オリジ小説書き溜め場。 -3ページ目

オリジ小説書き溜め場。

オリジナル小説男×男を書いています。

 遠慮がちに誠が、「顔洗っていいですか?」と聞くので、「いいよ」と軽く承諾する智久。

 すると、コンコンと扉をノックする音が。

「おーい。頼まれたコンロ、持ってきたぞ」

 義明の声だ。

「さんきゅー」

 扉を開く智久。洗面台から戻る誠を見。

「さー、鍋しようぜ」

 三人で鍋を囲む。

 そして、鍋を三人で堪能した。

「あー、腹いっぱい。もう食えねぇ」

と、義明が腹を叩く。

「久しぶりにこんなに食べました。ありがとうございました」

と、誠も満足そうだ。

「よかったよ。二人とも満足してくれたみたいで」

 片付けるか、と誰ともなく口にして、片付けを始めると、誠が率先して皿洗いなどをしてくれた。

「窓開けるぞー?」

 義明の声で、窓が全開に。冷たい外気が部屋の中を巡ったようだ。

「さびっ」

 智久が悲鳴を上げる。

「誠ー、皿洗いが終わったら煙草でも吸おうぜ」

「えっ、いいんですか?」

「いいよ。ここベランダあるし」

 義明が応じる。

 ガシャガシャと皿洗いを終わらせると、

「智久さん、いいんですか?煙草、吸っても…」

と、誠は恐る恐る聞いたのだ。

「えっ、いいよ。構わんさ」

と、智久は快く許した。

「空き缶、あるか?智久」

「空き缶?」

「灰皿代わりに使うんだよ」

「あぁ、それなら。ほい、これ」

と、コーヒーの空き缶を渡す。と、あー寒いなぁ、と言いながら、誠の手をとって、二人でベランダに出てしまい、ついでに窓を閉められた。

 鍵は、開いてる…!

 ドアノブに手をかけて智久は思った。

「ただいまー」

と、声をかける。

 開けた扉、扉の奥は、真っ暗だ。

「誠?」

と、もう一度、智久は声をかけた。一瞬、いないのかと思った。まさか…

 暗い部屋の中で何かが動く、それは包まった毛布から顔を出した誠の姿だった。

「ともひささん…」と、言い、目を擦ると、はっとして、飛び起きた。何時間寝ていたんだ?!

「すみません、俺、今まで、寝てたなんて…!」

と、部屋の奥から叫ぶ誠に、

「あーあーいいよいいよ、そのままで。電気俺がつけるから」

と、言うか言わないか、電気をつけた。

 明るい中に映る、智久の両手には買い物袋がぶら下がっている。

 重そうに鞄と買い物袋を置くと、

「約束してただろ、鍋」と言い、智久は扉を閉めた。「すぐに簡易コンロ持ってきてもらえるからさ」

「持ってきてもらえる?どなたかいらっしゃるんですか?」

と、誠は眉を顰めた。

「義明だよ。心配すんなー?」

「義明さん?」

「そう。言い忘れてたけど、ここ、社宅なんだよ。だから、義明もここに住んでてさ」

「そうだったんですか…」

「ごめんな。今夜義明も居ていいか?」

「ええ、構いません」

 構いませんと言いながらも、毛布から出てくる誠。

「朝から寝てたの?」

「そうみたいです」

と、赤面する誠。恥ずかしい。せめて帰ってくる頃には起きておけばよかった。

「随分寝れたんだな。よかった」

 誠の心配をよそに、智久は満足気だ。

「毛布をベッドの上に乗せて、テーブルをもうちょっと手前に引き寄せてくれよ」

 智久は誠に指示を出す。

「はい」

と、誠は従順だ。

 毛布をたたんで、ベッドの上に乗せると、小さな折り畳み式のテーブル誠が寝ていたあたりに持ってくる。

 昨夜は、智久の毛布を借りたが、眠れず。智久の香りに包まれて、幸せな心地がしたといえば、嘘はない。幸せだったが、眠れなかった。

 朝になれば、夢は覚める。

 そう、付き合う覚悟があると言った智久の台詞も、全部遠い夢になる。そう思っていた。

 それが、どうだ。今日は仕事を休んで、ここにいろと言う。

 智久はどんな話がしたいというのだろう。

 昨夜話した言葉で十分ではないか。

 もう、何を話せばいいというのか。

 とりあえず、仕事を休むよう、シフトの代わりは頼んだ。それから?

 これからどうしよう。智久が帰るまでの時間だ。一体、何時に帰ってくるのか。それすらも解らない。

 鍋を食べよう、と言っていたか。それまでは、とりあえず、惰眠を貪るか。

 ベッドを使ってもいいと言っていた。そんな、申し訳がない。昨夜借りた毛布を、床から拾い上げた。そして、周囲を見回す。

 きれいな部屋だと思う。部屋に入って右手には、ベッドと、勉強机のような机の上にテレビとノートパソコンが載っていた。左手には小さな本棚と、背の低いテーブルが置いてある。左手手前には携帯の充電器が無造作に置いてあり、テーブル手前で昨夜は寝たのだった。

 昨夜寝ていた床にごろん、と横になった。毛布に包まれて。

 智久の匂いがすると思ったのは、今も同じ。

 本当にこんなことしていていいのか。解らない。解らないが、言われた通り、睡眠をとることにする。

 そういえば、シャワーを浴びた後に、ぺったんこになった髪の毛を見て、智久が言っていた。

「あ、普通になったな」

 普通。いつもの髪型は普通じゃないのか。自分なりに自然にセットしているつもりだったが、智久には不評だったのか。

 それは哀しいな、と思う。

 智久に気にいって貰えるような自分にならないと、好きになってもらえないと思う。

 誠は目を閉じた。

 脳裏に浮かぶのは、智久の顔だ。いつも、むくれたような、仏頂面で対応する彼。その表情も意地を張っているのだと思っていた。真剣な表情を見た昨夜。抱き込まれた頭。

 嬉しかった。

 だから、もっと夢を見たいと思った。

 誠は、それこそ沈み込むように眠りへと落ちていったのだった。