これも恋物語… 第3幕 65 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

第24話

いままでも多くの出会いがあった。これからも多くの出会いがあるだろう。

会うだけですぐに忘れてしまう出会いもあるかもしれない。でも、その一瞬に何らかの必要性が存在している。その現実を見ることを忘れてはいけないのかもしれない。もっとも忘れがちなその事を、何処か気持ちの上で、留めておく事の大切さを一真は栞に漏らすように伝えた。

「不思議な日ね」

「ん?」

「一真の色んな一面が見える日…」

「そう…」

「手は合わせないの?」

「ん?俺は…」

「そうなんだ…」

「ああ…」

「でも、意外ね…一真はお墓に話しかける人なんだ…」

「変か?」

「一真だからね…」

「?」

「似合っているし…似合っていない…」

「なんだ…」

「だから…変」

「別に霊的な事を求めているわけではない…魂とか解らないし…でも、ここに来れば、みなぎくんは、話を聞いてくれるような気がする…そこには存在していないけど…返事も帰ってこないけれど…よくさ、それは自分自身の言葉なんだって言われるんだけど…それもわかんない」

「そうなんだ…」

「と…陽が傾いたな」

一真は、西に沈み始めた太陽を眺めながら言った。

「そうね…日が短いよね…でも、綺麗よ」

「お前には負けるけどね…」

「えっ?」

「いや…何も」

「?」

一真は、フッと笑みをこぼすと溜息をついて立ち上がり、栞に手をさし伸ばしながら「もう少したつと…もっと綺麗になる…でも、その前に」と声をかけた。眺めていれば、沈むまで見ているだろう。少なからず一真はそれができる。いや、してしまう。変わり行く景色を眺めて、時の移り様を見詰めていられる。

変わらないものは何も無い。全てが一瞬一瞬に変化をしていく。それで当り前だった。だから、いまを必死に生きていかなければいけない。取り戻す事のできない時間だからこそ、悔いなく行動していかなければいけない。と、思いながらも、「明日でもいいか」と先延ばしする事も少ないのが現実なのだが…。

いま、この瞬間の行動こそが未来を創っていく。

考える間があるか無いかは別問題だが、その行動に自分が責任を持たなければいけない。少なくとも、責任を持つ事でしか、過去を見詰める事はできないだろう。

明日の為に…未来の為に、それを行っていきたい。と、一真は、今朝思いついた。

何の気なしにつけていたテレビで『いますぐに死ぬ事ができるか?』との答えに即答で『死ねる』と答えるシーンが映っていた。その答えに問いかけた人は『遣り残した事があっても悔いなく、か?』と尋ねかえした。返答する方は、答えが見付からないままに押し黙ったのだが、実際、自分でも黙る気がした。

本当に遣り残し無く生きていられるのだろうか。きっと多くの遣り残しがあるだろう。それでも満足で逝けるのだろうか。

なんとなく、夕陽にそう思ってしまった。

その夕陽の光に引き込まれそうな自分を立たせ、一真は、栞を立たせた。

「日が暮れるな…」

「?」

「もう一箇所…付き合ってくれ…」

「いいよ…何処にでも」

「そんな事を言っていたら、ホテルに連れ込まれるんだぞ…」

「あはは…それもいいけど…他の方たちは?」

「まいちまうか…」

「………本気?」

「だったら…」

「撒かれないようについていく」

「そうだな…次の機会に…」

「そうなの?残念」

「………したいの?」

「莫迦ァ」

「まぁ、残念だけど…時間がね」

一真は、腕時計のガラス面をトントンとノックしながら栞に笑いかけた。

「予定ね…」

「ああ…今日は、予定だから…」

陽が沈み始め、空を茜色に染めていくのを眺めながら、一真は、栞の手を握った。

(えっ?)

「行こうぜ…このタイミングを逃すのは…よくないからさ」

「?」

「早く」

一真は、墓地の隣にある教会に飛び込みように駆け込んだ。