「IRATA技術者として挑む」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

本日は従業員のタケと2人、実に半年ぶりとなる外壁打診調査へ行って来た。

 

現場は関東某所の古い幼稚園。

地元の建設会社が入札し、今回我々は提携する建築事務所を通じて「高所ロープ班」として参加。

 

去年の11月から正式に業務として始めたこの高所ロープ作業による外壁打診調査業務。

がしかし、今回はこれまでの外壁打診とは少々異なる。

 

と言うのも、今年の4月に私とタケは日本に比べ技術体系が「20年先を行く」と言われるヨーロッパ基準のロープ高所作業のライセンスであるIRATA(アイラタ)を取得したが、本日の外壁打診業務はそのIRATA取得後初のロープ高所作業。

言うなれば「IRATA技術者として行う最初のロープ作業」ということになる。

 

「1本のロープに己の命を託す」という、非常に技術的にも高度と言えるロープ高所作業。

しかし日本では会社単位で実施可能な「特別教育」という、たった1日で完了する最低限の教育を施せばその者は明日からこのロープ作業が実施可能となる。

 

常識的に考えても「あまりにも」このロープ高所作業が軽視されているのが現在の日本の法規制。

一方、欧米などではロープ高所技術者は数十時間に及ぶトレーニングを積んだライセンス所持者のみが通常その業務にあたる。

 

そしてそのライセンスをIRATA(アイラタ)、またはSPRAT(スプラット、主にアメリカのロープ高所作業ライセンスで内容はIRATAとほぼ共通)と呼び、ライセンス所持者は高所ロープ作業の専門家として非常に重宝されている。

 

日本でもごく僅かではあるが、そのIRATAを指導出来るインストラクターがおり、私とタケの2名は今年4月、朝から夕方まで6日間に及ぶトレーニングの過程を経て、外国人アセッサー(審査官)の下、IRATAレベル1のライセンスを取得。

 

レベル1はあくまでも「ロープ高所作業の基本技術者」という位置付けではあるが、しかしそもそも日本より技術体系が20年先を行くヨーロッパでの基本技術者である。

たった1日の特別教育で全てが完了する日本とは質、量ともに全く別次元と言って良い。

 

そうした中で迎えた本日のロープ作業による外壁打診。

大袈裟ではなく、IRATA技術者としての「誇り」を胸に挑んできた次第。

 

今回の物件、最も高い所で5階まであるが、とは言えロープ作業を行う上で10階未満であれば正直それほど高さは関係ない。(それ以上はやはり風などの影響を顕著に受ける)

 

それよりも「屋上に支持物があるか?」が重要であるが、しかし本日の現場はロープを接続出来そうな支持物がほぼ無い。

というワケで、いよいよあの「パラペットクランプ」を使うこととなった。

 

 

 

丸環などの支持物が無い屋上から降下する際にはパラペット(屋上の縁の低い壁)に専用のクランプを挟み込んで降下することも可能。

 

とは言え、やはり元々屋上にある支持物(鉄骨など)に比べ、ただパラペットを挟み込むだけのクランプから降下するのはかなりの勇気を要する。

 

十分パラペットの強度などを確認しつつ、クランプを設置。

そしてその後は迷わず一気に外壁側に身を乗り出す。

 

 

 

 

5階の外壁ともなると景色もそれなりに素晴らしい

 

すると1秒後にはシッカリとクランプが私の身体を支えてくれた。(厳密に言うと吊るしてくれた)

一旦こうして宙吊り状態になってしまえば特に恐怖感なども無くなり、後はいつも通りに壁を叩くだけ。

 

途中、左右に身体を振りながら打診していたが、しかしさすがは「それ用」として造られてるだけのことはあり、完璧な安定感。

また一度降下した後はロープが接続された状態でそのまま少し横に移動させれば直ぐに次の降下に入れる。

 

やる前は少しばかり不安もあったが、しかし一旦慣れてしまうとむしろ何かしらの構造物にロープを接続するより遥かに楽で、実際予想以上に作業が捗った(はかどった)。

 

朝の不安はどこへやら。

もうこのパラペットクランプ、手放せません!!

 

そして後半はこのロープ作業を始めた当初の目標の一つでもあった「2名同時降下」も実現。

前回の降下時は私の指揮監督下でなければ降下が覚束なかったタケも、今回は手際よく1人でセッティングして降下するなど、IRATAを取得したことで一気に成長した様子。

 

 

 

以前の覚束なさは何処へやら。IRATAの取得は彼を急成長させた。

 

大した高さではないが目標であった「2人同時降下」も本日実現

 

今度は10階レベルの高さからの2人同時降下を実現したい

 

現在アルバイトの22歳の「リク」も来年から社員となる予定で、平成め組3人目の高所ロープ技術者に育てるべく、年明け早々IRATAトレーニングを受講させる予定。

まだ開始から1年も経たない我々の高所ロープ作業ではあるが、しかし大分「プロ」っぽくなってきた。

 

また今回の降下を皮切りに、年末までロープ外壁打診作業がコンスタントに入っており、業務の一環としての定着をこの機に図りたい。

日本全国に消防設備士は数いれど、しかし確かな技術でロープ高所作業までをもこなせるのは現状、我々だけ。

 

私は以前こう言った。

「唯一無二の消防設備士を目指す」と。

それは今、確かなものとなりつつある。

 

我が平成め組、そこら辺にいる「街の防災屋さん」如きで終わる気は毛頭ない。