相続土地国庫帰属制度ってぶっちゃけどうなの?(第1弾) | 司法書士法人 小屋松事務所 スタッフブログ「転ばぬ先の杖」

相続土地国庫帰属制度ってぶっちゃけどうなの?(第1弾)

みなさん「相続土地国庫帰属制度」という制度をご存知でしょうか?

令和5年4月27日から施行された制度なのですが、この制度は相続又は遺贈によって宅地や田畑、森林などの土地の所有権を相続した人が、一定の要件を満たした場合に、土地を手放して国に引き渡す(国庫に帰属させる)ことができる制度(以下総称して「帰属制度」という。)です。

 

ただし「帰属制度」には要件があり、以下の①~⑥に該当する場合は、本制度の利用はできません。

 

①建物がある土地

②抵当権などの担保権が設定されている土地

③他人の利用(通路など)が予定されている土地

④土壌汚染されている土地

⑤境界が明らかでない土地

⑥所有権の存否や範囲について争いがある

以上の要件から、帰属制度については、「条件が厳しすぎる」「利用できるのは『売れる土地』であり、使えない制度である」と巷で言われていますが、本当にそうでしょうか?

 

申請前に確定測量が必要である、申請前に土壌汚染調査が必要である、接道していない承認されない、土地に傾斜があれば承認されない、樹木があれば承認されない、山林はそもそも承認されない等、帰属制度について誤解されている相談者は非常に多いのが現状です。

 

帰属制度施行後の申請状況は実際どうなのでしょうか?

2023年10月4日付け法務大臣閣議決定後の記者会見によると、2023年8月末時点で、全国の法務局に約1万4,000件の相談が寄せられたそうです。

 

そして、法務省が発表した統計情報によると、令和2024年3月31日において、1,905件の申請があったそうです。

ちなみに、土地の種目別の内訳は、田・畑が721件、宅地が698件、山林が280件、その他が206件で、大方の予想通り田・畑(農地)の利用が多いという結果でした。

農家を営んでいた親から田・畑(農地)を相続した子にとって、農家を継ぐ意思がないにも拘わらず、田・畑(農地)を相続することは、負動産(売るに売れない、維持管理に費用や手間がかかる不動産)になってしまいます。相続に携わっているとこのような方が多いと感じます。農地について帰属制度を利用したいという要望は非常に多いと思います。

 

近時、激甚災害が増え、土地所有者に対する法的責任が問題になりやすくなっていることも「負動産を手放したい」という希望に繋がっているといえるかもしれません。

法務省が発表した統計情報では、令和6年3月31日において、国庫帰属の承認がされた件数は248件とのことでした。

却下を含めた最終判断まで行われた件数が266件あり、取下げは件数は212件だったそうです。審査が完了した266件のうち248件が承認されていることを踏まえると、約9割が承認されていることになります。

とすれば、「条件が厳しい」とは必ずしも言えないのではないでしょうか?

 

ちなみに、取下の原因の例としては、自治体や国の機関による土地の有効活用が決定した、隣接地所有者から土地の引き受けの申出があった、農業委員会の調整等による農地として活用される見込みとなった、審査の途中で却下、不承認相当であることが判明した等があります。

 

帰属制度が施行されて間もなく1年になります。不動産の所有に負担感を持ち、手放したいというニーズが旺盛であることには間違いないでしょう。

相続携わる法律の専門家は、様々な憶測に惑わされることなく、相談者一人ひとりに丁寧に寄り添い、解決策を検討していくことが重要だと思います。

 

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