全国の城郭建造物「御殿（居館）シリーズ」をお届けしています。
「御殿」については、「はじめに」の中で、軽く触れましたのでどうぞご覧ください。
全国「御殿」を巡る”はじめに” ↓
今回は、「和歌山城」の藩主の別邸や隠居後に住まいとした移築現存の「湊御殿」と、同じく別荘として建てられ参勤交代時に使用していた御殿で現在は横浜の「三渓園」へ移築現存している「岩出御殿」を紹介します。
また明治時代に大坂城本丸に移築していた二の丸御殿の一部が、太平洋戦争後に失火で焼失した「紀州御殿」も紹介しておきます。
■「和歌山城」（和歌山県和歌山市）
１５８５年に「豊臣秀吉」の命で「豊臣秀長」が築城しますが、その際、「秀吉」が縄張りを行い「藤堂高虎」に工事を担当させています。
城には城代として重臣の「桑山重晴」が入り、「関ヶ原の合戦」では東軍に味方したことから暫くの間は城主でしたが、その後「浅野幸長」が３７万６０００石で入城し、この時に「天守曲輪」が整備され「天守」が造営されたようです。
１６１９年に「徳川家康」の十男「頼宣」が城主となり１６２１年には城郭を拡張しています。その後、代々御三家である「紀州徳川家」が統治し、「吉宗」「慶福（家茂）」が各々徳川幕府の八代将軍、十四代将軍として輩出されています。
「和歌山城」の御殿は、「本丸」「二の丸」等以外にも、「和歌山城」を中心に各所に築かれていました。
その中で「湊御殿」はお城の西側に築かれた藩主の別邸、藩主の隠居した後の住まいとして二代藩主「光貞」時代に造営されました。廃藩後もその場所に建っていた当御殿（１８３４年築）は、２００６年に紀州藩の大名庭園「養翠園」の西側へ移築されています。
移築現存の「湊御殿」（南側から） ↓
移築現存の「湊御殿」（北側から） ↓
内部を見ると、「玄関の間」では上質の「栂柾材」を使用し、天井には「鳥の子紙」（雁皮に楮を加えた良質の手すき和紙）を貼っています。
移築現存の「湊御殿」玄関 ↓
移築現存の「湊御殿」の「玄関の間」 ↓
移築現存の「湊御殿」 「玄関の間」の美しい壁紙 ↓
また「養翠園」内に建つ「養翠亭」は、「数寄屋建てのお茶屋」構造で、１８２１年（文政４年）築のモノです。
「養翠園」内に建つ「養翠亭」（「数寄屋建てのお茶屋」構造、西面） ↓
「養翠園」内に建つ「養翠亭」（「数寄屋建てのお茶屋」構造、東面） ↓
「養翠園」内に建つ「養翠亭」 ↓
また「岩出御殿」（和歌山県岩出市）は、初代「徳川頼宣」が築いた別荘で、参勤交代の時などに宿泊していた別荘御殿でした。
しかし１７６４年に解体されてそのまま大坂に移築して「八州軒」となり、更に大正時代に横浜の「三渓園」に移築されて「臨春閣」と名前を替えて現存しています。
「三渓園」に移築された「岩出御殿」（重要文化財、名称は「臨春閣」） ↓
「三渓園」に移築された「岩出御殿」（重要文化財、名称は「臨春閣」） ↓
内部は部屋の区切りの上部「欄間」に色々と工夫があり、「狩野派」を中心とする「障壁画」と繊細で精巧的な「数寄屋風書院造り」が見所になっています。
「三渓園」に移築された「岩出御殿」（重要文化財、「臨春閣」の内部） ↓
「三渓園」に移築された「岩出御殿」（重要文化財、「臨春閣」の内部） ↓
「三渓園」に移築された「岩出御殿」（重要文化財、「臨春閣」の内部） ↓
「三渓園」に移築された「岩出御殿」（重要文化財、「臨春閣」の内部） ↓
「和歌山城」内にあった御殿の中で、「二の丸御殿」の一部（玄関、大広間、書院）が、明治時代の１８８５年に「大坂城本丸内」に移築されて「紀州御殿」の名前で大阪市民に親しまれ、太平洋戦争では焼失を免れました。
しかしながら、戦後アメリカ軍による接収時の１９４７年に、火の不始末によって焼失してしまいましたが、写真は残っています。
「和歌山城 二の丸御殿」の一部（「大坂城本丸」内に移築されていた「紀州御殿」） ↓
「和歌山城 二の丸御殿」の一部（「大坂城本丸」内に移築されていた「紀州御殿」） ↓
「和歌山城 伝二の丸御殿の杉戸」 (「和歌山城歴史館内に展示) ↓
「和歌山城 伝二の丸御殿の杉戸」 (「和歌山城歴史館内に展示) ↓
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