4月にIRATA(アイラタ)と呼ばれるヨーロッパ基準のロープアクセスのライセンスを取得すべく、従業員のタケと共に1週間ほど講習に参加する、といった内容の記事を先日書かせて頂いた。
そうした中で本日、「登り返し」と呼ばれる技術を習得するため講習会場となる神奈川県内のその練習場を朝から貸し切り、一人散々練習に明け暮れてきた。
と言っても「IRATA講習に備えて」ということではない。
IRATAの取得を決断したのはごく最近のことで、練習場レンタルの予約自体は2ヵ月以上前にしていた。
なので結果的に4月の講習会場の「下見」も出来たことになる。
去年8月に国内法に乗っ取った「ロープ高所作業特別教育」を受講してきた我が平成め組の面々。(私、タケ、ダイゴロー)
とは言え、特別教育の内容は至って最低限のもので、実技講習にしても予め天井から垂らされたロープに下降機などを接続し、精々6尺の脚立の上から「降下」する程度に留まる。
ただ降下以外にもその実技講習の中で学ぶ技術があり、それが前述した「登り返し」と呼ばれるもの。
アッセンション(またはアッセンダー)と呼ばれる器具をロープに接続し「地上から逆にロープを登っていく」という技術である。
「どうしてロープをわざわざ登る必要があるのか?」と思われるだろうが、例えば都市部ではビルとビルが僅かな隙間だけを残し横並びに建っていることも多々ある。
そうした場合、「屋上からロープを垂らすまでは出来ても、しか外壁側に身を乗り出す空間が無い」というケースもある。
また最近は屋上の縁(へり)ギリギリに太陽光パネルを設置していているビルも多い。
その場合も然りで、やはり縁とパネルの隙間からロープは垂らせても、しかし身体を外壁側に出すことが出来ないことがある。
そうした状況では予め屋上からロープを垂らした上で、逆に地上からロープを登り、今度は改めて外壁打診をしながら降下する、などもある。
いずれにせよ、ロープ高所作業を行う上で一定程度の「登り返し」の技術は必須であり、しかしながらそれを現場で練習するのは難しい。
それゆえ今回、練習場を貸し切り朝からひたすら登り返しの練習をしていた。
今日一日で果たしてどれだけ技術が上達したのか?
結論から言うと「外壁に沿う形であれば多分10階くらいまでは登れるようになった」と思う。
一方で「単純に上から吊るされたロープを登っていく場合」は頑張っても精々半分程度までが限界かと思う。
単純に上から吊るされただけのロープの場合、登る途中で身体がクルクルと回ってしまい、身体を安定させるのが非常に難しい。
それどころか完全に「ロープ酔い」の様な状況になり、もはや作業の継続自体が困難に成り果てる。
もちろん身体が回ってしまうのは力の入れ方が下手な結果であり、熟練者がやるとそうした現象は起こらない。
実際本日、練習場にはオーナー兼、IRATA公認のインストラクターの方がおり見本を見せて頂いたのだが身体が回転してしまうこともなく、いとも簡単にロープを登っていた。
しかし外壁に沿う形でロープがあれば、足を外壁に付けることで身体の回転を抑えられる分、私でも登りやすい。
とは言え、完璧な「登り返し」を身に付けるにはやはり相当な練習が必要となることを改めて感じた次第。
ただ一先ず外壁に沿う形での登り返しはほぼ身体で理解出来た部分もあるので、一応は自身に合格点を与えたい。
↑ この様に外壁に沿う形であれば身体も安定しやすいので10階くらいまでは登れると思う。
↑ 一方でこうして天井から吊るされた状態のロープを登るのは身体が安定させにくく非常に難しい。
それにしても身体が回転してしまうことで起こる「ロープ酔い」は尋常ではなく、インストラクターの方にそのことを告げると「酔い止め」を1錠渡され、そのおかげが、午後は一切酔うことも無く練習に没頭出来た。
4月の講習時、もはや事前の酔い止めは必須となりそうである。
現在私がこうしてロープ高所作業の技術向上に努めている理由は「ロープによる外壁打診」の為であるが、インストラクターの方と練習の合間に何度か話させて頂いたところ、その方もやはり長らく外壁打診をやられていたようで、何と「特定建築物調査員」の資格をお持ちであることが分かった。
「機会があれば一度お仕事を」といった話しなどもさせて頂き、また実務上どうしても知りたかった技術なども教えて頂き、4月の講習を前に良い準備が出来た様に思う。
↑ 今回どうしても知りたかったのがこれ。突き出た外壁の縁を想定した降下。
外壁側に身を乗り出す際、外壁に足が付かないととてつもなく怖く、降下は容易ではない。
↑ 予め「フットループ」と呼ばれる物を屋上から垂らしておくことで「ワンステップ」が出来る為、断然降下しやすくなる。(インストラクターによるお手本)
IRATAのライセンスはレベル「1」~「3」までの3段階であるが、4月に私が受講するのは「IRATA入門編」とも言うべきレベル「1」。
がしかし、元々求められる技術水準が高いIRATA。
レベル「1」と言えどもロープ技術の基本はもちろん、「Rope to Rope」(空中でのロープ間横移動)などの応用編までをマスターする必要があり、ガラス清掃や外壁打診などの「一般的なロープ高所作業」を行う者としては十分「プロ」と呼べるだけの技量証明には成り得る。
因みにレベル「2」はそれらのロープ技術に加え、相応の「レスキュー技術」を体得した人たちであり、レベル「3」に至っては高度なグループレスキューをも現場の状況に合わせて出来る人たちである。
レベル「2」にステップアップするにはレベル「1」取得後、1000時間の実務を積む必要があり、私の場合、外壁打診はあくまでもメインである消防設備業の「一部」として行っているに過ぎず、1000時間分の経験など「果たしていつ到達するやら?」である。
なので現実的には「1」を維持していく、ということになるだろう。
↑ 空中で身動きできなくなった人をレスキューする際の練習に使うと思われる人型の重り
ところで現在、IRATAライセンスの所持者が日本にどれくらいいるのか?
聞いたところ「1000人程度」とのことで、その中でレベル「3」を持つのは60人前後とのことであった。
現状、日本国内でロープ作業をやるに辺りIRATAライセンスを求められることは殆ど無い。
しかしながらIRATAはロープ高所作業者としての技術レベルの指標にはなる。
今はまだIRATAライセンスを日本で持つ「意味」は限定的であるが、今後建設業界でのIRATAの認知度が向上すればいずれはロープ作業が「IRATA所持者限定」となる日が来るかも知れない。
ロープ高所作業を行う者として、本日は自身の大きな成長を感じ取れた一日であった。
次の降下が待ち遠しい。
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