これも恋物語… 第3幕 9 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

第1章 第4話


23歳の春。五洋グループの一企業『五洋電気』に千尋は就職を決めた。内定を貰った会社の中で、総合職に就職したのはこの会社だったので、この会社に就職を決めた。同級生の中には、腰掛代わりに仕事を決める人もいたが、千尋にはそんな気が無かった。必要ならば、旦那を養ってみせる。それだけの気構えもあった。それを可愛くないという男もいたが、そんな了見の狭い男と個人的な付き合いをする予定もないのでどうでもよかったのだが…。

あの日の大失態が、今ではいい思い出だ。あの失態があるから、今の自分が有ると自負できる。とはいえ、他の人に言えるような失態ではないのが、少しばかり寂しい。

大学生活4年間は、世界観をガラリと変えるには充分なものだった。

高校から、大学進学で上京した時、自分は、周囲とは比べ物にならないほどの田舎物のような気がしてならなかった。歩いてみても、周りをキョロキョロと見回す癖が抜け切るまで、3~4ヶ月かかった。別にその癖もいいんじゃないの、と、周囲に言われて気にしなくなった頃から、世界が変わりはじめたのかもししれない。

多くの恋をした。失恋も。告白も。告白される事も。振る事も、振られる事も経験した。

恋人の数だけ、傷付いてきたのだといえる。でも、それは、ある種の自慢だ。確かに、半年以上恋人として付き合えた人はいない。上手く付き合えても友達以上までにしかなれなかった人もいる。顔を合わせる事もなくなった人もいる。それでも、その全てをいい思い出といえる。

自分が自分である為に、それを否定はしない。

一真に会って、一真のしてきた事を追いかけて、少し強くなった自分がいる。

千尋は、サークル活動を通して、色んな事を経験してきた。先人といわれる如月や天城の噂は、色んなところで耳にする。幸いな事に悪い噂は、大学の外ではかなかった。他の大学サークルの失敗談や困った話を耳にしても自分ところのサークルのそういった類の話は無かった。

サークル内に残る逸話と、逸話の場所で残っている礼儀の話は、驚く程に噛みあっていなかった。仲間内で子供こどもをしているメンバーは、外に出れば、年齢以上に礼節をわきまえて行動をする。色々と経験した事の無い事をしていく中で、世界は広がりをみせるが、そこにいて何も変わらないものがある。それが礼節だった。

外に対する礼儀と気遣い。それを少し気にかけることで、少しだけ大人になれたような気がする。

授業では、講義では学べないものは、少なくない。それをサークルで補ってきていた。

充分に社会人として通用する。そう思っていたが、現実は、甘いものではなった。仕事をするだけで命一杯の日が続く。それが当り前だとは、誰も言わない。要領が悪いと切り捨てられる事も少なくなかった。それでも、どうにか仕事を手伝わせてもらえるレベルを認められるまで踏ん張った。

仕事のできる女。と、言われる事を目指してみた。

就職が決まり、少し社会に眼を向けると、同じ年の男が幼く見えた。恋人だった1回下の男がつまらなく思えた。卒業式が近付き、サークルの追い出しコンパで告白されても何とも思わなくなっていた。その理由はわからないが、恋愛が何処か違うものに感じられた。

だから、仕事ができる女を目指してみた。キャリアウーマンではなく、仕事ができる女だ。特別な事をなにも無い。ただ、まっすぐに仕事のできる女を目指した。

そんな日々に一真と再会した。取引先の社員として。

とはいえ、一真は、全く気付かずに、横を通り過ぎた。千尋の上司との話の最中、何度か、千尋は、一真に近付いたが、全く反応が無かった。サークルの後輩というよりも、一人の女として傷付いた。少なくとも、あの頃よりも格好よくなっているはずだ。告白されたことから考えても、それなりにマシな水準の女のつもりだった。

そう、少なくとも、19歳だった頃の自分よりも、22歳の自分の方がスレンダーでいけていると自負している。幾つもの告白の中で、自分の趣味に会う男性だけをチョイスして付き合うことができる程度に告白をされてきた。ついでに先輩同僚にも、何人かに告白してもらえている。

それなのに、取引先の社員と言うだけで相手にもされていない。それが磨き上げたプライドを傷付けた。

一真は、全くと言っていい程に気付かずに横をすり抜けていった。

せめて、「久しぶり」くらいは声をかけてくれてもよさそうなものだが、それすらない。整形したわけでも無いのに。変わったのは、服装とスタイルくらいだろう。それなのに、気付かれない自分がいた。

全く相手にされないままの年月が過ぎ、関わりのない部署だからと自分をたしなめて見た。

総合職で入っていることをいい事に部署変更を希望して、一真に認めさせようとしてきた。が、その機会は全く無かった。ただ、社内外に信用はできた。仕事ができるとして、認められてきた。

ようやく、他人に認められるレベルに達しても、天城一真が仕事の相手になる機会は、そう簡単に巡ってくるわけではない。この頃は、まだ、仕事をしているレベルだったのだから、当然といえば当然なのだが…。

そんな時、転機が訪れた。


第1話

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