Wedding 10-3 | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

ホテルの玄関ロビーでは、ブロンドの美しい女性が立っていた。胸にしているスタッフ共有のバッチから彼女がカメラマンである事は説明を受けなくてもわかる。それにしても均整の取れたボディラインをしている。日本人と身体のラインというつくりが根本的に違う。男性も女性も格好よく見えてしまう。

光は、ジョナサンに会釈され、つられるように会釈で応じた。

「こんぐらっちれーしょん」

忙しなく動き回るスタッフの一人が足を止めて声を掛けてくれる。

「さんくす」

会釈をしながら光は、スタッフに頭を下げた。

日本でならきっと見てみぬ振りされるだろう新郎にホテルマンは当たり前のように声を掛けた。

「これが普通ですよ…こっちでは」

新宮は、光の耳元で囁いた。いちいち、感動していては時間が足りなくなると言葉を添えて。その意味を知るのは、撮影後だが…。

グランドカリフォルニアンの正面玄関にジョナサンのワンボックスが止められている。そのワンボックスに乗り込んでマジックキングダムパークへと向かう。此処で注意しておくべき点は、レディファーストという態度だ。考え方ではない。それを真似する事よりも、その行動が問われる。いかに照れくさくても、それを、それが当たり前だと行う必要がある。日本人のどれだけがそれを出来るのかは疑問だが…。

ジョナサンは、セカンドのスライドドアを開けると、手でどうぞと促した。

光は、紗智の前に立ち、周囲を確認しながら車の中に乗り込んだ。ドア際にあるハンドルに手をかけ、紗智を導くように手を差し伸べた。紗智は、当たり前のようにその手を掴み乗車する。

紗智の乗車にあわせて光は、車の奥に入り、紗智が座りやすいように導いた。

レディファーストは、決して女性を先にという意味ではない。女性の行動をサポートする事に意味がある。スムーズにかつストレスの無いように動きを助ける。それがレディファーストという考え方の基本だった。

映画の真似事のような事をするだけではいつかぼろがでるものである。

決して、車のドアや玄関ドアを開けて先に入れるのがレディファーストではない。という事は、余談だが…。

ジョナサンの運転するワンボックスは、夜の闇を一路、闇間に浮かぶシンデレラ城に向かってはしった。

裏口で、警備局に止められ、ワンボックス内の確認がされる。が、ウエディングドレスを着ている上に、顔見知りのカメラスタッフが運転しているとなれば警備員も懇切丁寧に調べる事は無い。一応の検査をざっとしてゲートを空けた。最後に、帽子を取り、会釈して「コングラッチレーション」と挨拶をしてくれた。

「…サンクス」と、慌てて光は返事を返すと、紗智を見た。

「?」

「花嫁だけなんだよな…祝いの言葉を貰ったのは…」

「あら、やきもち?」

「そういうわけでは…でも、男女区別だよな」

「あは、でも…おふたりのためにパークのスタッフは全員出勤してるんですよ」

「えっ?」

新宮の話しによるとパークスタッフは、24時間三交代勤務を行っている。特にパークでの開園時間外での職務は慎重かつ丁寧に行われているらしい。それは、開園時間を快適に過ごしてもらうために行われていた。決して見せる事の無い点検・調整の繰り返し。これによってパークは、夢を売り物にしているのかもしれない。

そういう意味では、光が目にするのは、陰の部分。倉庫に無造作に並べられているエレクトロニックパレードの乗り物や小道具の数々を眺めながら、ワンボックスは、シンデレラ城の前に止まった。

「あっ・・・」

突然周囲の電気が消える。それはシンデレラ城で行われる写真撮影に合わせての物だった。

周囲が夜の闇に吸い込まれ、シンデレラ城の一角だけがライトアップされた。