「そして成長する」 | 消防設備士かく語りき

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川崎の消防設備士、平成め組代表のブログ

 

 

 

少し前の記事にて「関東某所の廃校の点検に行った」という話を書かせて頂いた。

 

廃校の点検など滅多にあるものではなく「これは記事にしなければ…!」と思い書かせて頂いたのであるが、しかしそれから程なく、またしても廃校の点検に行くことに。

前回の廃校と同じシリーズで、元々高校であった建物の建築設備検査等一式。

 

今回もまた女性建築士の方がリーダーとなる形で、私は例の如く受信機要員のアシスタントを伴って防火設備担当。

 

前回の廃校は閉鎖されて久しく、内外とも「どっぷり廃校」という感じであったが、しかし今回の廃校はまだ閉館となって日が浅く、また当日の快晴も相まって前回の様な薄気味悪さなどは一切無し。

 

ただ前回の廃校は地域の文化財の保管、その他の研究などに使われ、専門の職員の方が10数人程常駐していたが、今回の廃校はまだ今後の活用法など未定。

それゆえ普段は高齢の警備員の方が1名いるだけ。

 

とは言え、建物内はまだ所々に学生たちの温もりを感じるほどで、単純に「休校日に点検している」という雰囲気であった。

私の大好きな「The,廃校」のレベルに達するにはもう1~2年の「野ざらし状態」が必要そうである。

 

ところでその日、私のアシスタント役、つまり受信機要員には「その日が2度目」という超の付く新人の女子を伴った。

知り合いの会社のスタッフの方であったのだが、実は去年から一気に依頼が増えたこの建築設備関係の業務、多くの場合、2名で呼ばれる。

 

うちは大抵防火設備を任されるので1名は現場、もう1名は受信機要員として依頼を頂くのだが、その「もう1名」について建築士の方からは特に指定など無く、基本的に「誰でも良いです」というスタイル。

 

もちろん受信機要員であれば操作方法の指導などは当然こちらでするのだが、防火設備以外の場合でも割と「どなたでも大丈夫です」と言って頂ける。

 

と言うのも、例えばその日の作業が排煙機連動であれば、その1名には排煙機の制御盤でひたすら起動スイッチの入り切りをしてもらうなど、それこそ完全な未経験者でも何かしら任せられる作業があるからだ

 

ウチとしても「1名はどなたでも良いです」と言って頂けるのは非常に有り難く、今後消防設備点検の現場に入れるにしても先ずは現場作業に慣れてもらうための経験を積ませられる。

 

受信機からの防排煙連動操作、あるいは排煙機制御盤での操作など、消防点検と通じる部分が非常に多く、そうした経験を新人たちに積極的に積ませてやれるのは建築設備検査の特殊性も影響している。

 

消防設備点検では2名依頼されればそのどちらもが相応の技術者であることを求められるのが大半である。

そうした実情を鑑みると「どなたでも大丈夫」と言って頂ける取引先の存在は非常に大きい。

 

当然こちらも毎度日替わりで人員を変えるわけではなく、概ね決まったメンバーの中から誰かしらを連れて行くので結局何度か現場を経験する中で皆それぞれに「成長」もする。

またこちらはこちらでそうした新人たちに当日の作業内容等の説明を度々行う事で「指導力」も身に付けることが出来る。

 

結果的に自身が請負う消防応設備点検の現場にも呼べるようになり、皆が得をする形になる。

「初心者」と聞いただけで渋い顔をする同業者も多いが、しかしそんな連中たちは完全に忘れている。

 

「自分自身が新人だった頃、周りの先輩たちは「面倒」と思いつつも日々仕事を教えてくれていた」ということを。

常に初心者を受け入れるだけの器量を持てなければ自身や組織の成長など見込めようもない。

最近多くの依頼を頂くこうした建築設備関係の業務。

 

私は自分や組織を成長させるという意味でも自身の中で特に重要な業務と位置付けその作業の臨ませて頂いている。

でなければロープ高所作業で外壁を叩くなどという「途方もなく怖い業務」、引き受けるはずもない。

 

日々現場で建築士らと仕事をする自分が何だか誇らしい。

かつて建築士などという存在はあらゆる現場作業の言わば「頂点」の位置付けの人々であった。

ところが今はそうした人々と現場で対等な関係で仕事をさせて頂いている。

正に裸一貫で独立した当時を思い出しながら「自分も随分と出世したものだ」と妙に感慨深い。

 

いつだって前向きな者たちに神は微笑む…

のではなく、いつだって前を向いていれば神の微笑みを見る機会が増す、ということだろう。

昇る太陽の輝きは前を向いて歩く者たちから先に拝めるもの。

 

太陽の日に照らされることで成長も促される。