めぐり…あい(7) | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

あっという間の90分が過ぎた。

舞台上で、一つの修正も起きなかった事に安堵の表情を浮かべて倒れていく役者を眺めていると羨ましく思える。

幾つかの舞台を踏んだが、力尽きたように倒れる事など無かった。

いま、舞台の上に16名の人がいる。舞台のいたる処に座ったり、寝転んだりとしている。方で息をしながら、苦しそうな息で笑顔を零している。充実している。そんな感じが取れる。素敵な一瞬がここにはあった。

「いいな…」

「こんな小劇団が?」

「あっ…」

毅の声に美紀は、はにかんだ笑みを零して頷いた。劇団の大きさは関係ない。ここには明確な熱気があった。どこかに忘れてきたような熱気がここにはあった。

「食事に出るから…一緒にどう?」

「えっ?」

「食事だけね…」

「……何それ?」

「お持ち帰りはしませんという意味…」

「莫迦…」

「と、その前に、感想は…?」

「いい感じね……」

「ありがとう…プロに褒められると嬉しいね」

「えっ?」

「仙道美紀…確か、俺とは5くらい違うから…34というところかな」

「……34に見える?」

「目が怖いよ…」と、毅は微笑んだ。屈託の無い笑顔は、何処か無邪気でいて、何処か安心感を与えてくれる暖かさを持っていた。

「………」

完全に主導権を毅に握られたそんな感じだった。なんだろう。特別な言葉の掛け合いじゃなかった。普通に流れるように、テンポよく流された会話。少しの変化を楽しそうに話す。この人にとって話すとは一体なんだろう。

そういえば、この人は、さっきの舞台に出ていなかった。舞台袖に居た事からも役者ではないとなんとなく解る。何を求めて、この人はここに立っているのだろうか。訊いたら教えてくれるだろうか。舞台のように熱く語ってくれるのだろうか。

一方通行の気持ちを伝える演者。そこから何を読み取ればいいのだろう。ただ怠惰に時間を過ごすなど馬鹿げた事をしている必要は無い。一瞬、一瞬の真剣勝負に自分も参加すれば良い。その事をわかっていても、ただの傍観者になる時がある。いや、傍観者とされるときがある。一方通行の自分善がりのメッセージ。

自分は、画面を通して、きちんと伝えられているのだろうか。

「ねぇ…」

「ん?」

「どうして、皆、あんなに一生懸命なの?」

「……信じているから、かな?」

「信じる?」

「ああ…自分の……」

毅は、拳を握り、親指を立てて、自分の胸を突付いた。

「自身を?」

「きっとね、望んで辿り着けないところは無い…」

「えっ?」

「興味を持ったり、挑戦したりするのは、そこに少なからずの才能があるから、と教えてくれた人がいるんだ…持ち合わせている才能、それは、きっと、誰にもあって、誰にも平等に無いもので、感じる物は、人それぞれで…そして」と、毅は、言葉を区切ると美紀の横に座って、舞台を見詰めた。

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