「本来消防官がやるべき事」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

先日、防火対象物点検の報告書作成ソフトについて触れさせて頂いたが、何というタイミングか、昨日の昼間、その防火対象物点検について市内のビルオーナーと思しき方から問い合わせが。

 

どうやらウチのホームページを見て連絡(しかも直接の電話)をくれたようなのだが、話を聞く限りごく小規模な3階建てテナントビルの防火対象物点検のご相談。

何でも「前回の点検業者は金額が高過ぎる」と、大分お怒りの御様子。

㎡数も200に満たず、そしてテナントも3店舗のみ。

 

「ものの10分そこら店内を見るだけで6万円も取られた」とのことで、それゆえ今回「5万円以下でやってくれる業者を探している」のだそう。

実際私も話を聞きながら「まぁ5万円くらいかな…」と費用を想定。

なので昨晩、税込でピッタリ5万円の見積もりを作成し先方にFAXした次第。

 

「42000円以下なら即決」と言われたが、実際に現場を見ていない以上、あまり安くするのも怖いのでその辺りの金額で落ち着いた。

恐らくは他業者にも見積もりを依頼していると思われ、多分話だけで終わるだろうと見ている。

 

しかし内心、決まらない方が嬉しい、などとも思っている。

と言うのも、数えるほどしか防火対象物点検はしたことがない私だが、防火対象物点検ほど「一体何をすりゃ良いんだ…?」と思うものもないからだ。

「何事も経験」とは言うが、ハッキリ言って防火対象物点検はやっていて苦痛である。

 

何せ防火対象物点検は「作業をする」と言うより「見るだけ」に近い。

ただプラプラと館内を歩きながらも「ちゃんとチェックしてますよ」という雰囲気だけは出さなければならず、毎度「どうやって時間を潰そうか」と悩む。

 

その昔、防火対象物点検の講習に参加した際、講師を務めたジジィが「防火対象物点検は決して消防設備点検の片手間に出来るものではない」と力説していたが、しかしあんなワケの分からん作業、消防設備点検の片手間に押し込み「やった体(てい)」にするのが一番格好がつく。

 

「避難経路に物が置いてないか」とか「内装に防炎性、難燃性の品が使われているか」とか、あるいは「消防訓練をしているか」など、そんなことは本来個々のテナントやビルオーナーたちのモラルの問題とも言える。

 

である以上、もはや「点検」ではなく「指導」、若しくは「指示」が必要であり、それを「客から金を貰っている民間業者」にやらせること自体無理がある。

どれほど避難経路に物が置かれていようが「お願いだから書類上はOKにしておいてよ」と求められれば「無理です」などと言えるはずもない。

 

消防官は時折、抜き打ちで管轄内のビルなどに立ち入り検査などを行っているようだが、正しくそれが本来求められる「防火対象物点検」である。

 

「消防官」という権限の下でそれを行うからこそ意味があるわけで、その回数を少し増やして杜撰な管理がなされていれば建物のオーナーからはビシビシ罰金でも取ればいい。

「ビルの杜撰な管理の抑止」という意味ではその方が余程効果的である。

 

消防設備点検は専門的な知識や技術が必要であり「知識超先行型」である消防官で実施するのは確かに不可能である。

しかし防火対象物点検は100%知識でやる仕事とも言えるし、また消防官の抜き打ち検査として行えば点検費用もかからず、むしろそれを歓迎するビルオーナーも少なくないだろう。

 

こんなことを書いてしまうと本当に「防火対象物点検」は今後無くなってしまうかも知れない。

でもそれならそれでいいではないか。

防火対象物点検なんてどうせ皆「仕事してる風」でやり過ごしているだけなのだから。

 

防対点検で館内をプラプラと歩くなら、私は外壁調査でロープにブラブラぶら下がって壁を叩いていたい。

その方が800億倍くらい楽しいし、またやり甲斐もある。

 

防火対象物点検のムダさ加減、役所もいい加減も気付きなさい。

 

 

 

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