これも恋物語… 第3幕 63 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

第22話

栞は、ペコリと頭を下げてから由美を見た。真直ぐに向けられた眼差しに何処となく違和感を覚えた。恋心とは別物がそこにはある。まるで、姉が、親が子供の恋人に向けるような視線だった。

何故だろう。一真となんらかの関係があるのは解る。でも、特別な関係には思えない。

由美は、訝しげに見る栞にクスリと笑い、手を差し出した。

「よろしくね」

「あっ…はい」

栞は、慌てて由美の手を握った。少し力を入れたのかもしれない。

「恋人さん…」

「えっ」

「がんばってね…自分勝手に突っ走りだすから、何処か捕まえておかないと気が気でなくなるわよ」

「………」

「余計な一言だった?」

「………」

「みたいね…でも…」

「?」

「そんなに挑戦的に見なくても大丈夫よ…とれないから…」

由美は、クスクスと笑いながら言った。少し握手する手が痛い。いつまで握手しているんだろう。正確的に体育会系なのだろうか?それとも、忘れているだろうか?どちらでも大した違いはない。いまの自分の存在は明らかに敵だった。

嫁姑戦争の勃発ってこういうのが始まりかもしれない。自分だけが知っている。その思いが、相手との垣根になるのかも知れない。

ふーっ。

由美は、息を抜き、柔らかな視線で栞を見つめた。きっと、自分にもそういう部分があったのだろう。

「あたしでよかったら…知っていることは教えるし、一真が暴走したら頼っておいで」

「えっ?」

「大して知らないけど…やんちゃな部分は、大人しているいまを知っている貴女よりは見てきたから、その時にどうしたのかくらいは教えられるし…」

「由美さん」

「何?」

由美は、栞の手を握ったまま一真を見た。苦笑する一真は「余計なことを言わないように」と言っているようだったが、気付かない振りをして、視線を栞に戻した。

「一真との関係は?」

「泣き出した坊やにハンカチを貸す役かな…」

「えっ…?」

「一真が手のつけられない悪ガキだった時代の、敵の女…」

「…敵」

「ええ…目標と言うよりも敵かな…一真にとっては…うちの亭主にとっては、可愛い弟分ね」

「?」

「一真と付き合っていれば、あたしとも必然的に関わるから…友達になるか、対立するかしかないわよ」

「………(!)」

栞は、気を張っている自分が可笑しく思えた。この人は、一真を弟のように思っている。溺愛する弟と言ったところだろうか。子供のような存在だったのかもしれない。子供を、大切な弟を取られるような感覚なのかもしれない。

「友達に…なろうかな」

「そうね…あとでメアド交換しようね」

「あっ…はい」