新必殺からくり人 噺し家 塩八
演-古今亭志ん朝
天保一座の落語家で、高座名は今昔亭塩八(こんじゃくてい しおはち)。
役柄だけではなく、ご存知のとおり、本人も昭和の名人として名高い落語家ですね。
一座の中で一番明るく、よく喋り、女好きのため、岡場所で女郎たちから情報を得ることが多い。
その巧みな話術は、演目の落語から客引き、果ては裏稼業の殺し技に活用されています。
志ん朝が演じていたということもあり、噺し家という職業を生かした必殺技で、まず殺す相手に対して話術で催眠状態にします。
その際、顔が徐々に消えていき、口だけが残るようなアニメーションが入ります。
相手を屋根に登らせて、自らの意思で転落死させる特異な技を使う。
いや~、必殺シリーズ全体を通じても、更に時代劇全体を通じても、こんな必殺技はほかにないでしょう。
これ、殺しの証拠が、まったく残らないでしょうね。
脚本上の得物は講釈に用いる扇で、その骨の部分に仕込んだ針を抜いて投げ、相手の額に刺すという、全く違ったものだった。
前作の「新仕置人」が、それまでの「必殺」を総決算させた感のある秀作でした。
そういったこともあり、続く新作のからくり人シリーズ第3弾は、別の形で視聴者の目を引くために、2つのキャッチャーな趣向が用意されました。
まずは時代劇の王道、「旅物」のエッセンスを初めて縦糸に取り入れたこと。
そして、歴史上の人物が主役であり、また初の殺し屋という設定。
東海道五十三次にちなんだ旅をしながら、各宿場の悪を始末していくという展開で話は進みます。
絵をあぶり出しすると、殺しの標的が分かるという手法が使われているのです。
ちなみにこの手法は、本作の続編となる『必殺からくり人富嶽百景殺し旅』や『必殺橋掛人』にも引き継がれている。