BarD 1(5) | 気紛れな心の声

気紛れな心の声

気がついたこと 不意に感じたこと とりあえず残してみようって^^…最近は小説化しているけれど、私の書き方が上手くなるように感想くださいね

(最後の…か……)
客の中には色々と変わった注文をする人がいる。メニューに無いからと断るの簡単だが、あえてそれはしない。変なこだわりかもしれないが、カウンターを挟んで客とバーテンダーは常に真剣勝負だ。
裕也は、目を閉じ、少し考えた。
(これで、いくか…)
裕也は、少し目を閉じ考えるように間を空けると、カウンター内のテーブルにショットグラスを4つ並べ、それぞれに別のお酒を注いでいった。
「少し、違った形でしましょう…」
「えっ…」
「今の貴女にぴったりなカクテルです…もちろん、私が考えうる最高でベストの……と、言う意味です、よ」
「…はい…(何を呑ませてくれるのだろう)」
一つ目のグラスが、美香の前に置かれた。
「飲み干さずに、味見程度にしてくださいね…」
「………」
美香は、裕也に言われるままにグラスを取ると舐めるように味見をした。
(これは……苦味があるけど…何処か呑み口が柔らかい…)
「例えるなら、恋心……」
「えっ?」
「熱くなったでしょ…ほのかな苦味と、柔らかでいて包み込むような独特の甘み…似ていませんか…誰かに抱く心模様に…」
「きざね…」
「…そうですか?」
「うん…でも、解るな」
「キメ細かでいて軽やかな苦味、上品な感じの優しい味が特徴のお酒ですが、言葉で説明するなら、ではほろ苦く甘い恋心といった感じ…かな」
「そうね…」
「どうぞ」と新しいグラスが置かれた。美香は、グラスと裕也を見比べてからグラスを手に取った。さっきと同じように舐めるように味を確認する。何処かで呑んだ事のあるような味わい、それでいて何かが違う気がする。
しっかりとした味。何もする必要の無い味わい。独立した味として存在しているともいえるお酒だった。
(何だろう…ペースに呑まれてるね…ウンチクに期待しちゃってるよ…)
「どうぞ…」と、新しいグラスが置かれた。
「えっ?うん」
美香は、裕也の意表をついた行動に戸惑いながらもグラスを手にした。
(あれ、これも…)
しっかりとした味がある。何だろう。何処かで味わったような気がする味だった。それでいて、しっかりとした味をしている。コレだけでも十分な味だ。
「独立した味わい…いかがですか?」
「えっ?」
「それだけで十分にアルコールでしょ…そのままで呑めるほどに」
「うん」
「どちらもワイン系のリキュールです…それだけを好んで飲む方がいるほどに個性的なお酒です…」
「………」
「まるで、人の個性のようですね…」
「個性…恋心で…」
「最後になりますね…どうぞ…」
裕也は、4つ目のグラスを美香の前に置いた。
(か、辛い…コレ、確か……ジン、ドライジンよね)
「どうですか?」
「ジンは…このままでは…」
「カーッと熱くなって、何処かクールな感じがしますよね…ジンも…勇気とか行動とか…こんな感じじゃないですか?」
「?」
「カーッとなって、行動をして、何処か冷めたままで自分を見つめている、そんな事ってあるでしょ…?」
「それは…」
「どの酒も独立して、好みで飲まれているものです…何も混ぜることなくね」
「うん…」
「最初のものから、シェリー、ベルモット、デュボネ、ジン…このままでも十分です……だから、バーテンダーとしては、コレは、全く無駄な事をしているという事になるのかもしれませんね…人によって、お酒に対する冒涜という方もいますよ…」
裕也は、言いながら4つのアルコールを混ぜ合わせ始めた。最後にグランドマニエルを一滴加えて、カクテルとして美香の前に置いた。