宝くじ | h

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夫は運転が下手だ。そのくせ大きな車に乗る。

色んなところにガリガリ擦り、車はいつも傷だらけ。

私は運転免許がないので運転はいつも夫。

下手な運転の車に乗って、10回に9回は車酔い。

しかし今は違う。運転席にいるのは友人女性。

すごーく運転上手。全っ然酔わない。気持ち悪くない。

大きな車だというのに、どんな道でもすーいすい。

 

着いた先は静かな地方都市。

私は彼女に宝くじを譲った。2枚。

彼女はそれを持って交換窓口に行った。

くじに現金を添えて差し出していた。

そして次には当選金を受け取っていた。

その時、「キャー!」と大声をあげたのは私。

当選金をちらと見て、驚いてしまって。

あの厚み、二~三百万はありそう。

それは色とりどりの現金だった。

二千円札や四千円札、それに四円玉も入ってた。

高額当選。私があげた宝くじで高額当選。

私の取り分もあるよね?半分?3分の1?

しかし彼女は何も言って来ない。

こちらから言い出すのも格好悪い。

 

ちょっとした美術館くらいに立派な陶磁器の店。

ここで彼女は景品の陶磁器を受け取る。

宝くじ当選金と同額の陶磁器だ。

買い物かごに雑に入れられた10点くらいの陶磁器。

何に使うのかよく分からないものが多い。飾り?置物?

ひときわ目を引くのは、蓋つきの立派な器。

たぶんこれが一番高い。何十万円でございましょ。

事務員っぽい制服を着た店員女性が

買い物かごから一つ一つ商品を取り出していく。

右手で取り出し左手に持ち替え置く、

右手で取り出し左手に持ち替え置く、

右手で取り出し左手に持ち替えガシャン。

ある筈の置き場が消失していて、床にガシャン。

よりにもよって、例の立派な器が。

店員さんは何も言わない。友人も何も言わない。

このまま居ても何も起きそうにないけれど

だからといって、ここを去るわけにもいかない。

売場の商品を見ながらなんとなーく時間を潰す。

どれだけの時間が経ったろうか、

やーっと店員さんから声がかかった。

「ただいま焼いておりますので」

あーなるほど、ガシャンしたのと同じのを焼いてるのね。

そうかその待ち時間だったか。焼いてんなら仕方ない。

って、いやいやいや、焼かれても!どんだけ時間かかるよ!

 

同じ街の食事処。というか旅館の大食堂?

広々とした空間に横長のテーブルがずらりと並ぶ。

友人と私とは離れたテーブルで食事。

テーブル一台につき一人。

今はそうするのが当たり前。

黙食の合間、友人の方に目をやると

彼女の隣に人が居た。まわしを締めた力士。

二人は食事をしながら会話している。

ワクチン打ってないと力士が言っている。

友人は困った顔をするばかり。