時間というのは不思議なものだ。同じ決まった時間の中にいて、何故これほどまでに価値観が違うのだろうか。何を大切にして、何を切り捨てていくのだろうか。最近よく耳にする『スロー』というキーワード、それに関する時間を過ごす事はできない。一般的なサラリーマンに比べては、たぶん、スローな時間を過ごす事はできるのだろうが……。何かしら時間に追われている。
授業の時間。試験の期間。カリキュラムの量。etc.etc.…何処までいっても減りそうに無い学ぶべきものたち。教諭にでもならなければ使うこともないだろう勉強の数々。実に、忙しない時間が続く。
「えっと…コーヒーは…んと……」
麻奈は、踏み台を持ってきて、キッチンの飾り棚に置かれているサイフォンに手を伸ばし始めた。
(おいおい…)
「ん~…健太…」
「ん?」
「これとって…」
「ん?どれ…?」
健太は、ほっと胸をなでおろしながらキッチンへと入った。麻奈が取ろうとしているだろうサイフォンを意図も簡単に降ろし、麻奈に睨みつけられながら…。
「…(仕方ないだろう…身体の大きさが違うんだから)……はい」
「ありがとう」と、ブスッとして麻奈は礼を言った。
「どういたしまして…とりあえずさ……」
「なに?」
「笑顔の方がかわいぞ…」
健太は、苦笑しながら言うと、さっさとキッチンから出て行った。
(さて…無事にコーヒーは呑めるのだろうか…)
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