〈琉球・蛇皮線恨み節〉
何でも屋の加代 演ー鮎川いずみ
さて、オープニングでの前口上ですが、加代の場合はこうなっています。
「金に生きるは下品にすぎる 恋に生きるは切なすぎる 命ぎりぎり勝負をかける 仕事人・なんでも屋の加代」
これは必殺必中仕事屋稼業の一部流用ですね。
物語は琉球王国の特使が江戸に到着したその瞬間、銃声が鳴り響き、一行の命が狙われた事件が発生するというもの。
薩摩藩の警護責任者は、なんと加代の初恋の相手であり、江戸の町で二人は再会するのですね。
ということは、加代は薩摩出身だった?
テレビシリーズにおいても、薩摩出身を匂わす台詞があったかな……てっきり、木更津出身だと思っていましたけど。
だが、再会した元恋人が悪人になり下がり、その仕置きを主水たちに頼む事になる流れは、必殺ではお決まりかもしれません。
とはいえ、このあたりの加代の悲恋劇は、上手く描かれています。
所詮、仕事人の道に足を踏み入れた以上、人並みの幸せはない――いえ、まっとうの生き方すらできないのかもしれません。
恨み辛みのこもった金をもらって人を殺すわけなので、恋も愛もない非情な世界で生きなければらないのです。
さて、加代の仕事人としての出発点は、孤児だった自分を育ててくれた元締の密偵。
この元締のいる場所が木更津だったので、てっきり加代はそこの出身だと……。
元締より独立してからは「何でも屋」を開業し、かなり手先が器用で、こけし・だるま・風車を基本に、造花や札も作る。
これらの品物は背中の駕籠や屋台で売りさばく。
飴・花売り、尼、鳥追い、夜鷹、はては幽霊まで、得意な変装で尾行や潜入調査をこなしてくれます。
スリや乗馬の技術も本職顔負けの腕前で、「何でも屋」の看板は表・裏共用といえるでしょう。