「16000円」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

いよいよ我が平成め組も明日で本年度の仕事納め…

 

のはずであったのだが、急遽私は28日午前に現場調査の仕事が入ったのでそれが今年最後の仕事となる。

 

「調査」とは言っても2ヵ月ほど前に防火設備検査で伺った施設の関係者からの問い合わせで「防火戸が時折勝手に閉鎖してしまう」というもの。

恐らくはラッチの調整のみで対応出来ると思われ、しかし調整が難しければラッチ交換を提案させて頂く形なる。

 

その業務を終えればその日の夕方、取引先との会食、翌29日は我が平成め組の忘年会と相成り、今年の全てを終える予定。

今年を総括するにはまだ2日早いが、しかし今年と去年を比べると明らかにその業務量は増えた。

 

特に夏前辺りから一気に忙しくなり、加えて最年少の女性スタッフであった19歳のチーコが産休&育休の為に離脱するに至り、忙しさは頂点を極めた。

結果、2~3ヵ月ほど前から外注への応援要請も激増。

 

最近は常時5~6人が毎日現場に出ており、多い時は7人を超えることもあった。

そしてその半分が外注さん、という日も。

昨今、業界の「外注一人当たりの支払い相場額」は首都圏の場合で18000円~2万円辺りだろうと思われる。

 

実際、私もウチから他社の応援要員を出す場合、最低でも一人工当たり税別18000円は請求する。

だがそれでも利益と言う利益は殆ど見出せないので2年程前からは1000円上げ「一人工税別19000円から」とさせて頂いている。

 

一方で私自身がそうした外注の方々に支払うのは現場までの交通費そして税など諸々込みで16000円を基本としている。

つまり業界の一般的な相場と比較すると「かなり安い」と言って良い。

 

しかし私の場合、応援で来て頂く人物が「その日初めてこの仕事をする」という、完全なる未経験者であってもその金額を基本的に支払う。

例外的に2万円以上支払う方もいるが、でもそうした方々には普段は滅多に応援依頼をしない。

「人が足りなくてどうしようもない時だけ」声を掛ける。

 

「資格も経験も無いほぼ素人にも16000円」

それを知ったある有資格者の外注の方から先日こんな指摘を受けた

「資格も経験も無い人には12000円くらいでも良いのでは?」と。

 

実は以前までは私も13000円程度しか払っておらず「特に高い人で15000円程度」であった。

だが13000円では今にして思えばいささか安過ぎたと思っている。

現場まで電車で来てもらうにしても、その移動費だけで往復1000円とか1500円はする。

 

昼食費も1000円と考えれば、手元に残るのは1万円ちょっと。

25日働いても実質的には25万円程度が諸経費を引いた本人の取り分。

例えば正社員として働き、社会保険料など差し引かれた金額が25万なら決して悪くは無い。

 

だが外注の方々は基本的にそこから年金(国民年金)や保険料(国保)を納める形になり、もはや「ただ生きていくだけで精一杯」なのが実情だろう。

 

そうした社会情勢、特に首都圏の現況を鑑みると、やはり経験だの資格だのはさておき「来てくれる」という、それだけでも16000円はもはや安いくらいである。

その方の実務能力は一先ずさておき、やはりどんな小さな現場でも最低2名いないことにはもはや「形にならない」のが現実である。

 

仕事なんてもんは教えれば良いだけで、最近私はそうした「ほぼ未経験」という人物に現場に入ってもらう際など、例えば現場がマンションであれば居室点検に自分と同行させ住人の方にも堂々と「新人研修中です」などと説明している。

 

そうして本人にはまず仕事に慣れてもらい、またこの仕事により興味を持って資格の勉強など積極的に行ってくれたのであれば後々お互いに大きな実りがある。

 

「資格の無い素人を現場に入れ何らかの作業に従事させる」

それ自体に批判的な同業者は相変わらず多いのだろうが、しかしそれを躊躇していたのではいつまで経っても人を得られないし、また自身や自社の人間の「未経験者に対する指導力」を養わせることも出来ない。

 

数名の個人外注を囲い、毎度様々な会社の「応援要員」として派遣しては先方から頂く人工代からマージンを抜いてせこく稼ぐ「社長」も過去にいた。

だが数年経った今でも相変わらずそうしてせこく稼いでばかりで会社としては何も成長していない。

 

自身や組織の成長を長期的視野で見つめるのであれば、目先の金など拘らず、むしろ金を払ってでも「人を育てる癖」を身に付けなければ組織の繁栄などあり得ないこと…

それが私の考え方の基盤でもある。

 

だから私は誰にでも16000円、である。