嘔吐した時に、誠が傍にいてくれたこともあった。そのときは、その優しさに勘違いするなんて、言ったっけ、と。

 勘違い、してもいいんです―――

 誠の台詞に驚いたりもした。本当、いまとなれば、だ。

 歌う誠に魅せられもした。あの時の歌をもう一度聞かせて欲しい。

 その時も思っていた。誠に愛されてみたい、と。胸が痛み、まさか俺は。そんなまさかだ、と思っていた。

 認めたくなかった。触れたいと思うこの気持ちを。

 やられてる、とそう思った。

 ライブに買い物。そう、ここでは誠の友人たちに偶然会ったものだった。そんな彼らにも嫉妬していた智久。嫉妬…。誠がゲイだとばれたかと思った、あの時は焦った。

 誠を独り占めしたいと考え、付き合えたらと思った夜。

 確実に期待していたんだ。誠に。

 なのに、俺を抱いてなどと軽率な言葉を口にもした。あの夜は、単純な興味だけだった。誠は智久を愛すことが出来るのか。なのに、誠が本気になって拒絶するから、意地になって、抱いてくれと繰り返した。

 あいつ見てると、あくせくしたり、ムラムラしたり、胸がおかしくなったり―――

 そんなことも叫んだ。

 義明からの電話の返答は、

 それが好きだって気持ちに気付かないわけ?

 智久はこのとき既に、誠のことが好きだったのだ。当時、智久にその自覚はなかった。

 けど、今は違う。このモヤモヤとした気持ちが嘘じゃないなら、智久は思う。これが好きだという気持ちなんだと。