第25話
「なかなか良い感じね…あの二人…」
涼子は、みなぎの墓石の前に座って話している二人を眺めながら、由美に声をかけた。
「ね…」
由美は、まるで自分の子供を見るかのような穏やかな眼差しで一真を見送っていた。不思議なものだ。それほど年齢的に差があるわけでも無いのに、一真の子供の頃から知っているような気がする。小僧が何度も失敗し、立ち上がる様を見てきた。いまにしてみれば、一真が挫折するなんて考えた事は無かった。ボロボロになっても一真は真っ直ぐに立ち上がってきた。
「でも…一真との兄貴の間に…関わりがあっただなんて…」
「そうね…不思議…すっごく世間が狭いと解るわね…でもさ…」
「何?」
「うちの家には一真の写真結構飾ってあるよ…未来と一緒に…」
「そうだっけ?」
「うん…未来にとっては、一真がみなぎかもね…」
「……そうなの?」
「ん、一真は、未来が小さいときから、よく遊びに来てくれたからね…」
「そうなんだ」
「うん…」
「でも、嬉しそうね…」
「そうね…」
「!…貴女よ…由美」
「えっ?」
「まるで…母が、子供の成長を喜んでいるみたいよ…」
「…かもしれないわよ」
由美は、クスクスと笑って涼子を見た。
一真の成長を見てきた。それは間違いなく。未来が成長をするように一真の成長も見てきた。受験に一喜一憂した記憶もある。就職に、恋愛事の相談に、失恋に、暴走族に、バイト…色んな面を見てきた。由美や未来の誕生日、みなぎの命日、クリスマスにと、イベント事をしに現れては、愉しい日々を幾つもみせてくれた。
安藤の性を名乗る事になった時には、自分以上に一真は喜んでくれた。
未来の入園式には、背伸びしきったスーツ姿で現れた。卒園式では、スーツ姿がなんとなくしっくりいくようになっていた。小学校の入学式では、会社の入社式を終えてタクシーで乗り付けてくれた。汗をかきながら、息を切らせながら、駆けつけてくれた。
運動会では、競技にも参加してくれた。
未来にとってなくてはならないパートナー的存在として一真はいてくれた。
小学校も高学年になると未来は、一真が学校に来るのを拒み、一真は、少し寂しげにしていたが、それを受け入れた。それでも、事ある毎に一真は顔を出してくれた。学校などの公の場には、未来が呼ばないと顔を出さないが、家には現れ、一緒に騒いでくれた。それも、未来が高校に入学する頃にはなくなったが。
「何?教えてよ…」
「ん…そうね、今度写真でも見ながら…」