相続土地国庫帰属制度ってぶっちゃけどうなの?(第2弾) | 司法書士法人 小屋松事務所 スタッフブログ「転ばぬ先の杖」

相続土地国庫帰属制度ってぶっちゃけどうなの?(第2弾)

先日、「相続土地国庫帰属制度(以下総称として「帰属制度」という)」について解説しましたが、今回はその続編です。

※前回のブログ「相続土地国庫帰属制度ってぶっちゃけどうなの?(第1弾)」はこちらをクリック!

 

今回は「帰属制度」を実際に利用するにあたって要件について解説します!

 

実は、この「帰属制度」を利用するためには、主に以下の3つの要件をクリアする必要があります。

①利用資格

②土地の要件

③手数料

 

では、この3つの要件を順に追って解説します!

 

  ①利用資格

「帰属制度」を利用できるのは、相続や遺贈によって土地の所有権を取得した相続人です。

 

取得原因は相続である必要がありますが、法定相続、遺産分割、特定財産承継遺言(いわゆる相続させる旨の遺言)による取得は「相続」に該当します。

そのため、売買や贈与は基本的に「帰属制度」の対象とはなりません。

 

例えば、手放したい土地の典型例に原野商法で騙されて買った土地や不人気の別荘等がりますが、こういった土地は基本的に「売買」により土地を取得しているため、申請ができない場合が少なくありません。

もっとも購入した人が死亡し、相続が発生している場合は、相続により相続人が取得しているということになるため、申請することができることになります。

また、帰属制度を開始した2023年4月前に土地を相続した者でも申請することができます。

帰属制度は、相続の時期に制限を設けていないため、理論的には50年前に相続した土地であっても帰属制度の申請ができます。

 

遺贈でも相手が相続人であれば帰属制度の申請は可能ですが、遺贈の相手方が相続人ではない場合は、申請資格を満たさないことになる点は注意が必要です。

具体的には、養子縁組をしていない娘婿が遺贈を受けている場合、その者は、「相続人」ではないことになります。

 

  ②土地の要件

土地の要件についてですが、帰属制度では通常の管理又は処分をするに当たって過大な費用や労力が必要となる土地については引取りの対象外になります。

 

具体的には、下記の土地が該当します。

①申請することができない場合(却下事由)

ア 建物がある土地

イ 担保権や使用収益権が設定されている土地

ウ 他人の利用が予定されている土地

エ 土壌汚染されている土地

オ 境界が明らかではない土地・所有権の存否や範囲について争いがある土地

 

②承認を受けることができない場合(不承認事由)

ア 一定の勾配・高さの崖があって、管理に過分な費用・労力がかかる土地

イ 土地の管理・処分を阻害する有体物が地上にある土地

ウ 土地の管理・処分のために、除去しなければいけない有体物が地下にある土地

エ 隣接する土地の所有者等の訴訟によらなければ管理・処分ができない土地

オ その他、通常の管理・処分に当たって過分な費用・労力がかかる土地

帰属制度の申請を却下したり、不承認とすることは、法務省・法務局にとって決して簡単なことではありません。

 

法務省は、規則制度の通達において、「却下要件及び不承認要件は、客観的かつ具体的に認められることが必要であり、要件該当性に疑義がある場合には、当該要件には該当しないと判断する必要がある」と説明しています。

 

要件該当性の判断にあたって、具体性・客観性が必要であるとされています。

 

また相談時に問題になりやすいのは下記の要件は下記の3つです。

 

帰属制度の「土地の要件」の中でも問題となりやすい要件(1)~(3)

  (1)境界不明地

隣地所有者との間で所有権の境界が争われている土地等は、申請却下事由とされています。

この要件で審査の対象になるのは、所有権界です。

所有権界の判断に当たっては、いわゆる確定測量が要請されているわけではありません。

 

ちなみに所有権界の審査は、

①申請者が認識している隣地との境界が表示されているか?

②申請者が認識している申請土地の境界について、隣地所有者が認識している境界と相違なく、争いがないか?

という観点から判断されます。

 

②については、法務局から隣地所有者に対する通知書に対して無回答の場合や不達の場合は、異議がない者として扱われます(いわば消極的同意で足りる)。

確定測量の様な隣地所有者の積極的同意まで要求されていません。

 

  (2)崖地

崖のうち、勾配が30度以上であり、かつ、高さが5メートル以上のものについて、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するものは、不承認となります。

しかしながら、崖地であることを理由に不承認にするためには、様々なハードルがあります。

 

崖地に該当する場合でも、人の生命等に被害を及ぼす又は隣地に土砂が流れ込むことによって財産的な被害を生じさせる可能性があり、擁壁工事等を実施する必要があることが客観的に認めれることが必要です。

相談を受ける際には、近隣に民家や道路があるか?という観点で検討し、その上で懸案が払しょくされない場合は、ハザードマップ等で急傾斜地崩壊危険区域等に該当しないかを確認しておく必要があります。

 

もっとも、急傾斜地崩壊危険区域等に該当した場合でも、既に擁壁工事がなされているときは、要件に該当しない可能性も相応に考えられます。

 

  (3)土地改良区内の農地で賦課金が発生している土地

国庫に帰属した後、国が管理に要する費用以外の金銭債務を法令の規定に基づき負担する土地や国庫に帰属したことに伴い、法令の規定に基づき申請者の金銭債務を国が承継する土地についてです。

土地改良区に賦課金を支払っている農地が典型的な例です。

農業振興区域内の農用地区域にある農用地(いわゆる青地)については、賦課金が発生している場合が珍しくないため、慎重な検討が必要になります。

 

  ③手数料

最後に手数料についてですが、申請時に1筆14,000円の審査手数料を納付する必要があります。

 

国庫帰属の承認がおりた場合には、負担金(10年分の土地管理費相当額)として原則20万円を支払う必要があります。

 

ただし、例外的に面積に応じて負担金が増える類型の土地もあります。

特に市街化区域の宅地や農地については、負担金が高額化しやすく、帰属制度を利用すべきか否かは慎重な検討が必要です。

しかしながら、負動産で困っている者の中には、草刈りで毎年何万円、何十万円と負担している者や遠方の管理不全土地について、損害賠償リスクを懸念している方も多いと思います。

 

法律実務の専門家は、相談者のニーズを十分に聞き取り、丁寧な検討・助言をしていく必要があります。

 

当事務所では、土地国庫帰属制度を始め相続した不動産の今後について法律面から助言・アドバイスも承っておりますのでお気軽にご相談ください♪