「現場経験を経なければ」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

もう随分と昔の話であるが…

 

独立前に所属していた会社でのこと。

ある時、唐突な感じで「営業担当のAさん」という方が新たに入社してきた。

年齢は当時で50歳前後。

 

聞いたところによると、つい先日まで首都圏では割と知られた消防設備会社(メーカーではない)に在籍していたらしく、やはり営業として勤務していたとのこと。

こう書くとあたかもAさんは「ヘッドハンティングされた」と思われるかも知れないが、しかしどうやらそうではなさそう。

 

と言うのも、そもそもそのAさん、取り立てて「仕事が出来る」というわけでもなく、またぱっと見「切れ者風」にも見えない。

 

ハッキリ言ってどこにでもいる普通のおじさん。

具体的な入社の経緯は私も知らないが、しかし前会社から移転して来るにあたり、その前会社時代に担当していた某商業施設の点検案件を持ってきてくれたのだと言う。

一方で会社側のAさんに対する扱いは中々酷いものがあった。

 

会社の上層部の人間の中にはAさんよりずっと年齢が下であるにも関わらず、私の様な若手(当時)が見てる前で平然とAさんを見下す様な発言を繰り返す者もいた。

結果、確か1年と経たずAさんは退職したと記憶している。

 

今にして思うと会社はハナッからAさんが持ってきた案件が目当てで、Aさん自身については不要だと考えていたのだろう。

ただ「解雇」には出来ないから普段からわざと冷たく接することでAさんの方から「辞めます」と言い出すように仕向けていたのだと思う。

 

そもそも当時の業務の大半が元請会社から流れてきた物件であり、営業専門の社員など到底必要とは思えなかった。

思えば私自身、この業界に入って以降、初めて接した「営業職の社員」はAさんであった。

 

ところでこの「営業」というポジション。

職種問わず一定程度の規模の会社になると大抵1人か2人は存在している。

実際、当時はAさん以外にこの業界の営業職の人物を知らなかった私だが、その後何人かの「消防設備会社の営業職」の方と会ってきた。

 

がしかし、そうした営業職の方の大半が悲しい程に消防設備に疎い。

現場の至って簡易的な点検すらもままならない方が実に多い。

前述したAさんも技術的な部分はほぼ素人同然で、結果、営業先で「この作業はどれくらいの期日を要しますか?」などと初歩的な質問をされても全く回答が出来ない。

 

その「実務の無知ぶり」に上層部が嫌気をさしていた部分は確かにあったのだろうと思う。

だがこの業界の営業職、私が見てきた限り皆、大差が無い。

基本的に現場作業は全く出来ず、受信機の初歩的な操作までが精々という感じである。

 

会社としては「営業が出来れば良い」、「売り上げに貢献してくれれば良い」という部分もあるのだろうが、私が個人的に思うのはそうした現場知らずの営業の方々は「時間を無駄にしている」と感じる。

 

消防設備という極めて専門的な分野に携わっているのに、しかし実務のことを理解出来ない、あるいは理解する機会が無いまま日々を過ごすのはあまりにも勿体ない。

 

それに技術的な質問、疑問に出くわす度に「現場作業員頼り」になっていたのでは、もはや「営業」そのものがままならないように思う。

これは決して「営業職がダメ」などという意味ではなく「実務を覚えられない営業職なら無駄である」という意味だ。

 

そうした環境を安易に受け入れてしまっては将来の自分に何も残らない。

それにこの業界、顧客側が頼りにするのは結局現場で作業をする作業員たちである。

 

今や営業もネットで行う時代。

あるいは営業をやるにしても先ずは現場で数年の経験を経た上で就かなければ「ただ会社にいるだけ」の存在に成り果てる。

恐らく今後、営業職というのは急速に廃れていくのではないだろうか?

 

これから先、個々の人材に求められるのは「営業力を備えた現場技術者」に他ならない。

 

 

 

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