これも恋物語… 第3章 4 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

第0章 第4話


「第一期管理役、五井物産如月…相談役、五菱商事大伴厳輔…事業監査役、五洋グループ代表柏木士十郎…会計監査役、重友産業桜井隆…二期目以降は、一席ずつ繰上げ連続期で同じ役をしない事をあわせて発表します…」

それは、如月が最後まで黙っていた人事だった。この管理役人事に関しては、4社のトップ会談の中で決定されている事であった。

この事をこの会議の前に行われた最終調整の中で発表していれば、一番の若輩者になる如月に対する風当たりも少しは違ったかもしれない。

「続いて、株式会社ネクスト役員人事を発表する。…役員、新山、菅沼、浅生、立川……ポジションは、社長に一任する…常務取締役福社長、上山…専務取締役副社長、梅崎…代表取締役社長、天城…」

如月は、いい終わると静かに立ち上がり、ペコリと頭を下げた。

わずか1時間程度の会議だった。上役達は、下の者に明確な仕事だけを残して、その場を後にする。

一真は、去って行く役員を送り出すかのようにドアを開け、頭を下げた。それを見ていた他のメンバーが頭を慌てて下げた。


「天城…おめでとう」

役員を送り出し、ホッと溜息をついた一真に梅崎が声をかけた。

一真が、ネクストの社長として一票を投じた男だった。だが、彼には一票しか入っていない。綾乃を除く誰もが自分に投票した。無記名とはいえ、時間追えば誰が誰に投票したかは解る。4社のトップは、それも考量した上でネクストの役員人事を決めた。

「自信過剰の癖に…どうして今回は自分に入れなかったんですか?」

「ん?」

「俺は誰が誰に入れたか知っているんですよ…もちろん推測の域なんですけどね…」

「……7人の新役員、そのうちお前が2票を得る…で、俺が0票…悪くないじゃないか」

「残念ですけど…0票は,別にいるんですよ…梅崎さんにいれたのは、俺ですから…」

「……で、お前に2票か…」

「ええ…」

「なるほどな…」

「社長には、票の行くえがわかるようになっていたんですよ…」

「0票が、常務か…」

梅崎は、苦笑しながら言った。数字の論理ではなく、人の流れを読めば、答えは、おのずと解ってくる。社長になるべき人を選び、選んだ人が社長になる。それで、その人の進退は極まるものだ。答えが、そこにある。

「祝いに呑まないか?」

「いいですよ…今日は上がりですから…」

「あのぅ…あたしも行っていいですか?」

「……誰?」

梅崎は、小声で訪ねた。

「神崎このは……役員にははいらないんですけど、志願してネクストに配置希望を出した子ですよ」

「ふぅ~ん…いいぜ、行こうぜ…」

「もちろんあたしも…」と綾乃が言う。

「折角なんだし全員で行きませんか?」と、立川健介が言う。立川は、綾乃の一年後輩に当たり、一真の事も知っていた。もっとも、一真が認識してくれているかは別問題だが…。

「俺達も行っていいんですか?」と、菅沼が。

菅沼に限らない。ネクストの役員として召集されたメンバーは、こぞって出入り口付近に集まっていた。誰もが顔を知っている。口に出さないが、自分達に求められる結果が何かもわかっている。稼動するまでに話し合うべき事は事実上無い。どうせ話し合いをしなければいけないのなら、捌けて個人を知りたいものだ。そして、できるのなら、社長となる天城一真を見極めたいと思っていた。

一真は、自分で感じるよりも有名人だ。それなりに手腕を買われている。どの部署にいっても人並み以上に成果を挙げてきている事は聞いて解っている。

ネクストの人事にかかるメンバーになった時、それぞれの会社から出るメンバーの人となりは社内で確認している。一真が優秀な五井物産の社員で有る事は解った。その反面、つめたさも聞かれた。結果を導く為の冷たさ。それは、共に働く上でどうなんだろう。残念な事に五井物産の社員からは話しが聞けていないのでどうにもいえないのだが…。

「……全員行くの?」

一真のその問いに誰もが息を呑んだ。

上役になった途端に豹変する人間は少なくない。どうやら一真もそんなタイプらしい。


第1話へ

http://ameblo.jp/hikarinoguchi/entry-10006105694.html