先日美容院に行ってきたときの話である。
日曜日ということもあってか席は満席で、美容師と客の話し声が聞こえていた。
「姫カット、と書かれてましたがどのような感じがいいですか?」
この美容院に来るのは3度目だが、今回カットを担当してくれるのは過去2回のカットのアシスタントをしてくれた若い女の子であった。
「こんな感じがいいんですけど」
そう言って昨晩ネットで見つけ保存しておいた写真を見せる
それから数度カットのイメージの擦り合わせのやり取りをしたあと、私はぼんやりと鏡に映る自分を眺めていた。
「どうして姫カットにしようと思ったんですか?」
特に理由はない。いや、いい加減美容院に行かないといけないなと思っていた矢先、友人に「お前の姫カットが見たい」と言われたからだ。
「そんなサラッと決めるんですね」
まあ、何でもよかったので。と、言いかけ、切ってもらっている人に対してあんまりな言い方だと思い笑って誤魔化した。
「いや、でも姫カット似合っちゃうんですもん!」
あからさまな世辞に内心辟易とする
「そんなに人を選ぶ髪型なんですか?」
思い返してみれば少し意地悪な質問だ。でも、本当にそう思ったのだから仕方ない。
女の子は一拍あけた後、性格もありますからね、と言った。
沈黙が続く、私は基本的に喋らないことは苦ではない(厳密に言うと、コミュニケーションが下手なので他人と喋ることでストレスが溜まるので喋らない方がダメージが少ない)が、今回ばかりは違う、相手は自分としか喋る他ない状況かつ周りは楽しそうに談笑しているのである。小心者の私にとってはこれは冷や汗ものなのだ。
今こうして久しぶりに文章を書いてみて分かったことは、この行為は落ち着くのだ。ああ、安心する。たとえ今、私の肉体の有る場所がどんな場所であろうとも、私の居場所はここにある。ここにはなにもないけれど。ここには誰もいないけれど。でも、ここしかない。否、そう思うことが私にとって都合のいいことなだけな気もするけれど。
だから、だから私は他人が怖い。手を繋ぐ暖かさも、誰かを受けいれ、そして誰かに受け入れられる喜びも、きっと、私は理解できない。私には皆が当然のように行っているそれが恐ろしくて堪らない。自己完結人間なのだ。
会いたい、誰に、誰にも会いたくない、そんな日々だ。