これも…恋物語(7) | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

15の春。と、いっても季節的には冬だ。2月初め、仲間内の高校合格発表が全て出揃い、とりあえず全員が進学を決めた事に胸を撫で下ろしながら集まった友人の家。そこで、後輩だった彼女は、告白をしてくれた。
初めての告白だった。何処か照れくさくて、上手く返事が返せなかった。すぐに友人達に揉みくちゃにされて、その日は、結局、話す間も見付けられずに別れた。
幼馴染とまではいかないが、同じ地域に住み、小学校から互いを知っている間柄。小学校に入った頃は、お互いの家を行き来するほどの距離にいながら、会うことが無い。普通に生活しているだけなのに、全くといって良いほど会わない。ひょっとしたら、避けられているのだろうか。そう感じさせうほどに会わない。不思議なものだ。
返事をしよう。と思っているうちに、高校生活が始まった。彼女の姉、つまり幼馴染は、別の高校に進んだ事もあり、俺、哲也と彼女は、会う機会がないままに時が過ぎていった。そして、告白の返事をしていない事を思い出す暇も無いほど学校生活は忙しいものになっていった。
進学校、と呼ばれているにもかかわらず、文化活動と称したクラブに力を入れる校風は、地区でもそれなりのスポーツ校として有名でもあった。無論、文科系のクラブもそれなりに全国大会優勝などの肩書きを普通に持っている。ついでというか、本業というか、学業の方も、進学校である事をしっかりと忘れない高度な授業が展開されていた。
クラブ活動の成績の良い奴の半分程度は、たぶん、勉強におけるストレスの発散ではないだろうか。と、邪推したくなるほどに勉強量は半端ではなかった。とはいえ、そのおかげで、いまの哲也が存在しているのだが…。
いつからだろう。息抜きのはずが、真剣に取り組むクラブ活動になったのは…。脇目も振らずというのが適切かは別にして、毎日がクタクタになるほど過ごした。
そこまでする必要があるかどうかは別問題だが、とりあえず、その理由を哲也はなんとなく知っていた。時間が立てばたつほどに答えを出す事ができない。考えれば考えるほど、答えが揺らぐ、そんな感じがしていた。
告白に対する答えが出ない。
哲也は、彼女の姉が好きだった。そして、彼女の姉の恋人は、自分の親友だった。友人に告白され、彼女の姉への告白の一端を担った。何故自分が告白しなかったのかはわからない。ただ、恋人という特別な関係になるよりも、今のまま友人としていられるほうが良かったような気がした。だから…。
と、どんな理由をつけたところで、一方の思惑通りにだけ事が進むわけが無い。世の中のご都合主義を全部自分のためにかき集めたところで、それはかなわないだろう。
彼女は、真直ぐに進学先を哲也と同じ高校にした。
「先輩…」と、聞き覚えのある声が突然掛かった。正門から入った正面玄関ロビー、そこは入学願書の受付をする場所でもあった。そこを横切るように哲也は歩いていた。彼女との再会。入試願書を出しに来ていた。
「あっ…えっと…久しぶり…」
少しドキドキとする。悪い感じは無い。何処か照れくさくてその場にいるのが嫌になっていく気がした。
「元気でしたか?」
「ん…どうにかね…あっ、そうだ、その…」
「………?」
「俺、まだ返事できていないよね…」
「…?」
「もし、まだ、誰とも付き合っていなかったら……」
「覚えていてくれたんだ…」と、彼女は、涙を零した。
「哲也、何泣かしてるんだよ…女子中学生を」
いきなり友人が哲也の背を叩いた。
「痛っ!」
「ほら、行くぞ…」
「お、おい、ちょっと待てよ…俺には、話しが…」
「泣かしといて話も無いだろう…ゴリ(担任の愛称)にばれたら殴られるぞ」
「それは拙いけど…お、おい…」
哲也は、そのまま校舎の正面玄関にあるロビーからグランドに引き摺っていかれた。
「あっ…もう…」
小池絵里は、涙を眼に一杯溜めながら、引き摺られていく哲也を苦笑しながら見送った。気持ちが一杯になっていた。追いかけて話をしたい気持ちも合ったけれど、それ以上に何を話して良いのかわからなくなっていた。一杯話したい事はあった。いつでも話せる。その想いが、今日まで会う機会をなくしていた事も忘れて…。
「どうしたの?絵里」
「ん、ううん、なんでも…」
「なんでもって事はないでしょ、泣いて…」と、一緒に願書を出しに来たクラスメイト達が辺りを見回して犯人捜しを始めようとしていた。
「あっ、帰ろう…」と、慌てて絵里は、友人たちを止めて、哲也の行った方向に背を向けた。
高校入試。合格発表。そのどちらも絵里は、哲也に会うことができなかった。
そして、バレンタインデー。絵里は、近所の哲也の家を訪ねることにした。
(あっ…)
学校帰りの哲也を待っていたのは、自分だけではなかった。小池恵美、姉もまた哲也を待っていた。頬が赤くなるほどの時間をそこで待っていたのだろう。そして、哲也を見る視線は明らかに……。絵里は、哲也が恵美に近付いていくのを見ていられなくて、その場を後にするように駆け出した。